第47話「マーキュシーオの死」
式が終わった昼ごろ。ロミオの友人であるベンヴォリオとマーキュシーオはヴェロナの町を歩いていると、キャピュレット家の一団に遭遇氏した。その先頭にいるのは蘭子が演ずるティボルト。キャピュレット卿の宴会で、ロミオに食ってかかった男だ。
ティボルトはマーキュシーオが、モンタギュー家のロミオと親交があることを追及した。マーキュシーオもティボルトと同じく血気盛んな男だったので、遠慮なく言い返した。ベンヴォリオは喧嘩を始めようとする二人の間に入り仲裁を試みるが、その試みは虚しく、今にも決闘を始めようとするところ、ロミオが通りかかってしまったのだった。
「やい、ロミオ! 貴様の血はこのヴェロナを汚すモンタギュー家の者だっ! この悪党めっ! 町中を歩き風紀を乱すんじゃない!」
「何を言っているんだティボルト。それは暴言を吐く君の方じゃないか。僕は喧嘩などしたくない」
「うるさいっ! お前らみたいな汚れた一族が居なければ、キャピュレット家の者たちははビクビクしないで町中を歩く事が出来るんだ! その事実を受け入れられないようならば、俺がここで消してやる!」
「やめろティボルト!」
ティボルトである蘭子ちゃんの『俺』呼び……低く脅すその声……ああいいなぁ……。元々顔立ちはすごく整っているし、スタイルも声の良さもバツグンなので、もう彼女が主役張った方がいいんじゃないかというくらい、舞台映えする。見とれそうだ。
ティボルトは剣を抜き、僕に構える。その剣はなんのこだわりなのか、鋭さこそないもののしっかりとした金属性で、ぶつかれば金属音の響く物だ。小道具班も頑張ってるなぁ……。
「なあロミオ……っ。ティボルトに屈服したのか! あいつの言い分おかしいだろ! それなのに言い返さない今のお前は情けないぞっ! いいさっ! 腰抜けになっちまったお前の代わりに、俺が戦ってやるよ!」
「そういうわけじゃない! マーキュシーオ! やめてくれっ!」
「ああっ、俺は! 二人の喧嘩を止める事すら! 出来ないのかっ!」
ロミオが平和的解決を望んでいることを知らないマーキュシーオはティボルトの前に立ちはだかり、剣を抜く。流石は唄佳ちゃん。ボーカルやってるだけの事はあるなぁってくらい、マーキュシーオの声は体育館によく響いた。
一方で、喧嘩を止められない事をすごく大げさに身振りで表現するペンヴォリオこと芸術肌たんぽぽちゃん。二人の体で表現するか、声で表現するか、この二人の噛み合わせはちょっと面白い。
ティボルトとマーキュシーオの決闘が始まる。しかし、その剣は何度か金属音を鳴らしたあと、唄佳ちゃんの脇を貫く。もちろん、体と腕の間だ。
「ぐああっ!」
「ああっ! マーキュシーオ! 死ぬんじゃない! 今、処置をしてやるからなっ! くそっ!」
「俺は、もう駄目だ……」
「マーキュシーオぉぉぉぅ!? うわぁああああああ!!」
ベンヴォリオがマーキュシーオを抱え処置をするフリ。しかし、マーキュシーオは首をガクッと倒れさせ、死んだフリをする。いやしかし、練習のときから思ってたけど、たんぽぽちゃんの演技面白いな。オーバー過ぎてギャグになるんじゃないかと思うくらいだよ。
「フッ、雑魚が」
吐き捨てるティボルト。そのセリフめっちゃ似合うね蘭子ちゃん。
それを見ていたロミオ。わざと、ワナワナと体を震わせる。剣を抜き、そしてティボルトに向かい構える。
「ティボルト貴様ーっ!」
「ハハハッ! 貴様が友を殺されるまで剣を抜かぬ臆病者だからだ! さあ俺と決闘をしろ! 我が一族の誇りにかけて! モンタギュー家であるお前との力の差を見せつけてやる!」
剣をぶんぶん振り回し、演技しながら言う蘭子ちゃん。ちょっと楽しそうでかわいいね。決闘シーンなのにね。
 




