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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部三章「百合葉と美少女たちの冬」
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第04話「咲姫のおうちでイブデート」

 バタバタしているうちにもう年末に差し掛かる。そうなると、友達としても恋人としてもとても大事なイベントが。クリスマスだ。



 僕らみんなで集まるのは、クリスマスの昼という事に。夜に誘われるんじゃないかと思ったけれど、譲羽がご家庭でクリスマスパーティーなのだそうだ。良い家庭で良かった良かった……。



 しかし、そこに仄香も誘われているとの事。あれっ? 僕のハーレムのはずなのに、完全にほのゆずじゃない? ほのゆずはとても癒されるから良いけど、あんまり二人の愛が深まったら、僕への愛が無くなっちゃうんじゃない? それって僕のハーレム?



 なんだか黒い感情が入り混じってしまった。百合カプを求める百合厨な僕と自分がモテたいクソレズな僕とで葛藤している。……まあいっか。僕はあの二人を甘やかして百合百合出来れば。ちょっぴり嫉妬はあるけれど、今はそういう事にしよう。



 そんなクリスマスイブの夜。僕よりも先手を打たれお誘いいただいた場所がある。咲姫の部屋だ。今日は咲姫のお部屋でイブデートという、お気軽なプランだった。



 ご飯はお手頃にファミレスで食べた。クリスマスらしいチキンとパフェだ。これがもしカップルの高級路線らしく、お高いお店を求められたらどうしようかと思った。テストを頑張ったボーナスはクリスマス資金でほとんど底をついてるというのに。



 でも、咲姫はそういうお金ばかりが掛かる付き合い方はあんまり好きじゃないらしい。恋人としての価値がお金で決まるような気がするからと。同意見だった。そもそも僕は倹約家だけど。そんな僕は彼女に何を差し出せばいいのだろう。体以外で。



 ハーレムを作るなんてクソレズなだけに、日頃、本当に彼女を楽しませ切れているのか不安になる時もある。いくら好かれていても身勝手に振る舞えばそれは傲慢であり、尽くそうという愛を失えばそれは堕落だと思う。そのとき僕は、全てを失うのだろう。



 考え過ぎた。咲姫のベッドの上……。なんだか落ち着きたくて、つい匂いを嗅ぐ。嗅ぎ慣れた咲姫の匂いに混じって、大人なアロマの香りがした。これはいつもと違うなぁ。咲姫は女子力高いオシャレさんだから、一種類だけじゃなく、色んな香りを楽しんでるのかもしれない。



 今更ドキドキする事もないけど、クリスマスイブというのもあって、なんだか胸の高鳴りが抑えられない。いや、エッチなのは苦手なのに……。でも、この後抱かれる可能性を考えたら、どうしても緊張する……。なんとか逃げきれるかどうか……。蘭子の事件を知っているだけに、手錠とかで監禁して無理やりというのはないだろう……うん、ないと信じたい。



 甘めに作られたラベンダーティーを飲んで一息。うん、やっぱり咲姫ちゃんちで飲むとまた味わいが違うなぁ。ドキドキ感が混ざるから? それとももっと本格的な淹れ方があるのだろうか。



「百合ちゃん? 今日はもっちっろっん? 泊まって行くわよねぇ?」



「えっ? いや、お泊まりセットなんにも持ってきてないよ?」



 夜を跨いでしまったら余計に性的な予感しかしないのだけれど……。



「それなら前みたいに色々貸すわよぉ? それとも? わたしと一晩過ごしたくない理由でもあるのかしらぁ?」



「い、いや……ないです……」



「そうっ! それは良かったぁ~っ」



 本当に綺麗な笑顔を見せてくれるなぁ……。ただ、その笑顔は獲物を食らう肉食獣の笑み……。僕はただイチャイチャ出来れば満足なのだけれど、どうやって避けようか……。それとも避けるのは好いてくれている相手に悪いのか……。



 こういう悩みも男女であるだろうから、案外異性だろうが同性だろうが、恋の悩みは関係ないのかもしれない。自分をないがしろにせず、でも相手に尽くしたいという気持ちとのバランスも。



「今夜ねぇ? わたしの両親がデートで居ないのよぉ……。お姉ちゃんも遊びに行って帰ってこないのも確認済み~。この意味分かるかしらぁ?」



「へ、へぇ……。ラブラブなご両親だね……」



 それはまずいよ? ツーアウトの上にツーストライク取られてる状態じゃない? ここで決める宣言でもあるし、ほぼ逃げようがなくない?



「つまりはねぇ……今夜は百合ちゃんを好き放題出来るってことぉ……。聖夜を性的な性夜に……ってやだぁっ。蘭ちゃんのエッチな口調が移ってるぅ~」



「は、ははは」



 叩かれて乾いた笑いしか出来なかった。咲姫ちゃんのギャグもつまらなくてニヤけそうだけど、それどころじゃない。



 しかしそこで、なんだか体に変な予感がした……。むむむっ? この感覚は覚えがあるよ……? くっ、下腹部がキュウと切なく震える……。



「さ、咲姫……? もしかして、お茶になにか入れた……?」



「せいかぁ~い。効き始めてきたかしらぁ? 結局、媚薬なんて道具に頼っちゃって、わたしも駄目よねぇ……。でもぉ、それでまずわたしに抱かれる事に慣れてくれればぁ、百合ちゃんのえっち嫌いも治るかなぁって」



「な、治らないよっ! 治す気はないしっ! ひぅっ……」



 僕が虚勢を張っても、咲姫は僕のスカートの中に手を入れてくる。まだ下には短パンのジャージを履いてるとは言え、それだけで全身に電撃が走りそうだった。



 くっ、まさかお茶にドキドキ感じゃなくてエロエロ感が混ぜられてたなんて……っ! いや、面白くないギャグだなぁっ!



「それじゃあまずは? お風呂に入って身も心も綺麗にしましょうねぇ~。百合ちゃんも、綺麗にしてからじゃないと落ち着かなくでしょ~?」



「うぐぐ……」



 なんにも考えられなくなってゆく頭で、僕は咲姫の言われるがまま歩く、奴隷状態になっていた。太股を撫でられ、咲姫の腕に腰を支えられながら。僕は震える体で咲姫の家のお風呂にお邪魔する事になったのだった。



* * *



「う、うぅ……」



 パステルグリーンのモコモコパジャマを来て。ボンヤリ呆けたまま、髪を乾かされる。セクシーなネグリジェやエッチな下着でも付けられるかと思ったけど、それはもう少し大人になってでも良いらしい……。そんな日が来るのがちょっと怖い。



 しかし、今日とて今日だ。今日の僕は美少女のバリタチレズに抱かれ、聖夜に僕は穢れてしまった……。出来るだけ体は純粋でいたいという気持ちは儚くも打ち砕かれて……。神様にはなんと申し上げたら良いものやら……。



 いや、女同士なら問題ないのか。ああ、僕は百合神様の寵愛を受けただけで、穢れてなどいなかったのだっ。あははっ! あはははっ……。はぁ……。



 強がっても結局は現実からは逃げられなかった。ぼんやりため息をつく。背中の感触。胸の感触。そして、下半身の感触。まだまだ忘れられそうに無くってぞわぞわする。しかし、それ以上に喉が痛い。全身の筋肉を使いすぎて、疲労感がすごい……。無理……休みたい……。



「はいっ。百合ちゃん終わったわよぉ~。わたしの髪も終わったらぁ、楽しみにしててねぇ~」



「もうやだ……。もう寝かせて……」



「あらぁ。一回戦だけで終わりぃ~? 今日はとことん楽しもうと思ってたのにぃ」



「そ、それは僕の体力が辛いかな……。咲姫も指が攣りそうなんじゃない?」



「このくらい平気よぉ~。だって慣れてるものぉ」



 それはバリタチ的な意味かな? それとも一人でって意味かな? う~ん、後者がいい! いや、前者じゃイヤなんだ! 咲姫が抱くのは僕だけでいいっ! ……あれっ?



「んひゃう……っ!」



 すると、僕の耳元にふぅっと息を吹きかけられる。



「今わたしがシてるの想像しちゃったかしらぁ? 百合ちゃんのえっち……。やっぱり二回戦目行きたいのねぇ?」



「いやっ! だって、あんな事があった後だと想像しちゃうよっ!」



「そうよねぇ~。まだまだ頭の中がわたし色でいっぱいよねぇ~。ちょっと強引だったけど、二人の愛を少しずつ育めてると思うとそれでも嬉しいわぁ~。拒絶される中で抱くのは、流石に傷ついちゃうものぉ~」



「そりゃあそうだよ。そもそもさ、僕は性欲薄い方だから……。こういうのはもう終わりでいいよ……。好きな子と抱きしめ合って寝るだけで幸せなんだ……」



 言って僕はベッドに倒れ込む。咲姫の香りを全身で浴びて、ホッと落ち着く。そうだ、愛って肉体的に高ぶるモノだけじゃなくて、こう心から落ち着くモノもあるはずなんだ。



「百合ちゃんは、まだわたしとえっちするの嫌いなの?」



「咲姫が幸せなら……仕方ないとは思うけど」



「へぇ~。でもぉ、気持ち良さそうに感じる百合ちゃんを見るのがわたしの幸せ~。だって、百合ちゃんも気持ち良かったでしょ~?」



「さ、さあね……っ」



「やだぁ……っ。そんな言い方されると余計にゾクゾクしちゃうっ」



 全然誤魔化しきれてなかった。こんなのただのツンデレ……いや、誘い受けみたいなものじゃないか。



「まあ? 聖夜に百合ちゃんがわたしと過ごしてくれるだけで嬉しいわぁ~。もちろん、明日はみんなでクリスマスパーティーするけどぉ。やっぱり一年に一度の恋人の日なんだしぃ、二人で過ごせてわたしは幸せよぉ」



「そっか。それなら僕も、嬉しいかな……。咲姫と一緒にいられて幸せだし」



「そうよねぇ。じゃあ、わたしも贅沢言ってないで、我慢するとしましょうか……。でも、いつか絶対に、アナタの心も、体も、わたしのモノにするからねぇ? 覚悟しておいて……」



 そう言って、咲姫は部屋から出て行った。多分、しばらく戻って来ないだろう。でも、いくら僕が疲れているからって、先に寝るのは可愛そうだと思った。眠い目をこすりながら、僕は起き続ける事に。スマホで明日の流れも確認しておかないと。



 そしてしばし時間が経って。髪もお肌も完璧に整え戻ってきた咲姫と僕は、ツルツルの肌をこすり合わせて、甘い夢の中にまどろんでいくのだった。

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