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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第61話「学校祭のひと休み」

 輪投げに本気になる咲姫ちゃんや、くじ引きでは運の無さを披露する蘭子ちゃんやらを見て、縁日の展示を楽しんだ僕ら。案外駄菓子の景品がいっぱい増えてしまった。



 そのあとはだらだらと色々だ。藍羅ちゃんの漫画研究部で、僕と咲姫と蘭子をイメージしたかのような三角関係の百合同人誌を買ったり。いや、絶対に僕らで妄想して楽しんでるよね? 藍羅ちゃん?



 そうしてたんぽぽちゃんの美術部で、個性派な色使いの大自然な風景画を見たり。なんかめっちゃくちゃ熱い芸術論を聴いたり。



 結衣ちゃんの手芸部で、びっくりするほど細かく可愛い刺繍のポーチを買ったり。



 もちろん他にもたくさん回った。



 料理部でクッキーを食べたり。科学部で久々の実験を見てビックリしたり。古典部で文豪の名言迷言エピソードを見たり。



 文芸部ではBLギャグ小説を買ったりもした。本当に、色々回った。僕一人じゃあ興味が無くて、こんなに回らなかっただろうってくらい、回った。



 百合百合じゃなくて、友達と過ごす時間。そういうのも、悪くないって時間。そういうのを僕は、今まで送れただろうか。縁日の話じゃないけれど、子どもの頃に置き忘れた感情を、中学時代に根暗になって失ってしまった当たり前の感情を、今、取り戻したような気分だった。



 そんな僕らも疲れてきて一休みの時間。袋の中をいっぱいに膨らませて、食道の広場で休む。仄香たちへのお土産を残しつつ、駄菓子を頬張る。



「何これ辛ぁ~いっ! ちょっと涙出ちゃ~う!」



「なんだ咲姫。この程度の辛さも耐えられないとは。百合葉の嫁には向かないな」



「蘭子も涙目になってるでしょ。ああ、この辛さが良いなぁ」



 わさび海苔の駄菓子を食べる僕らだった。これの良い辛さなもんで、一度に食べようとすると、その辛さにたまにやられたりするのだ。このくらいの辛さなら受け入れられる。しかし、それでちょっと涙目になるまでがお約束。



「百合ちゃ~ん、辛くて唇がヒリヒリするぅ~。ちゅーして治してぇ~?」



「そんな辛さでは無いでしょー。ほら、ラムネでも飲も? はい、かんぱーい」



「あ、ああ。乾杯」



 三人で瓶を持って、無理やり乾杯させる。本当は咲姫ちゃんとぐっちゃぐちゃにキスして、その辛さが分からなくなるまでふにゃふにゃにしてあげたいけど、それは今はやめておいた。だって、人前だもん。あと、三人だもん。キスは一人としか出来ない。



 いや? 一人としか出来ないというのが思い込みなのでは? 実はレズAVとか見たら、三人レズで同時にちゅっちゅする動画があるのかも……? いやいや、どう考えても無理だ。AVなんかに惑わされるな僕。あれは男の欲望を満たす為の穢れた動画だ。考えちゃ駄目だ。考えちゃ駄目だ!



 そんなピンク色になってしまいそうな僕の脳内はさておき、学校祭の合間で休んで、瓶ラムネを飲む。なかなかに良い風情だった。



「はい、チーズっ」



 苦手だけど、スマホで自撮りをやったみた。うん、なんか悪くはない構図だ。



「百合葉が自撮りとは珍しいな。はいチーズ」



「撮るよぉ~ってだけでも良いと思うけどねぇ~」



「な、慣れてないんだよぉっ。でも、こういう日常の一写真も、撮っておきたいと思ってさ」



 咲姫なんかは知らないうちにしょっちゅう撮ってたりするけど、僕は全然だ。だから、良いなって思ったときには、みんなでの写真を残したいと思った。



「仄香に写真送ろうかなー。いや、あとでいっか。その方が面白そうだし」



「まあそうよねぇ。その場で見せた方が、リアクション面白いかもぉ」



「そうだな。譲羽もムクれたりしてな」



 そんな、居ない子たちの事も含めて楽しむ。なんだか、本当に高校生としての青春を送れてる気がした。



 無限にこういうダラダラも過ごしたい。でも、動き回ればもっと楽しい。そんな学校祭の一休み。しかし、せっかくのイベントだ。まったりタイムもそろそろ終わりにして、最後の場所へと向かおう。



「さぁって。ゴミを捨てて次で最後にしよっか」



「そうねぇ。ほのちゃんたちも待ってるしぃ」



「案外、譲羽と楽しくやってるかもしれないがな。でも、お土産を渡したらすごく喜ぶだろう」



「それじゃあ、早く行って、お土産ドンッと渡さないとね」



 結局、咲姫も蘭子も、根は優しくて。みんなで楽しい事を求めてくれるようになってきた気がする。うんうん、いいぞいいぞ? 百合ハーレムにおいて、みんな仲良くは大事な感情だからねっ!



 監禁? ストーカー? はて、なんのことやら……。



 しかし、そういうあれこれを気にしないで百合百合というのは、僕はサイコパスなのかもしれない。でも、自分の罪を無視してでも、僕はみんなで今を楽しみたいっ。



 ともかく、最後に向かう先はというと……。



「じゃあ最後に、男装女子部に行こうよ。僕はメイド喫茶も好きだけど、執事喫茶の方が興味あるんだよねぇ」



 しかし、僕が言うと、優しさに満ちあふれていた蘭子も咲姫も顔を歪めた……。あっ、地雷踏んだかなぁっ!



「な、なんだ百合葉……。君だって男装が似合うのに男装女子に興味があるとか……ホモか?」



「いや、君だって男装してたよね? ロミオとティボルトの男装百合やったよね? ホモで百合で熱い意味深な決闘だったよね?」



「百合ちゃ~ん? まさか、男装女子部の子に、"気になる子"でも、居るんじゃ無いでしょうね~?」



「咲姫、安心してよ。男装女子部の人たちがどんなに束になっても、君の魅力には敵わないからさ」



 僕が二人にウィンクすると、蘭子も咲姫もむっつりして黙る……。う~ん、まったくこの子たちはチョロいのかな? そんなにチョロくていいのかと疑問には思うけれど。



「私は……私はどうなんだ」



「蘭子ももちろん。魅力バッチリだよ?」



「じゃあ、私と咲姫の二人だったらどうなんだ」



 おう。痛いところを突いてくるなぁ。さあてクズでレズな僕、嘘を付かず、どう返すか……。



「二人合わせたら……この世の全てが合わさっても勝ち目ないくらいに、魅力的かな~」



 そう言って、今度は僕が二人の腕を取って駆け出す。なんとか着いてくる咲姫と蘭子。



「あ~んもうっ。結局、そうやって逃げるのよねぇ……卑怯だわ……」



「しかし、それを悪いと否定出来ない私たちが問題なんだ……。くっ、これが惚れた弱みか」



「顔が良いのよねぇ……」



「声も良いんだよなぁ……」



「ふふふっ。美人な二人に褒められて光栄だよ!」



 言って誤魔化しながら、僕は階段を駆け上がる。三人で駆け上がる。馬鹿みたいな青春模様だった。



 そうやって目指すは部室棟の四階の端。そこに、僕が望んでいた天国のような空間がある。



 その空間に近付くにつれ、やけに生徒の数が増えてくる。きゃいきゃいと黄色い声が響いてくる。男装女子部の部室から出てきた女生徒だ。満足そうな顔を見れば、良いサービスというのが目に見える。



 男装女子部。通称イケメン女子部。そこは女子校であるうちの学校内でも、中性的な顔の子ばかりが選ばれる、ホストクラブみたいな部活である。少女漫画に影響を受けてる感がもろ分かりだったり。



 本来は僕はそこに入部させられるところだった。しかし、寸劇で相手を自然に退場させるという面白い遊びの勝負をした結果、なんとか僕の入部を断る事が出来たのだった。たの僕の穴埋めとして、クラスのショタメン女子、翠ちゃんの名前を推してしまったから、少し責任というか、上手くいっているのか、見に行きたかったり。



 美少女ももちろん好きだけど、美少年顔の女の子も好きだ! 希少価値だっ! だから、天国っ! イケメンであり美人であるという二つを同時にいただけるのは禁断の楽園……っ。もちろん、女の子だからという前提条件があるからだけど!



 いつもなら予約で人数がいっぱいなために行けない場所。しかし、今回は一人当たりの短い時間制限の代わりに一般開放される執事喫茶となったのだった。そりゃあ、普段予約とかめんどくさがる僕も、行かない手はない。



「じゃあ入るよ?」



 僕は二人に確認して、頷くのを確認。そしてノックしその扉を開いた。

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