表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
371/493

第52話「ライブ前のMC」

「いぇーい!」



 カーテンが開いて、拍手鳴り響く。仄香の合図に適当にノリの良い声を出してジャーンジャカジャカとギターを弾き始める。みんなも同時に音を出す。最近はスタジオで、曲の始まり毎に練習していたから、タイミングはバッチリだった。僕らのロックな音を聴いてら観客の拍手がより大きくなる。



 音がちゃんと伝わってるか様子見る。僕の声が少し調子悪いけど、歌いきるには問題は無さそうだ。ステージ目の前に居る唄佳ちゃんと響希ちゃんも、盛り上げつつ指で丸を作っていた。遠くでも、律香ちゃんが両腕で大きな丸を。音量は大丈夫そうだ。こうやってサポートしてくれる仲間がいるのは本当に助かる。



 仄香がダカダンッと打ったのを合図に、僕らはジャッと音を切って最初の音出しが終わる。実にライブらしい始まり方だ。すごく綺麗に決まったようで、僕は一安心。しかし、問題はこれから。ライブ前のMCがあるのだ。



「どうもこんにちはー。姫百合ガールズと申しまーす」



「言い方がお堅いぞー」



「もっと気楽にー」



「じゃあ! 姫百合ガールズでっす! いぇーい!」



 僕の声に大声でツッコミが入り、観客に笑い声が。それに合わせて仄香がシャンシャンシャンとクラッシュシンバルを叩く。なんだかとてもライブっぽい。ああ良かった。場は温まりそうだ。



「さっきのロミオとジュリエットの衣装のままの参加になりまーす! なんかこの方がカッコいいそうでーす。提案して時間調整してくれた実行委員の方、ありがとうございまーす!」



「いいぞー!」



「いいねいいねっ! みんな似合ってるよー!」



 響希ちゃんと唄佳ちゃんが大声で相づちを入れる。



 藍羅ちゃんはうんうん頷きつつ、立派な一眼レフカメラをパシャパシャ撮っていた。僕らの部室のよりも断然良いものだあれ……。本格的だなぁ。あとでデータもらわないと……っ!



「今回、夏休みが終わって、学校祭でバンドやりたいって話になりましたー。僕らはみんなバンド経験が無かったので、大慌てです」



「あははははー」



 笑ってくれるみんな。観客席の方でも、笑う人はいるみたい。よしよーし。だいぶ掴みは良さそうだ。



「それから、クラスの軽音楽部の子たちに相談して、楽器を買ったり、練習の仕方を教わったりしました。今はこの最前列でライブを盛り上げてくれていまーす。最初から最後まで、本当にありがとうございまーす」



「大丈夫だぞー」



「いいよいいよー」



 僕らは一礼する。それでまた拍手が自然と起こった。



「それでですね、えーと……」



 しかし、そこで僕は何を喋ろうとしていたのか忘れてしまった。ある程度MC内容は考えてあったのに……!



 そんな中でちょっと無音になってしまった時、すかさず唄佳ちゃんがバンバンとステージの床を叩く。



「なんの曲やるのー? 曲紹介してよー」



「ああそうだった。曲ね。いきなり演奏してもみんなビックリするよね。大丈夫、秘密のまま始めたりしないからね」



 少し観客が沸いた。助かった……。流石はギタボの先輩唄佳ちゃんだ。



「本当は三曲やろうかって話もあったんですけど、案外大変で一曲になっちゃいましたー」



「そういうのあるよなー」



「だよねー」



 完全に響希ちゃんと唄佳ちゃんがメインで盛り上げてくれる。軽音楽部なだけあって、MCの振り方が分かってるのだろう。ありがたいなぁ。



「僕らがやるのはもうすでにある曲のコピーです。テレビやゲームとかでも有名で、夏の懐メロとしてよく紹介されます」



「夏の懐メロとかダジャレかよー」



「いいね百合葉ちゃーん」



「あははっ。ごめんごめん」



 観客からもあははっと笑い声があがった。また仄香が軽くシャンシャンする。こんなの、もしスベってしまえばひんやりした空気が流れるに違いない。僕自身もギャグを言うつもりじゃなかったけれど、なんか思った以上に盛り上がってしまった。



「最前列で盛り上げてくれているみんな、ありがとう! 初めてのライブだし、初めてのMCだけど、緊張していたのがだいぶ治まりました!」



 本当はまだドキドキがつらいけど、それでもまだマシだ。ジャーンと僕が弾く。仄香も空気を読んで、シャーンダカダンとドラムを打ち鳴らす。



「安心してー! カッコいいから大丈夫ー!」



「百合葉ちゃんカッコいいですわー!」



「衣装似合っててカッコいい~最高です~っ!」



「ゆりはすー!」



「百合葉っちー!」



「百合葉ちゃんー!」



 さらに盛り上がる声。衣装を褒めたのは遠くにいる結衣ちゃんだけど、君が作ったんだからね? とツッコミたかった。



「なんだか僕すごい人気者になれたみたいで、ちょっと照れちゃうなぁ……。そんなに自信がないんだけど」



 ちょっとネガティブな発言だったかなと、言った瞬間に後悔した。しかし、最前線のみんなは声を上げて盛り上げてくれる。



「顔が良い!」



「声が良い!」



「スタイルが良い!」



「脚が良い!」



「誰だっ、脚って言ったのはーっ! いま脚出してないでしょ!」



 ロミオ衣装のパンツスーツでドンッと床を踏みならす。また笑い声が沸く。まさかの脚……っ!? 最近太くなって辛いのに、そんなところ見られてたの!? もう毎日ジャージで登校しようかなぁ……。



「セクハラはともかくね。こんなに温かいお客さんに支えられて、本当にありがたいです! それでは、話すのはこれぐらいにして、演奏しましょうかー。僕らみんなが楽器始めたての初心者で、なんとかそれっぽくなるように頑張って覚えた曲です。訊いてください。『夏休み』」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ