第36話「雪祭り」
「さむさむっ! めっちゃ冷えるよねー!」
「足先まで冷え冷えだよ。モコモコ靴下でも履いてくれば良かった」
「みんな……冬を舐めスギ……。防寒はバッチリしないト」
「まじかよー。生まれも育ちもここなんだけど舐めすぎちゃったかー」
仄香と譲羽と一緒に、僕らは真冬の外を歩いていた。昼だと言うのに、氷点下を大きく下回る気温だ。
僕は灰色のファー付きダウンにジーンズ。仄香はロングのスクールコートになんと白デニムのホットパンツにタイツという極寒を耐えられなさそうなファッション。それに対し、ゆずりんはスキーウェアなのだ……。いや、藍色と薄ピンク基調で女子のファッションとして成立させているけど、本気の防寒だ……。
「ま、まあ……。制服に比べたら耐えれる耐えれる……。さっ、まずはどこ行く?」
「やっぱり一番の目玉……雪像……デショ……っ!」
と、譲羽は一人駆けて行った。ふふふと笑い、仄香と顔を見合わせる。
「ワッ……。みんな雪像になってる……スゴイ……」
写真をパシャパシャ撮る譲羽。デフォルメされた女の子たちが、雪像となって並んでいる。
そう。なぜそんな寒いなかで出歩いているのかと言うと、譲羽の好きなアイドルアニメのコラボが、今回の雪祭りで行われるらしいのだ。
「いやー。なんでこんな寒いなか歩くんだってねー。いやー。これはしょうがないよねー」
「こういうコラボイベントって東京とかじゃないと滅多にないからね。来ちゃうよね」
「ソウ……。逃すワケにはイカナイ……」
なんて、鼻から湯気を出してエネルギーをみなぎらせる譲羽。女子として鼻から湯気ってどうなの? カッコ悪かわいい。
そうして。一人テンションの高い譲羽についていく僕ら。色んな角度でパシャパシャ写真を撮っていく。しかしそこで疑問が……。
「ユズ? 雪像と一緒に撮らないの……?」
「……ハッ! 盲点! 百合葉ちゃん孔明の罠……!」
「罠なの……?」
普通の話だと思うけど。
「じゃ、まず僕らと一緒に撮ろうよ。はい、カメラ見て見て~」
「あ、ウン。アリガト百合葉ちゃん」
と、僕が率先して自撮りの構えをする。パシャリ。その画面を確認。しかし……。
「あー。見切れたし暗くなっちゃった」
「もー! ゆーちゃんド下手ヘタのター!」
「ごめんごめん。あんまり自撮り慣れてなくてさ」
元々ぼっち族だからね……。写真はいっぱい撮っても、自分が写ってる写真は、ほとんど無いのだ……。あれ? あの子記憶では居たはずなのに……という一種のホラーかな?
「まったくもー。ゆずりんもゆーちゃんも、普通の写真は上手い癖になってないなー。別にあたしもそんな大してだけどさー。光の当たり方くらいは考えよー? ほらースマホ見てー。みんなうまく収まるように斜めで入るよー。はいピスピース!」
「ピ、ピスピース?」
「ピーーース」
と、仄香に言われ、僕と譲羽が写る。そして見せてもらったカメラには、良い感じに斜めに収まった僕らが。
「おっ? 上手いじゃん。さすが仄香ー」
「こ、コレがオタクに足りない女子力というヤツか……ッ」
「へーん。二人が下手っぴ過ぎるんだよー」
と、仄香は胸を張る。さり気に僕も女子力低いオタク扱いされたけど、本当の事なので気にしない。




