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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第70話「ウサギと夕暮れの読書」

 群れなければいけない力の弱さ。それを無意識に知っているからなのか、女という生き物は群れたがる。女は一人で生きるのに向いて居ない分、共生という道を大事にする。



 その方が人間という生き物らしいとも思う。一人の力強さを誇示するのは、雄の、ライオン的生き方だ。それは個体としては強いかもしれないけど、どんなに強くても絶滅危惧種になったりする。隣の雄と共生が上手くない。血のつながらない雄同士は、いつ相手の地位を奪ってやろうかと血眼だ。



 でも、そんな弱肉強食は個体としての考え方に過ぎず、結局は少しでも隙を見せた時にガブリと食われるかもしれない脆弱さを秘めている。力をアテにするばかりでは、厳しい世界をより厳しくしてしまって、なかなか生き残れない。



 それなら、ウサギの様に群れて、色んなウサギを増やして、適者生存を目指すべきなのだ。モテるように立ち振る舞ったり、ぶりっ子したり、元気に突っ走ったり。色んな価値観として生きるモノたち。その方が種として生き延びるはずだ。個体として弱い存在であっても、種を残すのが長い目では勝ちなのだ。



 だから世の中、力だけじゃない。共生もまた大事。だが、完全に無力の塊では困るから、みんなで色々と工夫をする。力があっても使い方も工夫する。でも力を持ってる人間がコントロールできないから、弱きモノはいつも被害者になる。力は嫌いだ。



 ……そんな種族の事を考えるレズであった。うむ、いくら色んな価値観が大事とは言え、非生産的と言われるレズを増やしまくるのはどうなんだろう。さっさと同性愛で子どもを作らせてくれれば解決するのに。そして男を滅ぼし……んっ? 色んな価値観? そんなのは知らない。男は力やプライドばかり誇示する、独りよがりのクズどもだ。もう少し他者との共存を大事にしろってんだ。



 とは言っても、僕とて独りという時間が恋しくないワケでもない。かわいい子とわいわい出来るのなら、それも楽しいのだけれど、やはり、ゆったりとした一人の時間が欲しくなる時もある。そういう時は、他の子たちには悪いけど、読書をしたりする。それだけで、明らかな一人にしてくれオーラが出るのだ。



 なんて思って、今日は昼休み以外はずっと読書。いや、仄香と蘭子が用事あるっていうから、今日は部活もなしだし、お一人様デーにして良いと思ったんだ。そうやって教室で本を読んでたら、西日が強く目に差し込んだ。



 あっ、もうこんな夕暮れ時だったんだ。考えさせられる内容だから、つい脱線して考え込んでしまった。



 と、思って時計を見ると、隣に咲姫が居た……。いや、下校時刻に、最初に居たのは知ってるけど、ずっと?



「百合ちゃん。読み終わった?」



 丸い目で、ウサギのようなあざとい目で僕に上目遣い。これだけで、やっぱり勝てないなと思う。



「いや、まだだよ。でももうこんな時間だなぁって。待っててくれてたの?」



「まあねぇ。そりゃあ待ってたのもあるけどぉ……。良い横顔だなぁって」



「そ、そう?」



「うふふ、見とれちゃった……」



「……僕にとって、君の顔の方が、一つの絵画みたいに素敵だけどね」



「ありがと、でもね。芸術的とか何かと比べるとかじゃないの。わたしの好きな顔。夕日に照らされて、とてもキレイ。まつげが動いて、本を夢中でめくる。その動作もキレイ。いつもはわたしに向けられる優しい眼差しが、今は本が恋人みたいにそそがれてる。それがちょっと寂しいのに、でも、それでも良いかなって思える、そんな顔」



「す、すごいけどよく分からないなぁ」



「いいのぉ~。わたしだけが分かればぁ~」



 照れてしまって、しっかりとした返しが出来なかった。彼女の顔を絵画みたいと思える気持ちは本当だ。でも、彼女の彼女から紡ぎ出された言葉の前では、僕の着飾った言葉など力無い塵ように思えて。頬がかぁっと熱くなる。



 ダメだな、僕。背伸びし過ぎだ。



「あれぇ? 百合ちゃん恥ずかしかったのぉ~? アナタはいつもキザなセリフをいっぱい言ってくれるのにぃ~?」



「い、いや……。そういうんじゃなくて……」



「隠さなくてもいいのにぃ~。照れちゃったんでしょ~」



「んまあそうなんだけどっ!」



 僕は恥ずかしかったのだ。僕はそれほどの愛情に答えられるだけのモノを、持っているのだろうかと。彼女の大きな愛を前にして、矮小な自分が恥ずかしくなったのだ。



 でも、それもまた、比べたってしょうがない話。落ち着いて僕。びーくーるビークール。僕は僕なりに、彼女の良いところを毎日見つけて愛せれば良いんだ。それが僕の愛で幸せなんだ。



 その幸せを噛み締めるように、僕は彼女の手に指を絡め取る。細い指先がびっくりしてこわばったけど、すぐに僕の指と結びついて、いつもの感触に生まれ変わる。



「咲姫、僕を待ってくれてありがとね。さっ、帰ろ」



「うんっ」



 二人で下校。部活生の掛け声を遠くに聞きながら校舎を出ると、眩しい夕日と少しの肌寒さが同時に押し寄せる。



 踏んでクシャリと鳴る落ち葉。赤黄色の絨毯みたいに、僕らの帰る道を彩ってくれている。気温がずいぶん冷えてきたから、そのうち雪の絨毯に模様替えだろう。



 そんなタイミングで彼女と歩けるこの道が、特別に感じた。でも、明日も明後日も、きっと日常で特別なんだ。そんな日々を、一人なんかじゃなく、誰かと一緒に過ごせるから特別になるんだ。



 ひやりとした空気の中、繋いだ手のひらに、秋の夕暮れの温かさを感じながら。

この世は弱肉強食じゃなく適者生存という話を聞いて、

ちょうどD○.STONEでも70億人を支える手をみんなで考えるみたいな話もあって、

それを百合葉ちゃんに(極端に男嫌いだけど)語らせたらどんな感じかなと適当に書き始めた話でした。

そこに、そういえば夕暮れの読書の話を書きたかったんだったなぁ~って思い出して、

さらに秋編の終わりに繋げないとなって思って、夜中に出来上がり。


強引に繋げた点もありますが、結構好きな話になりました。

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