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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部三章「百合葉と美少女たちの冬」
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第31話「ジェラシーオブバレンタイン」

 仄香と譲羽は掃除当番で、僕ら三人が先に来た部室。



 ようやく袋から溢れ出そうなチョコ袋を整理し終わった僕。咲姫が淹れてくれた紅茶を飲んで感謝を伝えようとすると、咲姫が僕の目の前にチョコレートケーキを置いてくれた。



「はい、アナタっ。わたしからのバレンタインチョコ~。今食べちゃっていいのよぉ~!」



「わっ、チョコケーキっ! すんごい好きなんだありがとう! 今食べちゃっていいの!?」



「いいわよぉ~。そのために出したんだもの~」



 甘い物に目がない僕は、さっそくフォークを刺して一口……。



「んん~っ! おいしー!」



「うふふっ。喜んでもらえて良かったぁ」



 ああ、口の中で解け合うチョコクリームと柔らかいスポンジのハーモニー……。これいつか無くなっちゃうのがつらいなぁ……。ゆっくり食べよう……。う~ん、スポンジがしっとりしてる……。やばい、抑えないと秒で無くなりそうだ……っ。



 食欲よりも感想を……感想を……。と思ったら、咲姫はニコニコして食べる僕を見ていた。な、なんだ。



「百合ちゃんって、普段は爽やかクールに見えるのに、甘いものの時は本当に美味しそうに食べるのねぇ。なんだか見ていて嬉しくなっちゃう~」



「あ、ありがと……。いや、ほんとうに美味しくて……。チョコはパリッと冷えてて、スポンジはなめらかで……。美味しく食べれるように冷やしてくれてたんだね」



「そうなのよぉ~。今時期って、暖房とかもあるじゃない? 机の中とか靴箱とか、せっかくだからラブレターを添えてっていうのも考えたんだけどケーキじゃあちょっと置いとけないかなぁって、ちゃんと部室の冷蔵庫にねぇ~」



「あ~もう、咲姫は気が利くなぁ~」



「えへへぇ~」



 と、甘々トーク。実際にに甘いのだけど。



 新婚の如きハイテンションな咲姫に反して、蘭子は不機嫌そうにそっぽを向いてスマホをいじってる。彼女も僕へのチョコを用意してくれてると思うのに……。咲姫には敵わないと、今は出すに出せない感じだろうか。ちょっとかわいいけれど、放置し続けもいられない。どう切り出そうか……。



 しかし、その蘭子を意識する僕の気配を察したのか、咲姫が僕の視界を遮るように前にずいと出て、ニコニコ微笑む。



「こっそりプレゼントするんじゃなくてぇ、いつもの日常風景の中でバレンタインチョコを食べてもらうっていうのぉ、結婚してるみたいで良いかなぁ~って思ったの~!」



「へ、へぇ。それは確かに」



 咲姫ちゃんの妄想がどんどん広がってる……。少女マンガ的なら、屋上に呼び出して~とかの展開が好きだと思ってたのに、もう結婚の話になっちゃってる! まあ仕方ないよね! いっつも新妻みたいな働きしてくれてるもんねっ!



「そういうば、今日チョコくれる子はみんな手渡しで、靴箱も机の中も何も無かったなぁ」



「それはねぇ? どこぞの馬の骨が百合ちゃんをこっそり呼び出すなんて事をしないように見張ってたからなのぉ~」



「く、靴箱も?」



「貼り紙を貼っといたわ~。百合ちゃんが来る前に剥がしたけどねぇ」



 そういうば朝、咲姫から何時に学校に着くのか、スマホにメッセージが来てたんだった。遅刻しそうでごめんと返したけど、それは他の子への牽制だったのか。怖いのやら可愛いのやら。



「女の子って、ミーハーよねぇ。百合ちゃんがちょっと人気だからってぇ、全然会話した事無い癖に、手紙を添えて来ようとするんだものぉ~。百合ちゃんの何を分かってるんだかって感じぃ~」



「それって呼び出しとかラブレターじゃあ……」



「まっ、わたしが居るんだから要らないわよねぇ~」



 う~ん、言葉がきついぞっ! だけど腹黒姫様かわいいっ!



「朝から大変だったね。でも、僕は誰に告白されても咲姫の傍を離れないからさ。安心してよ」



「まあ? それは知ってるんだけどねぇ? いっちっおっうっねっ?」



 ウィンクする彼女。しかし、それでも少しニヤケていたのを見逃さなかった。やっぱり、なんだかんだ言って、僕が口説き文句も好きみたいだ。実にチョロくてかわいい。なので、僕以外にそのチョロさは出さないで欲しい。



 しかし、それを黙って聞いていた蘭子が、大きくため息をついて脚を組み替える。



「ふんっ。たかだかイベント如きで浮かれるなんてくだらない。しょせんは、ただの平日だ」



「たかだかイベント……? じゃあ蘭子とは来年のクリスマスは特別な一日を過ごせないの? 残念だなぁ。蘭子にとってはただの平日なんだもんね……」



「わ、悪い……。言い過ぎた……」



 それはやはり嫉妬心なのだろう。珍しく蘭子が矛盾するような事を言ったので、僕はいじわるな返しを。流石の蘭子もそれ以上ムキにはならず、素直に謝ってくれた。うんうんいいぞいいぞ? そういう嫉妬のあまり発言がブレてしまうのかわいいぞ?



 それよりも、バレンタインデーをただの平日と言ってしまうその童貞みたいなところに更に萌えてしまった。女なのにレズなのになんでそう童貞クサさが出ちゃうの? やっぱりかわいいぞ?

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