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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第45話「ぽわぽわーお」

 家庭科の授業もその後の、数学の授業も終わり。仄香と譲羽は示し合わせたようにいつもの僕らの元へ。蘭子はあざ笑うような顔を仄香に向けている。美人で可愛いから気にならないけど、絶対にイジられるのは目に見えているのに……。



「仄香、さっき怒られたのはなんだ。バカバカしかったぞ」



「パカパカ? あたしはポワポワしてたんだよ?」



「そう言うと、すごい脳天気お馬鹿に聞こえるんだけど……」



 アホの子丸出しな返答であった。彼女の頭の中は常に快晴みたいだ。常にぽわぽわした天気なのだろう。



「それよりさー。下敷きってポワポワさせちゃうよねー。させちゃわない? みんなさせちゃわないの? ぽわぽわーお」



 そう言う仄香の手にはプラスチック製の下敷きが。彼女が言う通り、両手の平で下敷きをポワポワさせている。音は非常に可愛いんだけど……。



「気持ちは分かるけど、授業の邪魔になるからやめようね?」



「ふぁ~っお!」



「それはテレビのお色気シーンで流れる音声だよっ」



「へっへー!」



 なんでさり気に上手いのさ……。さては練習したね?



 お色気はともかく。なんでこんな話題になっているかというと、彼女は授業が始まってしばらくの間ぽわぽわーお……じゃなくて、下敷きで音を立てていたから、先生に怒られてしまったのだ。蘭子は呆れて、また鼻で笑う。



「授業をちゃんと聞いてなかったじゃないか。簡単な公式すら答えられないだなんて」



「いやぁテンパっちゃってさぁ。テンパテンパのテンパ巻き! そう言えば、ゆーちゃんは天パなのに、授業はテンパらないよねー」



「いや、天然パーマはちょっと入ってるけど、関係ないからね?」



 猫っ毛と言って欲しいなぁ。ショートカットで天パだとぐちゃぐちゃ頭なイメージになっちゃう……。



「話を逸らすんじゃないぞ仄香。君がアホなのには変わりはない」



「うぇぇ……誤魔化せると思ったのに……」



 僕と蘭子がツッコむ。しかし、そんな風に呆れている僕ら二人とは対称に、譲羽と咲姫が首をかしげていた。



「天パ……って、髪の話じゃなかったノ……? 」



「わたしも思ったぁ~。授業にテンパル?」



「テンパルテンパル! ……おういえっ! シンバルティンパニタンバリンッ! シャーントロロロロッ……パン! チャカチャカへいっ!」



「なに……? 今のは…」



「うえぇっ!? シンバルとティンパニとタンバリンの音だよ!」



「分からないよ……」



 言われてみれば確かにそんな音を出す楽器……な気はするけど。この子はいくらか自由すぎる。



 まあの個性的な感じが僕は好きなんだけどね。呆れるけれども飽きないし。



 そんな自由な仄香に、蘭子はコホンと咳払いし人差し指を立てて説明する様子を醸し出す。可愛い。



「『テンパ』というのは、確かに天然パーマの事を指すのが一般的だが、ここでは『テンションパニック』の略だな。仄香が急に当てられてテンションがパニックになった……。ん……? パニックになる要素あったか?」



「そりゃあそうよ! こちとら机の上で下敷きライブを繰り広げてたんだからっ! へへん!」



「授業に集中しなさいっ!」



「やだぁ~ゆ~ちゃん、愛の鞭ぃ~!? ……あいたぁっ!」



 懲りないようで相変わらず無い胸を張る仄香の頭を、強めにペシッと叩く。これだけ無意味にふんぞり返っているならばしっかりツッコみせねばなるまいという、僕の中にかすかに住まう芸人魂の為せる業だった。



「うわー。ゆーちゃんに頭を叩かれたー。今のでせっかく覚えたカレーの公式忘れたわー」



「混ざってる混ざってる! 公式だって元々覚えてないでしょ……」



 先ほどだって、何一つ答えられてなかったのに……。簡単な公式すらも答えられなかったのだ。教えていた側としては、テンパっていたとは言えものすごい不安にさせられる。



「仄香、じゃあ数学の問題だ。13+X=17になる。Xに入るのは?」



「えぇ~。13とか17とかキモい数字を出さないでよぉ~。分かんないよぉ~」



「これ中学生の始めにやる問題なんだけど……」



「因数分解はまだまだ先だな……」



 蘭子の問題を完全に放棄した仄香だった。素数に戸惑っただけだよね? 大丈夫だよね?



「4! アタシは分カル! 数学の未来が見エル……っ」



「……よしよし。よく出来たね」



 一方で、自信満々に小さな鼻を鳴らす譲羽が居た。それを見て僕は頭を撫でざるを得なかった。……得なかったんだよ。だって、こんな簡単な問題を自信満々に……うぅ……。

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