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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第57話「学校祭、どっちと回る?」

「あー満腹ー」



「まんぷくぷくぷくぷくのすけー」



「ぷくのすけ……タイヤキ、みたい……」



「たこ焼きなら食べたけどね。ぷくのすけ。確かに魚みたいだ」



「ぷっくっぷっくっ」



「魚の真似しないでよ仄香……っ。面白いから……っ」



「ウケる……。写真、撮ろ……」



 譲羽に撮られるパクパク口の仄香。いつかこういうアホみたいな日常写真もまとめたいものだ。展示としてじゃなく、僕らのアルバムとして。



「カパッ。エリマキトカゲのエーラーこーきゅーうー」



「仄香、エリマキトカゲは爬虫類だよ……」



「まじかっ! 水中類かと思ってた!」



「間違えるとしても両生類ね……」



 耳の横に手のひらを広げる仄香ちゃん、知識はやっぱりどこかズレていた。だからこそ面白いんだけど。ユズはパシャパシャ写真撮ってるし。



 机の上の食べ終わったゴミを囲んで僕ら。背もたれにぐったり体重を乗せて、だらぁ~っとひと息ついていた。



 しょっぱいジャンクな食べ物を食べて、あまーいしゅわしゅわな炭酸飲料を飲んで。それをみんなでぐるぐる回しながら。



 やっぱ、いいよなぁ。ぼっち時代の僕には考えられなかった事だ。こういうのが青春なんだろうなぁって思う。また泣きそうになりそうだ。



 しかし、そんな中でやたら時計とスマホを気にする二人が。蘭子と咲姫である。



 きっと、外を回る時間を気にしているんだろう。あんまりダラダラしてたら、ゆっくり回る時間も無くなってしまう。



 でも、みんなで回ってしまったら写真部が閉鎖状態に。店番はどうしよう。楓先生に頼む? 他のクラスメイト? でも、みんな忙しいだろうからなぁ。前々からならともかく、いきなり言われるのは困ると思う。



 そんな風に僕も時計を見ながら考えていたら、仄香がパーンと机を叩く。



「そういやさー。ゆーちゃん体調もどったんならさー。あたしが留守番するしー、校内回ってきなよー。面白いよー?」



「えっ? いいの? 退屈じゃない?」



「イイ。百合葉ちゃんにも、イベント……楽しんで欲シイから……」



「仄香……ユズ……」



 なんて姉想いの妹たちなのだろう。ああ、ここまで一生懸命に育ててきて、本当に良かったと涙しそう……。二人の出産。待ちに待った幼稚園入学。一人で遊べるようになった小学校。そして中学校の反抗期……。いやそれママか。



「もしやもやしのもしかしてっ! ゆずりんも残ってくれるのーっ! やったー!」



「イヤ。アタシは百合葉ちゃんと一緒に行ク」



「うぇーっ! 残るんじゃないんかーいっ!」



「冗談……。百合葉ちゃんと一緒に回りたいケド、アタシたちは楽しんだから……。行ってキテ……」



 仄香に対しボケる譲羽。仄香もついノリツッコミが出てしまう。最初会った時は不器用そのものだった譲羽も、仄香のお陰か、ずいぶん冗談を飛ばせるように。ああ、これも成長なのかなぁ……としみじみ。って、これもママか。



「どうする百合葉。私は百合葉と二人きりがいいんだが。どこぞのお邪魔虫お姫様は一人でパフェでも食べて自撮りするのがピッタリじゃないか? きっと映えるぞ? 一人ぼっちなのがよくお似合いで」



「え~? 冷血女が百合ちゃんと一緒に回って楽しませてあげられるのぉ~? 絶対にわたしとの方が楽しいわよぉ~? アナタの方が一人に慣れてるんじゃなぁ~い~?」



「相変わらずだなぁ。二人とも」



 蘭子と咲姫の冷戦の開始である。穏やかに微笑んでいるのに、相手を貶してる。この喧嘩ップルを見るのも楽しい。二人は二人の良さがあるのになぁ。



「これは百合葉に決めてもらうしかないな」



「そうよねぇ。わたしが選ばれるに決まってるんだからぁ~っ」



「そんなワケはない。百合葉は私を選ぶはずだ。先ほどの劇でも、ねっとりとした熱い剣劇を交えたところだ。唇もなっ」



「それだったらわたしなんか結婚式あげて誓いのキスをもらったわよぉ~。途中退場の負け犬がでしゃばらないでもらえるかしらぁ~?」



「ライバルというのは百合葉と対等だったという証さ。姫様は指くわえて王子様を待ってるだけじゃないか。つまり私との方が一緒にいて相性が良い」



「あらぁ? それはつまり、わたしは待っているだけで百合ちゃんに選ばれるという事よねぇ~? わざわざ剣劇を交えなくても、唇を交えられるんだものねぇ~」



「熱い殴り合いの喧嘩。熱い友情。その後に待つのは熱い恋愛。それが物語の王道だろう」



「それ少年マンガよねぇ!? 女同士で喧嘩の後が恋愛って意味分かんないわよぉ! 男同士よねそれぇ! レズじゃなくてホモじゃないのっ! もう百合ちゃん! 黙ってないで! さあっ! どっち!?」



「まあ慌てないでよ。そうだなぁ。二人ともかわいいしなぁ。どっちと回ろうかなぁ。迷っちゃうなぁ~」



 ホモもレズも、端から見たら似たようなモノだと思うけどね。口論の末、二人は僕を見る。僕がわざと焦らすと、ハラハラとした目で眼光を送ってくる二人。蘭子は腕を組んだままトントンと指を叩いて落ち着きがない。咲姫は神に祈るように手をギュッと重ねて。ああ、その必死さ……かわいいなぁ。



 確かに、どちらか二人きりの方がきっとイチャイチャ出来て楽しい。蘭子とは、劇で暴走をおさめる為の約束もある。一方で咲姫とのイチャつきはきっと最高だ。でも、クールな蘭子相手はそれもまた新鮮で良い。としたら、順番にデートかぁ……。



 順番にデートって……どうなんだろう。いくらハーレムのためにみんなに告白というクズ行為をしたとはいえ、僕が楽しんでいる間に、選ばれなかった子はどういう想いをする? いや、そんなの甘さだ。ハーレムを作るくらいなら、そんな半端な優しさは忘れないと……。でも……。



「ねーゆずりん。ゆーちゃんはどっち選ぶと思うー?」



「アタシなら蘭子ちゃん……。蘭子ちゃんは一人だと楽しめなくて、きっと寂シイ……」



「そういう見方もあるかー。あたしはさっきーかなー。二人の自撮りはきっと映えるよー? バエバエだよー?」



「バエバエバヤバヤ……。それも一理、アル」



 なんて、ほのゆずは僕らの動向を楽しんでいる様子。いつからそんなに逞しくなったのアナタたち……。



 どーしよっかなーと言いながら、焦らしに焦らしつつ僕は本気で悩む。前後に選ぶだけでも、優劣がついてしまうのだ。じゃあどうすればいい?



 いや、その答えは決まってる……。最初から決まってるじゃないか。



 僕は蘭子と咲姫、二人の手を握る。一瞬パァと表情が明るくなる二人。でも、二人同時だから、僕の意図を計りかねて、またハラハラとした険しい顔。う~ん、かわいい。



「僕はやっぱり、二人と一緒に回りたいなぁ。ダメ?」



 二人の手を握ったまま、上目遣いで頼んでみる。なんだか知らないうちに微笑みの甘き王子とかと呼ばれてる笑顔とともに。ちなみにこの上目遣いは、入学前に自撮りしまくって、いかにして相手のハートをオトそうかと練習したモノである。



 僕の笑顔を見て、うっとたじろぐ二人。ウィンクして、頬染め更に顔を歪ませる。うんうん、分かりやすくていいぞ? かわいいぞかわいいぞ?



「くっ、なんて卑怯な……。百合葉、安全策に出たな? このチキン、根性なし……。他の女に味わわせないくらい、骨の随までむしゃぶりついてやるぞ……」



「百合ちゃんって、確かに優しいところはあるし、そこも好きだけどぉ、その優しさが残酷な時もあるのよねぇ……」



「むむ? ご不満? ご不満かぁ……。じゃあ不満がある子とは回らない方がいいかなぁ。一緒に楽しめれば良いと思ったんだけど、嫌ならしょうがないなぁ」



 と、握っていた手を離す。すると、途端に焦りだす二人。



「ま、まあいいだろう。咲姫と一緒でも。百合葉は公然3Pをお求めのようだし……。フフフッ、それもまたレズの一興……。全力で百合葉を楽しませてやる」



「ま~た蘭ちゃんはえっちな妄想ばっかりぃ~。学校祭を普通に楽しむわよぉ~。それでいいのよね?」



「よぉっし。そうこなくっちゃ!」



 蘭子も咲姫も納得して受け入れた。僕は笑顔で彼女らの手を握る。



「ふぉっふぉっふぉっ。決まったようじゃな。そんじゃー片付けはあたしらでやっとっからー。軽くおみあげでもよろしくー」



「写真……待ッテル」



「はいよー。じゃあ、お言葉に甘えてあとお願いするね」



 送り出してくれる仄香と譲羽。そんな二人を背に、僕は蘭子と咲姫の手を引っ張る。



「じゃあ行こっか!」

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