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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第3部一章「百合葉たちの繰り返す春」
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第37話「雅と東京の暑さ」

 体育の後の放課後。いくら体育館で空調が効いてるとはいえ、思いっきり動いたあとはしばらくは暑いものだ。



 僕は部室のクーラー直下の風を浴びながら、扇子を仰いで涼んでいた。



「ゆーちゃんだけ涼んでずるいなー」



「だって暑いしさ。しかも今日じめじめしてるし」



 と言って、扇子で扇ぐ。クーラー、扇子の風。ダブルで気持ちいい。



「あー! センスのある扇子~。羨ましいなー」



「それダジャレ言いたいだけじゃないの?」



「いやー。扇子ってあれだよねー。ワビサビ? っていうか?」



「風流……ね?」



「そうそう風流! 風流ってなんか強そうだよねー!」



「仄香ちゃん……! 風流……連牙斬……!」



「なにうぉうゆずりん! ウィンドカッター!」



 と、中二病というか小二病を繰り出す譲羽と仄香であった。



 扇子が武器……。ゲーム好きなら確かに中二心をそそるかもなぁと思いつつ、僕はパタンと扇子を閉じる。



「うわー。その動き雅~。雅ってるわー」



「仄香の言葉からは微塵も雅さを感じないけどね」



「何うぉう!? 今はただの木の棒じゃんかっ!」



「じゃあ開く」



「うわーっ。雅だぁ~雅が溢れる~」



「あはは。何それ」



 扇子を開くだけで雅さが溢れるとは。お手軽雅である。もうそれスナック感覚じゃない? コンビニの和スイーツフェアかな?



 そこで、体育後の疲れでぐったりしてた譲羽が、顔をあげる。



「百合葉ちゃんがうちわじゃなくて扇子なの……キャラに合ッテル……。自分のキャラを理解してイル……」



「キャラはどうか分からないけど、うちわと違ってかさばらないし、やっぱりなんか、風流だよね。扇子の模様を見て、ああ、日本の夏だなぁって感じるよ」



「そっかー。あたしはうちわでバッタバタしちゃうけどねー。金魚の絵が描いてあるうちわとか、ザ夏っ! って感じー」



「それはそれで夏祭り感あるよね」



「浴衣にうちわ差すのとか、風流よねぇ~」



「いいよねー。扇子とはまた違った雅さがあるよ。咲姫なんか浴衣にうちわ、似合うよねぇー」



「えへへぇ~。ありがと~」



 咲姫なんか浴衣とうちわがすごく似合う雅美少女代表だ。僕が決めた。そう決めた。



 そこで仄香が僕の扇子を奪い取って、大きく掲げる。



「しかーしっ! 扇子は年がら年中雅っ! あたしも雅な女にーなりたーいっ!」



 と言いながら扇子を扇ぐ。しかし、その姿には雅の欠片もなく。



「仄香ちゃんのキャラには……扇子は……合わない、カモ」



「何うぉう!? あたしからは雅さが出てないと言うかーっ!」



「少なくともセリフからは出てないね」



 雅さよりも、暑さの方が出てるんじゃないかという、サマー仄香ちゃんである。



「ふっ。わざわざ涼しい部屋で扇子だのうちわだの仰いで、ご苦労な事だな。腕が疲れないのか?」



 そこに、蘭子が嫌みったらしく言う。煽りたくて言ってるんだろう。扇ぐだけに。



「へんっ。そういう蘭たんは日本のわーびーさーびーを分かってないんだよ」



「仄香からは感じないがな」



「何うぉう!?」



 今日は連発する何うぉうである。



「まあまあ。そんな蘭子にも、ついでに扇いであげるよー」



 風向きを少しずらして、僕の横からも風が蘭子に流れるようにする。



「あぁ……。なんと素晴らしいんだ……」



「そ、そんなに……? 今さっきまで否定してたのに?」



「汗ばんだ百合葉の体臭か風に乗って私の肺へと取り込まれ――えぶっ!」



「馬鹿かっ!? 馬鹿かっ!!!」



 蘭子の肩をピシッとたたく。ってかそんなに臭うかっ? ちょっとショックだ! もっとケアしないと……。



「安心しろ百合葉。私はほんの微かな百合葉臭でも感じとるからな? 臭うとか心配しなくていいぞ?」



「どっちにしろ心配だーっ!」



 やだよ百合葉臭とか! ほんの微かに残った女としてのプライドがズタズタだよ! いや残ってるのは臭いか!? いやだなーっ!



「まあ臭いはともかく。この程度の暑さでどうこう言っていたら、東京の夏なんかもっと酷いぞ。暑さ耐性が無いと、倒れるんじゃないか?」



「そ、そうだった! クーラーのせいでちきゅーおんだんかー!」



「扇子とは関係ないけどね」



 それはクーラーの話である。扇子の話だったと思うけど。



「でも、暑いモノは暑いよ。人間はそんな我慢強くならないでさ。快適さを求めるお陰で色々と開発されるんだから。ここまでスマホやらネット回線やら発達してると、そっちの方が年中電力を使ってるわけだし」



「た、確かにぃ……! じゃあクーラーつかいほーだいだねっ!」



「いや、そうはならないだろう……」



「ま、ほどほどにね……」



 と、暑さとは別に電力の無駄遣いが心配になる仄香ちゃんであった。



「しかし、夏本番を前に、向こうではとっくに真夏日の連続らしいな。北海道でも、信じられない暑さが来る時もあるし。扇子だけでは乗り越えられないだろう」



「いやいや、クーラー使うし」



「つまり、ゆーちゃんを東京に連れてけば、裸のゆーちゃんが見られる……という事かっ!」



「どうしてそうなる!?」



「はっ。なるほど。よし、百合葉、東京旅行に行くぞ。部屋で全裸の百合葉を拝む」



「行かねーわ脱がねーわっ!」



「とはいいつつ家では全裸にー?」



「ならねーわっ!」

当初の予定では、この章は春編の短編集にするつもりだったのですが、現実に引き寄せられつい夏の話を……。


東京の暑さ、ではなく、本州の暑さって書くつもりでした。しかし、本州とは言っても範囲広いしな……。道民は、本州はもっと暑いと一括りにしがちな気がします。


エアコンとクーラーの使いわけも変です。エアコンだと温冷どっちも? でも、北海道はドデカい石油ストーブがあるので、エアコン=クーラーみたいなイメージになってますね。


というネタを、小説で書けば良かったかなと、今さらに思うのでした。

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