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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部三章「百合葉と美少女たちの冬」
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第12話「初詣」

 ハッピーニューイヤー後。みんなで交代でお風呂に入り、譲羽の動物パジャマに着替えた僕らは、寮から借りた敷き布団に川の字になって就寝した。



 ベッドには通常通り仄香と譲羽が。そして僕は咲姫と蘭子に挟まれて寝るのだけれど、ここでちょっと問題が……。



「せ……せまい……」



 咲姫と蘭子に両腕を絡めとられながら。しかし、そんな彼女らも疲れたのか、寝息をすぅすぅと立て始めたのだ。



 これトイレ行くの大変そうだなぁ……。



 しかし、新年早々、幸せなモノは幸せで。良い香りの咲姫ちゃんと、おっぱいの大きい蘭子ちゃんに腕を包まれ幸せな僕である。新年の百合百合一発目かな。



 そう思いつつも僕も疲れていたのだろう。いつの間にか寝てしまうのだった。



 そんなこんなで朝。寮母さんが作ってくれたおせちとお雑煮を食べて初詣へ行く僕ら。多くの人は深夜に行くのだろうけど、寒い上に人混みの中を出歩くなんてまっぴらごめんなので、僕らは昼になってからの初詣。



 地域の神社とはいえ、それでもそこそこの人波。流れにそって僕らは歩く。左右には出店があって、参拝後に食べることになるだろう。



「あっ、振り袖に袴だ。こんな寒いのにすごい気合い入ってるねぇ」



「そうよねぇ。雪草履と言っても寒いじゃないのぉ。足が冷えて大変そう」



「だよねぇ。でも、咲姫の振り袖姿とか、きっと綺麗だろうなぁ。いつか見てみたいよ」



「んもぅ。また今度ねぇ」



 と咲姫に肩を小突かれる。新年早々イチャついてる感じが心地良い。



「そんな事よりも出店よっ! お汁粉豚汁うどんおでーん! 寒いから早く食べたーいっ!」



「甘酒ココアコンポタージュ……あったまる飲み物も充実……。冬らしいラインナップ……」



「参拝が先だろう? 目的を忘れるんじゃない」



「えーっ? 食べ歩きが目的でしょー?」



「ミンナで、冬の味覚を、満喫……」



「違うよ?」



 食べ物飲み物ばかりな仄香と譲羽に蘭子と僕がツッコむ。



 まあ、確かにみんなで楽しく出掛けるのが本当の目的と言えるんだけどね。もはや今の日本のイベントは神様も仏様もキリストも関係ない。ただ、楽しいからついでに有り難がってるだけの、典型的ミーハーな僕らだった。



 楽しければ神も仏もなんでも有り難がる。そんな現金な民族なのかもしれないと、ミーハーなりの言い訳をしてみる。



「いやぁ、でも寒いのは確かだね。そこそこ待つけど、とりあえず並ぼっか。早くお参りして早くあったかい物を食べちゃおう」



「あれぇ~? 百合ちゃんも花より団子になっちゃったのかしらぁ?」



「違うよ。僕らが寒くて苦しんでる姿を神様が喜ぶわけないでしょ? そんな苦行を強いるような神様じゃないよきっと。早く終わるに越した事はないし」



 咲姫にツッコまれるも、僕はそれっぽい言い訳を返す。パッと思い付いた割に中々の屁理屈だと思った。僕だって意味無く辛い事は嫌なのだ。



「ふっ。随分と信仰心が薄いな」



「そりゃあそうさ。ここの神様はどんな神様なのか知りもしないもん」



「……まあ、それもそうだな」



 蘭子にも言われる始末。もはや屁理屈にもなってない無知っぷりで返した。多分、ここに並んでいる人の九割はそんなもんだ。みんなみんなミーハーで、そんなもんで適当に集まって楽しいのだ。それならば、神様だって喜ぶもんだろうと勝手に解釈してる。踊る阿呆に見る阿呆。同じ阿呆なら踊らにゃ損損と言うじゃないか……。いや、これ阿波踊りか。



 でも、神様だの仏様だの比べる前に、せっかくならみんな手を取り合って、何事も楽しんだ方が良いと思うのだ。それが争いの無い平和ってやつだと思う。神様だってみんなの笑顔が好きでしょ。



 寒い寒いと言いながら身を寄せ合う前の仄香と譲羽。それにならって、僕も咲姫と蘭子をの腕を左右から抱き寄せてあったまる。



「ゆ、百合葉……う、腕におっぱいが当たってるんだが」



「蘭子、ダウンジャケット越しじゃあそんな分からんでしょ。気にするだけ無駄だよ」



「今日の百合ちゃんは大胆ねぇ。わたし、だけじゃなく蘭ちゃんも居るのにぃ」



「なに? 咲姫は神様の前でも喧嘩しちゃうほど血気盛んなの? 違うよね?」



「うぅ~ん……まあいいわ。くっつけるし楽しいしぃ」



 よぉっし。咲姫ちゃんの楽しい発言頂きました! これがあるだけで、このメンバーの内で楽しめてないんじゃないかという不安が払拭されます! 百合百合ポイントゲット! みんな仲良しさいこーぉっ!



 そんないちゃつく中でもちょっとずつ進んでいく列。身を寄せ合ったままちょびちょびと歩く。今年は寒いなりにも雪が少なくて良かったと思う。今までの僕なら寝正月で外になんか出たくなかったものだけど、みんなで出掛けるとなったらそりゃあ雪が少ない方が歩きやすくて助かる。これも百合神様の采配……? それはないか。



 そう、冬に初詣だからって人々を並ばせる苦行を喜ぶ神様なんて居るわけない……いや? むしろ寒い中でも押し合って暖を取る女子の仲を取り持とうとする事こそが百合神様の采配? 完全に百合神様のパワーじゃないかっ! ふぅ~うっ! 流石は百合神様っ!



 やがて仄香たちの番が近付いてきた。お賽銭を入れるために、仄香は財布を取り出す。



「一万円札を紙飛行機にして飛ばしたら神様も楽しいかなー? なーんてっ」



「やめなさいっ! 罰当たりでしょっ!」



 つい声を荒げでしまった。僕は口元を押さえる。しかし、仄香はそれに驚いたのか、めっちゃ手を合わせる。……手を合わせるべきなのは神様相手なんだけどなぁ。



「ごめっ! 冗談だよーっ! 思い付きだってー! あたしだってそんなふざけた事はしないよー!」



「そう……それならいいけど……。冗談でも口にしたらダメだよ? 行動に移さなくても、神様は仄香の言動をよく聞いてるからね。お願いも聴いてもらえないよ?」



「ふぇーい……」



 落ち込む仄香。僕は慰めに彼女の頭を撫でる。でも本当にやりかねないと思ったのだ。いや、その疑いが仄香を信じてない証拠なのだろうか。まだまだ僕も彼女への理解が甘いな。



「お天道様が見てるみたいな話だな」



「精霊たちの加護を受けるためには、普段の行いを正すべし……ミタイな」



 蘭子も譲羽も中々良い例えを言ってくれた。ユズは中二病混じってるだけど。



「まあそうだね。仏様を信じていようが神様を信じていようが精霊を信じていようが、どっちにしろ悪い事をしたら罰が当たるっていう日本人の民族性だと思うよ。お札を無闇に折って飛ばしたら罰当たりだと思うし、お地蔵さんだって蹴り飛ばせないでしょ? 僕はそういう考えは正しいと思うから、悪い事なんて出来ないし言えたもんじゃないよ」



「なるほどな。良い考え方だとは思うが」



 そこで蘭子は言葉を止めた。むぅと唇を結んで、何か言いたげに僕を見る。僕はそんな彼女も愛おしくて微笑んで返すと、蘭子は何も言えないまま気まずそうに顔を背ける。



 しかしそこで、咲姫に耳打ちされる。



「公然四股レズがよく言うわよねぇ……」



「んっ? 何度も言うけど、僕はみんなに楽しい時間を提供してるつもりだよ? それで僕も楽しい。だからウィンイウィンさ」



「なんなのよぉそのホストみたいな考えは……」



 なんて、苦言を呈されてしまった。でも確かに、女の子を喜ばせるためなら、ホストになりたかったかもしれない。



 そう、もし男に生まれていたら、ホストになってこの世の女の子たちを幸せに……んっ? そんなホストは、この世の百合ップルが減っちゃう大罪じゃないか。そんなの死刑だ死刑。百合の受粉を手伝う羽虫にでもなって無限の輪廻を繰り返せばいい。



 そんな事を考えているうちにも、仄香と譲羽の番が目前に。仄香が不安そうに僕らを見る。



「やべーよやべーよ! どんな手順だっけ?」



「仄香。もしかして初詣の作法を……知らないのか?」



「はっ! 手を叩いてお辞儀しとけばいいんじゃないのっ!?」



 蘭子に煽られる仄香ちゃん。でも、そんな難しいものだっただろうか。



「まあそんなんでもいいと思うけど。正確にら二礼二拍手一礼だっけ? お賽銭を入れて鈴を鳴らして、二回お辞儀して、二回手を叩いて、またお辞儀って流れ」



「そうだな。百合葉の言うとおりのはずだ。しかし、二礼二拍手一礼は、厳密に言えば神職が行う作法らしいから、一般人の我々は気にする必要が無いらしいぞ? 良かったな仄香」



 と僕の答えに丸をくれる蘭子。しかしその解説に仄香は途端に気の抜けた笑顔に。



「なんだー。じゃあ適当でいーじゃーん!」



「それはダメだよ……。厳密じゃなくても良いから、真面目にお願いしようね?」



「参拝は神との交信……。神に失礼があってはイケナイ……」



「うぇー」



 なんて、僕と譲羽に苦言を呈される仄香ちゃんなのだった。

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