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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第58話「駅集合」

「おーまたー」



 駅構内に店舗を構えるドーナツ屋の前。甘い匂いが漂う中で僕たちが待っていると、改札の方から駆けてくる仄香。寮で一緒の部屋である譲羽曰く、起きなかったのだと言う。そんな彼女が近づくにつれ、挙げた手をゆっくりと下げていき……?



「……危なっ! さり気にセクハラしようとするんじゃないよッ!」



「えっ、"おまた"って宣言したから触ろうとしたのに」



「お待たせって意味でしょ!? 普通はッ!」



 僕の"おまた"に触れようとしてくるのであった。セクハラが過剰すぎるよ……。



「うぬぬ……。ちょっとかすっただけだったかぁ……んっ? なんで赤くなってんの? もしかしてぇ感じちゃったぁ?」



「感じないわバカっ! 怒ってるだけだっての!」



 体をくねらせ猫なで声で煽ってくる彼女に、公共の場とはいえつい怒鳴ってしまう。まあこれだけの大広間で、至る所ざわついていれば僕の声も気にならないだろうけど……。



「ってか、こんな人が居る中でセクハラとかやめてよね」



「いっやぁー、触れたくて仕方がなかったんだよぉー」



「好きな子とデートする思春期男子かい……」



「股間を触るのが朝の挨拶だと思ってさ!」



「それノリが男子だよッ! 僕ら女子だよ!? 毎朝されるとかたまったもんじゃないよ!?」



「まーまー。うちらの仲じゃん?」



「出会って一週間も経ってないよ……。親友でも考えものだよ……」



 この子の一線超えそうなセクハラ癖には困ったものだ。僕がげんなりと呆れていれば、その様子を見ていた蘭子がひきつり顔。



「ま、まあ。コミュニケーションは……人それぞれだから……な」



「ほらっ、蘭子だってドン引きじゃん」



「大丈夫、大丈夫。コミュニケーションだからっ」



「セクハラ上司と変わんないよそれじゃあ……」



 この先、こんなやりとりが続くのかと思うと少し億劫になるなぁ……。



 ちなみに、こんなセクハラ劇はどこ吹く風に。譲羽はモッチャモッチャとリングドーナツを食べ終わるところだった。



「ユズ、美味しい?」



 話を逸らして訊いてみればコクリと頷く彼女。



「あーっ! それ季節限定抹茶リングでしょー! 食べたかったなぁー」



「もう無理でしょ。食べ切っちゃったし」



 物欲しそうな仄香に、またもモグモグしながらコクリと頷く譲羽。随分よく噛むなぁ……というか詰めすぎて頬袋みたいになってるんだけど。ハムスターゆずりんかわゆす。



「じゃあさー。口移しで良いからちょーだーい?」



「こらっ! ユズを穢すんじゃありません!」



 「ねぇ」と僕が見返せば意外と嫌じゃないのか「んー」と考えている彼女。そして何を思ったの抹茶チョコがついた指を差し出す。



「な、何それ。舐めて欲しいの……?」



 コクリと肯定。えっ、まさか……。



「おう! それじゃあっ! いっただっきまーす!」



 譲羽が頷くや否や、早速仄香がパクリとくわえにかかる。ってそれまずくない? 味わうとかじゃなくてマズくない?



 ひとくわえに、仄香はペロペロとしゃぶっている様子。



 なんだろつこの絵面……。



 思わぬ百合展開に心ときめかせつつも、彼女ら、つい横を歩行者が通り過ぎる駅のド真ん中ということを忘れてるのかな……。自由すぎる子たちだ。



 そんな仄香はふんふんと言いながら少しの間、味わい切ったようでくわえていた指から口を離す。僕は急いでウェットティッシュで仄香の指を、譲羽の口を拭き取る。



「あんがとねー。うーんっ、中々美味でしたぞ! ゆーちゃんも好きそうだし、どう?」



「いやぁ、僕は遠慮するかな……」



「そう」



 一言返すゆずりん。僕の返答には少し寂しそうだったけれど、でも顔はどことなく紅潮していて満足して嬉しそう……? この子、実はSっ気があったり……?



 そんなこんなで。待ち合わせの出会い早々にハプニングはあったけれど、僕らは目的地の百貨店に向かう。各々が買う物を探すためだ。



 今は日曜日の朝九時過ぎ。みんなで遊ぶ買い物の日。



 その中に、咲姫の姿は無いのだった。

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