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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第3部一章「百合葉たちの繰り返す春」
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第14話「ギャグ漫画と完璧美少女咲姫ちゃん」

 いつもの放課後。いつもの部室。それぞれが思い思いの行動をする時間。みんなで集まる必要なんてこれっぽっちも無いのに、つい集まってしまう。こういうみんなで集まって当たり前みたいな女子の文化は、息苦しくて嫌いだったはずなんだけど、なぜか今は居心地が良い空間なのだ。



 僕はいつも通り宿題を終わらせて、そして明日の予習を。これをするだけで授業の理解度が全然違うからね。



 暗記の仕方として、五回は繰り返せだか、二週間のうち三回は復習するだか、エビングハウスの忘却曲線だかっていう理論を見た事があるけれど、まさに僕はそれに当てはめて勉強している。勉強の理屈が分からなかった中学時代は大変だったから、早く知りたかったもの。



 方程式だろうが活用形だろうが、結局は、問題を見た瞬間に何を使えば解けるのかイメージし終えるくらい覚えきらないと、高得点なんて目指せない。試行錯誤に思い出してちゃあ、時間オーバーだ。だから、より効率的に、より早く……。



 その努力のお陰もあって、毎回テスト後に張り出される成績上位者の上に立つ僕の名前……麗しき乙女たちから羨望の眼差しと可憐な嬌声を浴びる事が出来る……。ああ、あれがたまらないんだ……っ。



 しかし、僕の努力ばかりに目を向けていては、今のハーレムなんて維持出来ない。確かに自由な関係も良いけれど、ときにはみんなの様子を見て、楽しませる会話の一つでも生み出さないと。



 まずは……と。僕のママ……じゃなくて、僕の嫁……じゃなくて、咲姫ちゃんはまた紅茶とカップケーキを用意してくれているみたいだ。香りは薄めだから、ダージリン辺りだろうか。咲姫のお陰で僕まで紅茶やフレーバーティーに詳しくなってきてる気がする。



 ゆずりんはお気に入りのお菓子じゃが棒を食べ、サイダーを飲みながら、ダラッとアニメを見ていた。君、宿題は? 今日忘れて注意されてなかった? いや、その眠たげなダラダラ具合も可愛いから良いんだけどさ。



 仄香はスマホでライブ動画を見ながら軽く首を振っていた。たまに両足でドコドコ鳴らすし、やっぱり激しいやつなのだろう。たまに自分の世界に入り込んでるから、そういうときはそっとしておくべし。



 そして蘭子は傾き始めた西日を浴びて小説を……では無く、少年マンガを読んでいた……。珍しいな……と、前なら思ったけれど、最近はゆずりんからよくマンガを借りているみたい。彼女がどう思いながら少年マンガを読んでいるのか気になるし、ここから話を広げてみよう。



「蘭子のその漫画、だいぶ前にアニメ化してたよね。面白い?」



「ああ。今も笑いをこらえてしまいそうなくらい面白いぞ」



 えっ? 笑いこらえてたの? いつも通りのクールな顔にしか見えなかったよ?



「ってか、蘭子ってギャグ漫画も読むんだね。ヒーローモノとかカッコいいやつだけだと思ったよ。でも蘭子。ギャグわかる? ついていけてる? ボケを理解できてる?」



「なっ、私だって、ボケくらい分かるさ。あれだろう? オイィィッ! ってツッコむ前のセリフがボケだろう」



「どんな解釈なのっ!?」



 いや間違ってないけど、それ特定のギャグ漫画過ぎない!?



「つまり、今のがボケとツッコミさ」



「くっ、上手いなアンタ……」



 蘭子って天然ボケなところあるから、まさか僕が一本取られるだなんて……。



「最近少年マンガにハマっているんだが、この漫画はちょうど良いな。ギャグとラブコメが程よく入り交じってるのがたまらない」



「そうだよね。僕も、汚くない範囲ならギャグ好きだし、ラブコメは大好物さ」



「ほう? じゃあ今からラブコメごっこするか?」



「いや、演技でどうしろってのそれは……」



「今からオマエの秘密の花園を開いて天国を見せてやるゼ」



「それはカッコつけただけの下ネタだよっ!」



 そして若干中二病だよっ! いや、ギャグとラブコメ要素はあるけどさ! こらっ! 人差し指と中指を開いたり閉じたりするのやめなさいっ!



 蘭子とはこんな感じで普段からラブコメ的なノリをやってると思うけどね……。本人には自覚がないのだろうか。



 それにしても、まさか譲羽が蘭子をギャグ漫画にハマらせるだなんて……。仄香を美少女アニメにハマらせてるし……ゆずりん、恐ろしい子!



「なんの話ぃ~?」



 そこに、紅茶をみんなの分を用意し終わった咲姫が話に加わる。僕は軽くありがとうと言って、紅茶を飲む。うん、すぅ~っと喉をすり抜けていって飲みやすい。薄めのダージリンみたいだ。しかも、飲みやすい温度にされている……。出来る嫁じゃんかよ……。



 しかし、蘭子は咲姫の言葉に考えるような表情をし、そして何か思い付いたのかニヤリと笑う。



「なに。この漫画に出てくる完璧美少女は、自分がより美少女であるために、学校内の男子生徒の情報を寝ないで丸暗記したんだ。だから、咲姫もそのくらいやったらどうだ? それとも、頭が小さすぎて一人分の情報すら入りきらないか?」



「あら? 蘭ちゃんは図体がデカくて視野が無駄に広いから、そんなどうでもいい情報ばっか覚えちゃうんでしょうねぇ~。わたしは嫌よぉ、そんなめんどくさいことぉ~」



「私だって嫌だが。しかし、それなら咲姫は完璧美少女には程遠いよな。怠慢だ、この怠慢美少女め」



「いやそんな事は無いと思うけど」



 ツッコむ僕。咲姫ちゃんかなりの努力家だよ? ってか怠慢美少女ってなに? めっちゃ怠けてるの? アニメ見ながらだらだらお菓子食べてるとか? それはそれで可愛いと思うけど……って、それゆずりんじゃん! 今まさにじゃん! 怠慢美少女かっわいぃ~!



「わたしは~、もう百合ちゃんの為の美少女って決めててぇ~。他のどうでもいい人たちがどう思おうだなんて関係ないかなぁ~って。わたしと百合ちゃんがわたしの事を最高の美少女だと思えればそれでいいのよぉ~」



「おっふ……」



 変な声を上げてしまう。なんて僕想いなんだ……っ。胸が熱過ぎてなんだか泣けて来ちゃったよ……。いや、熱いのは目頭か。いや、頭も熱いな……。これは咲姫ちゃん熱だね。間違いないね。

斉木楠雄の○難を見て思い付いたネタでした。

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