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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第66話「学校祭の打ち上げ」

「わたくしたちの劇は、無事に大成功しましたっ! 皆様っ! 大変にお疲れさまでしたわっ! かんぱーいっ!」



 ビュッフェのような食べ放題をホテルの小ホール貸し切りであった。いや、打ち上げに飲み会みたいなノリで、食べ放題はあると思うよ? あると思うけどさ。これじゃあもはや、結婚式の会場とかじゃない?



 これが本物のお嬢様の力なのか……っ!



 藍羅ちゃんのお父さんが経営するグループだかなんだかで、ホテルの小ホールが食堂になった感じだ。無くなり次第すぐに補充してくれるスタッフも居るし……。いやいや、これただの食べ放題とは違うわ……。なんか感覚がおかしくなる……。



 まあ要するに、打ち上げのお食事会がホテルのホールでビュッフェまで用意されてる。それだけだ。



 なんて戸惑っているうちに、いつものメンバーがみんなそれぞれが話し掛けられてバラけちゃったのだった。咲姫は結衣ちゃんと裁縫の話。蘭子は響希ちゃんと高身長同士で小説の話。仄香は律華ちゃんとドラムの話。譲羽は葵くんとゲームの話をしているみたいだった。一癖も二癖もある僕の美少女たちが、クラスに溶け込んでいる……。うううっ良かった良かった……と思うのは傲慢かもしれない……。でも、他の子たちとも仲良く出来るのは良い事だと思った。ただ、ハーレムメンバーがバラけると、途端に僕の防御力がゼロになったみたいで、少し不安になるけれど……。



 でも、かつての僕とは違う……。今の僕はぼっちじゃない! ハーレムメンバーのお陰でコミュ力も上がった! クラスでの好感度も上々だし、今なら誰とでも話せるはず!



 と、思ったけど、みんながもうそれぞれで話していて……。あーっ割り込むのは難しーっ!



 そんな所に、学校祭実行委員としてクラスを引っ張り大活躍した藍羅ちゃんが。今回のクラスリーダーとして、スタッフのお姉さんとの話を終えたのか、一人で食事スペースに戻ってくる。これはチャンスだ。



「藍羅ちゃん。劇の指示役から今回の打ち上げの企画まで、本当にありがとね。大変だったでしょ?」



「いえいえ! わたくしはわたくしのしたいようにするだけですからっ! なにより今回の百合葉さん! 決まりきった身振り! 役者みたいに張り上げた声! 本当に素敵でしたわーっ! だからこそ! この喜びはみんなで分かち合いたいと思いましたのっ!」



「そう言ってもらえて嬉しいよ」



 ギタボ練習の忙しい中でも、家で自主練を頑張ったかいがあった。こう褒められると、本当に頑張って良かったと思える。



「とっくっにっ! 何度も繰り返されるキスシーン! 台本ではキスするフリと書いてあったのに、本当にしてくださったのはわたくしの狙い通りですが……もうさいっこっうでしたわ~っ! しかも、ジュリエットと隠れてディープな――」



「藍羅ちゃん……っ? その辺にしてね?」



 僕は周りを見て藍羅ちゃんを牽制する。流石に、ロミオとジュリエットが学校祭の劇中で本当に、しかもディープキスしていただなんて、公には出来ない話なのだ。僕が口の前で人差し指を立て、シーっと言うと、藍羅ちゃんは両手で口元を押さえる。かわいい。



「ああ、わたくしとした事が。あの時の興奮を思い出してテンションが上がってしまいましたの……。許してくださいまし……」



「いや、いいんだよ。演じた側としても、喜んでくれる人がいたなら嬉しいし」



「ああっ! そのお心! やはり百合葉さんはわたくしが見込んだだけの事はありますわっ!」



「そ、そうなんだ」



 圧が強くて少し後ずさりそうになる。でも、正直言って見込んでもらえるのは嬉しい。かなり際どくて、学校でやるには流石にアウトレベルかと思う演劇だったけど、こうも喜ばれるのならレズ名利に尽きるというものだ。



 と、話が途切れてしまいそうだったので、僕はあらかじめ考えていたネタを振る。



「そういえば、藍羅ちゃんの部活の百合マンガ、読んだよ。なんか身に覚えのある話だったなぁ」



「そうでございましょうっ! だって、百合葉さんをモデルにしてますものっ! 入学時から目をつけていた微笑みの甘き王子っ! わたくしの一推しですわっ!」



「あ、ああ……。そうなんだ……」



 案の定だった。でも、ナマモノな三次元で妄想してる事を、本人である僕に伝えていいのだろうか。まあいっか。チョロレズな僕だし? 百合なら全てが許されるはずだし? そうだよね、百合なら全て、許される。



 その後、藍羅ちゃんは他の子の元へお礼を言いに行ったのを見届け、僕はパンを食べて、濃厚なミルクを飲む。完全に立食パーティみたいな感じだった。座って食べる子もいれば、立ちながら飲むだけの子もいる。こういう所のマナーはよく分からない。



 そうやって一息ついて。僕は唄佳ちゃんがフリーになったのを見て彼女の元へ行く。



「やあ、唄佳ちゃん。ライブめっちゃ最高だったね」



「あっ、あっ……。んぐっ! ゆ、百合葉ちゃん! そう言ってもらえて、嬉しい……かなっ! へへっ!」



「大丈夫? いきなり話しかけてごめんね」



「いや、いいよいいよっ」



 と、唄佳ちゃんはリンゴ酢のジュースを飲み干して、大きくごくんと。喉に突っかかっちゃったのなら、タイミングが悪かったなぁ。



「ライブは手伝ってもらったし、本当にありがとね。しかも、唄佳ちゃんのカッコいいギタボ、目の前で見させてもらえたし。最高の一日だったよ」



「そ、そうだよねっ! 私も最高だったかなっ!」



「かなってなんなのー。断言出来ないのー?」



「あっ! ごめんっ! かなって付けるのが口癖かな……口癖でっ!」



「それは仕方ないねー。口癖ってなかなか治らないもんね。僕も、だけどとか、でもだってとか、ネガティブな口癖ばかりだよ」



「へぇー。百合葉ちゃんもそういうのあるんだねー。無いと思ってたかなー」



 と、お互いの口癖を知った今日であった。ほぼ雑談な内容ではあるけれど、こうやってクラスメイトとの親睦を深めるのも悪くない。



「それでさ。ライブ最後の曲って唄佳ちゃんが作ったの? なんだか激しさの中にせつなさを感じて、良い曲だったよ」



 僕がそういうと、唄佳ちゃんは空っぽになったグラスを見つめる。何か思うところがあるのかも。



「最後の曲は……ね……。今だから言えるけどね。百合葉ちゃんへの想いを伝えるのに使おうと思った曲なの……。それで、ライブの後にでも告白したら、なんだかすごいロマンチックというか、カッコいいかな~って。でも、百合葉ちゃん見てて、やっぱり周りの子たちには敵わないなぁって思って……。それで、無理やり、過去形の歌にしちゃったかな……へへへっ」



「そうなんだ……」



 そんな想いをライブにぶつけてくれたなんて、確かにちょっと心に響くモノがある。想いに応えてしまいそうだ。



「その気持ち、ありがたく受け取っておくよ。ライブ中も気持ちがビシビシ伝わって、泣きそうになっちゃった」



「ホント~っ!? それじゃあそれじゃあ~? 私と付き合ってほしいかな~っ!」



 と、わざとらしく頭を僕の肩に乗せる彼女。流石にこれを本気と受けるような事はしない。



「えーっ? それはまずいよー。予約がいっぱいだから、来世までお預けかなー」



「あははっそうだよね~っ」



 だなんて冗談じみて話していたけれど、途中で咲姫ちゃんの視線がめっちゃザクザク刺さったのだった。ううう、本当は僕は十人でも二十人でも、ハーレムを増やしたい本音はあるけれど、今の子たちが大事だし一番だし、諦めよう……。キスの一つでもしたら、刺し殺されちゃいそうだ……唄佳ちゃんが。僕はその後にじっくりレズレズされるんだろう……。ああ怖い怖い。



 冗談を言えたとはいえ、唄佳ちゃんはその後、ちょっと気まずくなってトイレに行ってしまった。待っているのも結局気まずいままなので、今度は翠ちゃんの元へ。遠くから咲姫ちゃんの視線が刺さって痛いけど、こんなみんなの前で百合百合はしないから、許して欲しい。うん、百合百合しないよ? ホントにホントだよ?



「あっ、百合葉ちゃんです~。この間はあまりお相手できずすみませんでした~」



「いやいや、こちらこそ。バタバタとしてゆっくりしないでごめんねー。翠ちゃんの執事姿、とても似合っていたよー。すごいカッコ良かった」



「うわぁ! 嬉しい! ありがとです~! 百合葉ちゃんも、ライブ、声がハスキーでカッコ良かったです~」



「あははっ。それもう聞いたよー」



「あっ そうでしたっ! それじゃなくて……あの、ロミオも、最高に素敵でしたっ。褒めぼれしちゃうくらいですっ!」



「ありがと。頑張ったかいがあったよ」



 と、褒め合い。多分お互いにお世辞ではないけど、こういうクドいくらいの褒め合い文化って女子特有のモノだったりするのだろうか。それならみんな女子になった方が、優しい世界になるんじゃない? もう世界中みんな褒め合って女子だけの百合百合優しい世界にしちゃおうよ。男子も女子になっちゃおうよ。



「普段もあんな感じで接客してるの? 女の子に優しく口説く感じ?」



「そうですねぇ。女の子に優しくというのが、実はまだよく分からないのですがっ。なんだかんだで好評みたいで、ほっとしてます~」



「そうなんだ。でも、翠ちゃんが他の子に優しくするなんて、嫉妬しちゃうな」



「ゆ、百合葉ちゃんっ!? だ、駄目ですよ、こんなところで口説こうとしちゃっ。また前みたいになっちゃう……っ」



「そうだね。それじゃあこのくらいで。今度、お忍びで行こうかな……? いつもは予約制なんだっけ」



「そうですそうですっ! 基本ウェブ予約なんですが、いつもすぐ埋まっちゃって……。空きが出来たらお知らせしますねっ」



「それは楽しみだなぁ。次こそは、翠ちゃんのしっかりとした接客、受けさせてもらうよ」



「ぜひぜひ~。私も楽しみにしてますっ!」



 と、そこで自然と席を離れる。これ以上、嫉妬の視線を浴びるわけにはいかないから。



「やっ、咲姫。やっと戻ってこれたよ」



「やっとぉ~? お盛んな雄蜂はまだまだ色んな花の所へ遊び回っていたかったんじゃないのぉ~?」



「まあまあ。こうやって本命のクイーンの元に戻ってきたんだからさ。許してよ。ねっ?」



「……まあいいわ。ほら、ショートケーキ食べさせて?」



「ふふふっ。甘えん坊な姫様だなぁ」



 咲姫にクリームの乗った生地を食べさせる。食べさせる。食べさせる。そして途中で、わざと僕が食べる。もうっなんて言う彼女。とてもかわいい。お決まりだけど、これがまた楽しいのだ。



 最後にイチゴを食べさせて、そしてようやく咲姫の機嫌が戻って。そこでやっと集まった僕の美少女たちと一緒に、わいわいと食べ始めるのだった。

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