第42話「咲姫とカラコン」(追加)
咲姫が今髪型を変えた理由を考えていたら、咲姫が「あっ!」と声を上げて、しきりに目をパチパチしだした。
「やぁ~ん! カラコンズレちゃったぁ~!」
「だ、大丈夫!? 目薬は!?」
「ポーチのなかぁ~」
と、僕に差し出してくれる咲姫ちゃん。むむっ、これは僕をカッコ良く見せるチャンスなのではっ!
女子力高くて、もはやどれがどう違うのかさっぱり分からないポーチの中を探り、目薬を取り出す。うん、これは間違っても爪のコーティング剤じゃない。裏も見て大丈夫だ。
「落ち着いて、そのまま上を向いてね? んで、ズレた方の目を開けて?」
至近距離で覗き込みながら……咲姫の顎をクイと持ち上げながら言う。
「は、はぁ~い」
頬を赤めながら涙ぐんでいる片目。とてもかわいい。じゃなくて、少し充血して辛そうだ。メイクはしてないみたいだから、触っても大丈夫かな……。
「目薬垂らすよーはいっ、目を閉じてね?」
「うゆっ」
かわいらしい変な声をあげて、咲姫は目を閉じる。
「こう、グリグリってすると多分……」
「あっ、戻ってきたかもぉ」
「それなら良かった。新しいカラコンなの? かわいいけど、合わないようなら、もう外しちゃった方がいいかもね……」
「う、う~ん……。そうねぇ……そうするかもぉ」
と、無事解決に導けたみたいだ……良かった良かった……。
「百合ちゃん、なんだか慣れてたわねぇ。カラコン付け慣れてるのぉ?」
なんて、質問されてしまった。せっかく訊かれたんだし答えるかぁ。
「いやぁ、一時期頑張って付けて慣れようとしてたんだけど、どうしても付ける時が大変だして諦めたんだ……。あっ、今の話秘密ねっ。カッコ悪いから!」
「えぇ~? どうしよっかなぁ~」
「やめてよ咲姫~。っていうか、咲姫だって毎朝付けるの大変すぎない? 僕、何分もかかってたよ」
「……それは百合ちゃんの目が細いからじゃないのぉ~?」
「ほ、細くないっ! 他のみんなが大きいだけだよっ!」
いやまあ、細い自覚はあるけどね……。でも、した手に出て彼女を笑わせられるのなら本望さ。いや、糸目とか極端なワケじゃないしっ。そこまで細くないしっ。
咲姫はカラコンを外しに行って、僕は席について一息つく。
これで、少しでも彼女のポイントを稼げたらいいなっ。




