第43話「開幕。友人、ベンヴォリオの提案」
ブザーと共にカーテンが開かれる。それぞれ決まった位置に立つ僕ら。
「時は14世紀。イタリアとヴェロナという都市に、皇帝派の家系であるキャピュレット家と教皇派の家系であるモンタギュー家がありました。両家は昔から争いが多く、一族の遠い血筋のものや従者であっても、たまたま出会っただけで喧嘩が起こるくらいでした」
僕らの舞台のナレーションが始まる。読み上げているのは律華ちゃんだ。彼女の普段のツンツンした口振りや軽音楽部でドラムをやっているという強めな印象とは裏腹に、こういう大事や役割もしっかりと練習し真面目にこなすという、優等生な一面も見られたり。クラスメイトも仲良くなってみないと、案外中身のの性格まで分からないものだ。
ちなみに彼女の服装は貴族のご子息風のジャケットに短パン白タイツ、シルクハットだから、いと萌ゆる。謎の結衣ちゃんの白タイツ推し……ショタ感が増してとても良いと思います……。基本的に女の子の男装はなんでも大好きなのだ。
「やあ、ロミオよ。キャピュレット家がヴェローナの美女を皆出席させて饗宴を開こうというのだ。しかし、我々モンタギュー家の者は歓迎されぬのだと言う。ならば、仮面を付けて出席しないかっ? そうすれば、君の大好きなロザラインにも会えるし、それに、ロザラインを他の美女と見比べることも出来るぞ? そうすれば、君は今まで綺麗だと思っていた白鳥をカラスだと思うようになるだろう」
「ああ我が友人ベンヴォリオよ。いくら君とて、その発言は信用できない。しかし、我が愛しのロザラインが出席するのであれば、行くのも良いかもしれないな」
ベンヴォリオ役は、美術部のたんぽぽちゃんがやっていた。芸術肌なのかいつも突飛なテンションばかり目撃したし、今みたいな演劇風なノリは普段からやってた気がするからすごい滑らかだ……。そんな彼女もこう男装してわざとらしく演技する姿は萌ゆる萌ゆる……。女の子の男装演劇、やはり良きかな……。
僕も、練習した通りにハキハキと、身振り手振りを大きく動かし、ロミオを演じる。緊張で頭が痛いけれど、何度も練習したお陰で、なんにも考えずにセリフも身振りもスルスル出てくる……。家でも練習したかいがあったというものだ。その余裕の合間に、こうやって女の子を眺める事が出来るのだから……。
ロミオは誠実で熱烈な恋人であった。まるで僕のようだね……。ピッタリな配役じゃないか。んっ? 誠実……? はて。
しかし、ロザラインの事を考え夜も眠れないくらい想うロミオに対し、ロザラインは軽蔑しているのだった。その報われぬ恋を、ベンヴォリオは目を覚まさせようという考えであった……というナレーションの解説。舞台役者のセリフだけでなく、途中で語りを入れてくれる。定番の劇の仕組みはというのはよく分からないけれど、語り部のような役割があるだけで、僕らはぐっと楽になる……。




