第12話「愛でる花」
授業と授業の合間。遠くに聞こえる女子たちの喧噪。そんな中で響く、粘り気のある水音。
「んっ、百合ちゃ……もう……っ」
「静かにして」
教室から遠い廊下の隅で、咲姫を壁に押しつけて僕は彼女の口を塞ぐ。強引に舌をねじ込ませ、彼女の口腔を蹂躙する。
制服がこすれ合う。彼女の整えられた後ろ髪をわしゃわしゃにかき乱す。髪の桃の香り、酸っぱい香り。
身をよじる、逃がさない。僕は彼女の脚の間を太ももでより強く押さえつける。今はなんだか、このままぐちゃぐちゃに溶け合いたい気分だった。
「百合葉」
しかし、その声が響いたとき、僕らはサッと身を離した。
「どうしたの、蘭子。そんな怖い顔をして。美人が台無しだよ?」
まあ、怖い顔の美人も好きだけどね。僕の横で頬を染め俯く咲姫を、蘭子は気に入らなさそうに見やる。
「私は、愛しのマイハニーを探していただけなんだが、まさか他の女と二人きりだとは思わなかったな……。咲姫とナニをしていた?」
「さあ。ご想像にお任せするよ。それとも、僕が咲姫と二人きりなだけでそんなに不安?」
「百合葉……」
僕が煽る様に言うと、落ち着きの無い咲姫が、蘭子の横をすり抜けて走りだした。
「おい」
「わたし、ちょっと……トイレに……。先生には遅くなるって言っといて」
「分かったよ、咲姫」
そしてまた駆け出す。少し乱れた後ろ髪が光って、僕は心の乾いた奥底から満たされた気がした。沸騰するように蠢いていた炎が、途端に落ち着いて熱が奪われていく。
「お花摘み……いや、花を愛でに行ったのだろうな」
「咲姫の見た目は高値の花みたいな存在だからね。髪の毛が乱れてちゃあプライドが許さないのかもしれない」
僕が言うと、蘭子はハァとため息をつく。
「百合葉。そういう気分だったのなら、私に相談してくれればいいのに。私なら、もっと君を満たしてあげられるというのに」
「そういう気分じゃ……なかったんだ。今の僕を君には満たせない。その時に愛でる花を選ぶ。僕はズルい女さ」
「……全く、ズルい顔をするもんだ。強引にその顔を崩してやりたくなる」
彼女は僕の手首を掴む。しかし、僕は壁に押さえつけられる前に捻り、その手から逃れる。少し力を入れただけで、彼女の手はなんなく解けてしまった。僕は力なく睨み付ける彼女を見る。
「ごめん、もう授業が始まるからね」
前に番外編で出していた、ちょっとエッチなお話。
毎日新しく書いて投稿しようと思ってたのですが、ペースが絶賛乱れ中です。
個人的にタチタチな百合葉ちゃんも好きなんですが、ベッドの上だと逆転するんですよね。どんな流れでなっちゃうんでしょうね。
 




