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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第58話「お化け屋敷」

 仄香と譲羽に送り出されて、僕は咲姫と蘭子を引っ張りながら、写真部展示の教室を出る。ドキドキとするあったかい両手。二人に鼓動が伝わりそうだ。



 ある程度引っ張って、展示教室前から学級教室の並びに出る。ここまで来ると、それぞれの教室が展示やら出店やらやっていて、随分混み合ってくる。僕は握っていた手を離して、二人に振り返る。



「じゃあ三人でどこ行こっかー。まずは……て、定番のお化け屋敷とかー?」



「それ良いわねぇ! 行きましょ行きましょ~!」



「ふっ。百合葉はお化けが苦手……。ならば、百合葉が抱きつきに来るのは必然……フフフッ。これはもらったようなモノだな……」



「いや、学校の教室で何が出るって言うのさ……。出るわけ無いじゃん……」



 だって居ない事が分かってるんだから、なんにも怖い事なんてないでしょ? いや、大丈夫だよ。余裕余裕。ヘッチャラヘッチャラ。



 そうだよ僕。お化けなんかヘッチャラな、クールな僕を見せつけないと。ふふふっ。両手に花……。作りモノに怖がる二人を僕がクールに慰めるのだ……。大丈夫だよ、僕がついてるからね、キリッ……と。ふふふっ、なんて完璧な作戦なんだろう……!



……。



「うぎゃーっ!」



「ゆ、百合ちゃん……っ! んもうっ、わたしが抱きつきたいのにぃ~。まあこれでもいっかぁ……。よしよ~し、怖いわよねぇ~」



「百合葉……っ。なんで私に抱きつかないんだ……っ。くっ、これは私が百合葉に抱きつくしかないか……。きゃーこわいー。百合葉たすけてー」



「ぎゃーっ! 黒髪女ーっ! さだこーっ!」



「落ち着け百合葉。貞子じゃなく蘭子だ。流石に傷つくぞっ」



 阿鼻叫喚だった。くっ、所詮は生徒の作り物ハリボテばかりなのに! なんて演出が上手いんだ!



 足下が白い煙で見えない。一歩踏み出すのが怖い……。何が出てくるのか分からない……! ビクビクしながら歩みを進める……。



 そして足下を掴む手が……っ!



「ぎゃーっ! 助けてー!」



「あぁっ! 待ってよぉ百合ちゃ~ん!」



 駆け出す僕。目の前には扉。しかし、取っ手が無くて押してもあかない行き止まりだった!



「ぶぇぇっ! どうして開かないのぉーッ!」



「落ち着け百合葉。これは引き戸だ。ハリボテを壊す気か」



 蘭子が言って開けてくれる。そこを僕が一気に駆け抜ける。



 そんな途中で、首に何やら冷たい感触が……!



「あぎゃっ! 怖いっ! 怖いぃぃぃ~! あっ! あは……あはははっ! あひゃひゃひゃひゃっ! ひひひっ!」



 ついに僕は僕はヘタレ込んでしまった。心の何かが決壊して、ちょっと涙が出る……。



「落ち着け百合葉っ。君の笑い声の方が怖いから……っ。もう、私が運んでやる……」



「あっ、わたしも手伝う~!」



 と、腰抜けた僕は蘭子と咲姫に引っ張り上げてもらって、なんとかお化け屋敷を出たのだった。



 なんだかすごく……情けなかった。



 教室の扉を開けて、学校祭の喧噪が戻ってくる。それを聞いて僕は、やっと震えて力の入らなかった体を叩き起こす事が出来た。



「百合葉。お化けが怖いのは知っていたが、君ってすごいビビりだったんだな……。それを私たちの前で強がって……かわいいな……」



「お化けが怖くて、わたしが抱きつく予定だったのに~。百合ちゃんがヘタレて抱きついてくるんだも~ん。まあ? こういうのもありかなぁって思ったけどぉ。百合ちゃんったら可愛いんだからぁ~っ」



 完全に蘭子と咲姫に、僕はヘタレのビビりだと思われたようだ……。いけない、このイメージは払拭しないと。



「ち、違うよ……? 驚いただけでさ。あれじゃん。海外のホラー映画は驚かすのが主体で、精神的な怖さは無いって言うじゃん? それと同じだよ。怖いんじゃなくて、驚いたの。分かった?」



「充分日本式だったと思うが……」



「BGMも服装も、おどろおどろしかったものねぇ……」



 僕の釈明は届かず。全く理解を示してもらえなかった……っ。まあそりゃあそうだよなぁ。あんな情けない姿を見せたんだから。クールでカッコいい僕の理想像が崩れてしまったに違いない……。



 ならば、別のところでカッコよく挽回するしかっ!



 と思った矢先……。



 僕の肩に手が……っ!



「うぎゃーっ!」



「うふふっ。わたしの手よぉ~? 百合ちゃんか~わいぃ~」



「さ、咲姫……。驚かさないでよ。まったくぅ、お茶目な子なんだからぁー」



 一気にぞわってしたよ……。誤魔化すために咲姫のすべすべな手を両手で握る。好きな子の手なのに……。悪戯は良くないなぁ。これは両手でこすってお手手スベスベの刑だっ!



 と安心を得ようとしていたら……。



 今度は僕のスカートの中でまさぐる手が……っ!



「ふぬぎゃーっ!」



「はははっ。私の手だ。そんなにお化けが怖いだなんて、百合葉は可愛いな」



「蘭子っ! いやセクハラの手だそれは!」



 尻を揉むんじゃない尻を! そんなの誰だって叫ぶわ! いや、痴漢に遭って声も出ない子はいるけど!



 蘭子の手を払う。何度もセクハラし直そうとするスケベな手を払う。払う……。



「ってしつこいなぁ!」



「ああ、百合葉が払いのける私の手……。何度もペシリと叩かれて心地良い……」



「なんなの? アンタ。マゾなの?」



 全く、悪い子だなぁこの子は。スケベマゾとか手に負えないよ? もしかしてドスケベ魔族なのかな? 語呂がいいな? 案外サキュバスとか似合いそうだしね?



 と、蘭子のセクハラを払いきったら、僕の左腕に抱きつく咲姫。胸を押しつけようとしてるみたいだけど、お見事! その感触は一切伝わってこない!



「咲姫? 当たってないよ?」



「あ、当て、当ててないわよぉ!」



 僕のこの一言で伝わる以上は、やっぱり意識していたのだろう。ふふふっ。貧乳でも頑張ってお胸を押し付けようとする咲姫ちゃんかっわい~。



 すると反対側には、今度は布の上からでも分かるしっかりとした肉感……ならぬ質感が。



「蘭子? 当たってるよ?」



「当ててるんだ。どこぞの貧乳に対する当てつけさ……。おぉっと、私とした事が上手い事を言ってしまったなぁ」



「何よぉっ! 無駄に大きいだけの癖にぃっ!」



「なんだ? 無いよりは大きい方が得だぞ?」



「無くは無いわよぉ!」



「服の上から分からないのなら、無いも当然だ。なあ? 百合葉」



 何その悪魔の証明みたいなシュレディンガーの猫みたいな。無いことは証明出来ず、服を脱がすまで大きさ不明? でもこの二人、これでいてネコじゃなくてタチだから、脱がされるのは僕だったわ。よく分からなくなってきたなぁ。



「まあまあ二人とも。このまま三人で学校祭を巡ろっか。人の邪魔にならないように、僕の腕を離したら負けね。はいスタート!」



「ええ~? ま、まあっ? わたしは離しませんけどぉ~?」



「私も絶対に離すもんか。百合葉の腕が千切れても、絶対に離さない」



「いやそれは本末転倒だよね?」



 僕の腕にしがみつく力が強くなったし。血の巡りが悪くなって、本当に腕切断とか起こりそうだなぁ~。でも、美少女のためならそれもやむなしかなぁ~。



 三人で廊下を歩く。人を避ける度に、上手いこと蘭子が前に出てよける。そうか、左側通行だから、蘭子ばかりがよける羽目になるのか。ちょっと不平等だったかもなぁ。



 と思いながらも、次のお店はどれがいいかなんて話ながら、歩く。そんな中、僕らって、案外有名なのかかなり声を掛けられる。



「あっ、ロミオがジュリエットとティボルトに挟まれてる~。三人とも頑張れ~」



「百合葉ちゃーん。修羅場にならないようにねー」



「咲姫ちゃんかわいー」



「蘭子様、案外純情~」



 などと、色々声を掛けられた。挟まれた腕で頑張って手を振り、スマイルスマイルっ。女の子たちもミーハーなもので、キャーッ! なんてわざとらしい声援を送ってくれる。すると、僕の両腕に掛かる愛の重さが増す……。ああ、心地よい痛みだなぁっ! 僕はマゾじゃないよ? マゾ魔族じゃないよ?



「さて。次はどこ行こっかぁ」



「わたし甘いもの食べた~いっ! こういうのって、ちょっと甘過ぎなデザートも面白いのよねぇ~。喫茶店に行きましょ~?」



「私は、縁日に行きたいな。たまにはこういう時に……童心に戻ってみたいものだ」



 僕の問いに、それぞれ答える咲姫と蘭子。……ああっ、どっちもどっちで可愛いなぁ。



「う~ん、どっちも捨てがたいね。じゃあ二人がジャンケンしてよ。勝った方に先に行こうよ……ちょっと、腕が痛いよ?」



 僕が言ったら途端に圧が増す僕の両腕。くっ、これが愛の重さ! なら耐えるしかな……痺れてきたなぁ。こっそり離しちゃお……っと余計に力が痛い痛いよ?



「蘭ちゃん……。ついに決着を付ける時が来たようねぇ……。子どもっぽいのなんて、すぐ飽きちゃうんだからっ」



「咲姫……。祭りの風情を解さぬ愚か者め……。女々しいだけの君には負けないさ」



 咲姫は指をワシャワシャとさせて準備。一方で蘭子は拳に力を入れて気合いを入れていた。



「はいはい。それじゃあ二人とも。手を出してー! さいしょはグーッ! ジャンケンポッ!」



 急かし気味で始まったジャンケン。その結果、咲姫はパーを、蘭子はグーを出したのだった。  

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