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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第44話「まな板ガール」

「そういえばさー」



 眠たい一時限目の授業を終えて、仄香が話を切り出す。



「どうしたの?」



「今の家庭科で調理実習の話したじゃん? だからグループ分けの話も次の時間にあるよねーっと思って」



「確かに、ささっと決めちゃわないと時間がないよね」



 先ほどの先生の話を思い起こす。「組みたいお友達で、四人から五人のグループを作りましょう」って、一人ぼっちキラーな宣告がされたけれど、現状、僕の身の周りには四人の美少女たちが居るから、むしろウェルカムな事態である。仲良い人と組みましょうの法則に感謝しかない。んん~? 昔のぼっちトラウマー? 知らないなー?



「なら僕と組もうよ。それが一番でしょ?」



 すると、仄香が両手を上げて喜びアピール。



「よっしゃー! 組も組もー!」



「わたしも一緒がいい~」



「あたし……も」



 そうして咲姫と譲羽も賛同。しかし、よく見ると、目が泳ぎ焦るような仕草の蘭子ちゃん。



「蘭子も一緒に組もうね?」



 そう、僕が言うと、彼女はホッとしたように、しかし、すぐにキリッと表情を整えて僕を見る。



「当然だ。大人の私がついていないと、仄香が何をしでかすかわからないからな」



「何だとうっ!?」



 なんて、仄香が突っかかるけれど、以前みたいな怒りではない。とーんと肩を小突いて、おふざけであった。仲も良好みたいで、安心安心。



「オッケー。僕もこのメンバーだと嬉しいし。よろしくね、みんな」



 僕が確認するようにみんなに問いかける。頷く四人。良かった。とりあえず、僕は一人ぼっちにはならないみたい。本当に嬉しい……。嬉しいよぅ……。



「作るのはカレーライスだけど、ほのちゃんは、大丈夫よねぇ?」



「そのくらい余裕よねぇ? と言わんばかりに咲姫は不安顔で……あ、これは多分、作れないことを察している顔だ。



「カレー言うてアレでしょっ! ご飯炊いて、ルーを掛けて……チンだ!」



 案の定であった。



「それじゃあただのレトルトカレーだよ……」



「レトルトカレーは作ると言うのかしら……」



 呆れる僕と咲姫。しかし、仄香の勘違いはさらに斜め上へ。



「えっ? まさかあれはカレーの作り方の中では古いの!」



「それはレトルトじゃなくてレトロだな……」



 ツッコむ蘭子。とんだ勘違いだ。僕らは呆れた笑いが出る。



「じゃあめんどいタイプかっ! 具を入れてルーを入れれば完成するっていう、いちおー、初心者料理なんでしょ!? なんとかなりそうだぜっ!」



 仄香は言いながら、手で横長長方形の形を作る。ジェスチャー、イメージトレーニングを始めるみたいだ。



「まずここにっ! まな板がある!」



「まな板ガール? 仄香の事だね」



「そうそう! あたしのまっ平らな胸の上でこう人参を、トトトトーっと……って、こらぁっ!」



「ナイスツッコミ、仄香」



「いぇー!」



 と、拳をぶつけて、僕らのノリツッコミもバッチリであった。仄香に影響されたのもあるけど、なんだかこういうのには憧れがあったんだ。



 一方、咲姫と蘭子は首をかしげるばかりであった。まあ、ノリが大阪すぎたからね……。ゆずりんはうへへって笑ってるけど。



 仄香はイメージトレーニングを再開。「うぉーッ!」と雄叫びを上げ鍋をかき混ぜるジェスチャーをする。



「仄香? そんな力任せな料理じゃないよ? 男の料理もビックリだよ」



「ぐぐっ、ならばこれならどうだぁっ!」



「なん……だと……。仄香ちゃんの動きが速すぎて見えないッ!」



 手で包丁の形を作った仄香は、まな板に見立てた机の上でズダダダダッとエア切りを披露しだしたのだった。しかし、そんなことしても上手く刻めるのはビートくらいで、決して人参などは上手く刻めないだろうに。なんなら指を刻んでしまいそうで不安しかない。



 一方で、そして風圧みたいな何かに吹き飛ばされそうな中二病ゆずりんも居たり。けれど、仄香は音と見た目ばかりが激しいだけで手すら添えていない駄目っぷり。僕と蘭子はふぅーっと呆れるばかり。



「もう、筋金入りのアホの子だね」



「いや、筋肉入りのアホの子だろう」



「脳みそ筋肉じゃないしッ あほのかじゃないしっ!」



「そう言われても仕方がないと思うよ……。あほのかとは言ってないけど」



 細かいことは気にしない男の料理さながらに、全部が全部力任せなんだよなぁ……。ある意味、スパイシーな荒々しい味わいになりそう。



「君には料理なんて任せられない。もっと腕を磨いてから出直すんだな」



「腕を磨く? 爪なら磨けるけど?」



 言って彼女は綺麗に整えられた長めの爪を僕らに差し見せてくる。



「危ないから、包丁も扱わないほうが良さそうだね」



「ネイル不要の綺麗な地爪ねぇ。でも長いと具材が切りにくいわよぉ~」



「ぐぬぬ……」



 僕と咲姫に言われ、自分がいかに出来ないかが分かったらしく、仄香は苦い顔。うん、本当に危なそうだから、彼女には具材は任せないようにしよう……。

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