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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第34話「学校祭に向けて」

 唄佳ちゃんとのデートを終えて次の日からは、もう大忙しだった。



 学校祭に向けて、ライブと劇の二つの大仕事を築き上げる。週二回のスタジオ練習。家でのギターボーカルの個人練習。そして、文芸部の子の手によって仕上がったロミオとジュリエットを読んで、僕担当のセリフを覚え切らないといけないのだ。



 授業中は話を聞きつつ、合間を見てロミオとジュリエットのセリフを静かに口にして頭に叩き込み、そして指はギターの基礎訓練。一息つく暇もない。



「百合葉さん! 採寸に付き合ってくださいましっ!」



「わ、わかったよ藍羅ちゃん。だから引っ張らないで……」



「百合葉ちゃんん……まだ楽譜の打ち合わせがあるのに……。ううう……」



「ごめんねっ、ユズ! また後で!」



 授業が終わった後も学校祭の準備で、引っ張りだこだ。



 学校祭実行委員である藍羅ちゃんに連れられたのは別の空き教室。女子しか居ない学校とはいえ、ちゃんとカーテンをしめ、扉にも目隠しが貼られている。そういうの大事だよね。僕の採寸と言ったとき蘭子なんか目を輝かせて席を立ってたし……。覗くつもりだったでしょあの子……。



「百合葉さん、やっぱり胸が大きいですわね……。高身長で胸の大きい男装女子……それもまた堪りませんわぁ~っ」



「藍羅ちゃんっ! いいからちゃちゃっと計っちゃってねっ!」



「あらあら、ずいぶん余裕が無いようですわね。そんなようでは、主役のスーパーイケメンロミオはつとまりませんわよ?」



「ごめんっ。そんなにスーパーイケメンなの……?」



 うむむ、今のは大きなマイナス点だ。胸の話をされて焦っちゃったかもしれない。忙しい時こそクールに。彼女の言うとおり、イケメンになるには、常に余裕を持っていないと。



 採寸が終わったあとも、軽く劇の流れを合わせる事に。制服のまま、僕と咲姫が向かい合い、まわりに他の役の子たちが取り囲む。



「ああロミオ、どうしてアナタはロミオなの!」



 ああ咲姫ちゃん……演劇派咲姫ちゃん……かわいいなぁ。なかなかサマになっていて、とてもジュリエット……僕のジュリエット……。



 「……百合ちゃん? セリフセリフっ」



「ごめんっ。……今日からもう、ロミオではなくなります!」



 見とれていたら、セリフを忘れるところだった……。ぼんやりしてないで、集中して練習をやって、すぐに覚えきらないとなぁ。両頬をパシッと叩いて、僕はやる気を出す。



 台本見ながら、全体を通しての練習にまでこぎ着ける事が出来た。後はこれを丸暗記して、身振りと立ち位置も覚えるのだから、大変も大変だ。



※ ※ ※



 劇の練習もほどほどに、クラスのみんなが解散というところになった時。担任の楓先生が僕に声掛ける。



「ところで藤咲よ。忙しいところ悪いが、文化祭の写真部としての出し物は出せるのかな?」



「あっ……!」



「部活として認めている以上、活動実績はないと困るんだ。テーマを決めてさ。やらないという選択肢はないからなー」



「は、はい……」



 すっかりぽっかり忘れてた……。僕らは軽音楽部でも演劇部でもない。本来は写真部だったのだ……。そんなの忘れて百合百合を堪能してただけだから、なんの活動も出来ていない……。



 僕ら五人。教室から向かう先は僕ら写真部の部室だ。緊急会議だ緊急会議。薄暗くなった外を眺めながら僕はたそがれる。



「写真部としての出し物か。これは困ったな百合葉」



「百合ちゃんどうするのぉ~?」



 蘭子も咲姫も投げ出すように僕に言う。彼女らは特に焦っていないみたいだけど、部長としてなんにも考えなかった僕の責任だしね……。なんとかはしないと……。



「どうしようかなぁ。写真部らしい写真なんて、あんまり撮ってないよ。展示をやるにしても、なんの写真を飾ればいいのやら」



 みんなでのスマホの写真ちょっとあるくらいだよ……。そのうちで公開出来るような写真はあっただろうか。少なくとも何枚かはあるか……。



 う~んと唸る僕。そこに、机をパシパシと叩くゆずりん。僕が見やると、彼女はドヤ顔で片目を手で隠して、中二病ポーズを。かわいい。



「はっ! ゆずりんが何か意見を!」



「な、なに? アイディアある?」 



 仄香と僕が言うと、譲羽はニヘラァと笑い目をふせる。これは何か自信満々のようだ。期待が高まる。



「ふふふっ。学校でのイベントは……このカメラに収めてアル……。足りなかったら、普段スマホで撮った写真を提供してもイイ……。画質は良いから、見映えだけなら問題ないと思ウ。アタシのカンペキな作戦……」



 そして、邪気眼でも抑えるみたいに片目を隠したまま、もう片方の手を宙に差し出して笑う譲羽なのだった。中二病演出可愛いなぁ。



「ナイスゆずりーん!」



「さすがユズ! 助かったよ!」



 僕と仄香は手を握って感謝を伝える。すると、中二病らしくないウヘヘッという不器用な笑いを……。その完璧じゃないところもまた萌え萌えなんだよなぁ。



「それで。タイトルやテーマはどうするんだ?」



「展示ならあった方が良いわよねぇ」



「ああっ! それも必要かも!」



 蘭子と咲姫の指摘で思い出す。テーマを決めてと先生は行っていたから、最低一つは無いといけないだろう。普通は五人バラバラだろうけろど、そんなにみんなテーマを持てないと思うし……。



「じゃあ、全体のタイトル、テーマを決めて写真を選ぼっか。普段の写真からだと……どんなタイトルがいいかな……」



 僕はあごに手を当てて考える。しかし、何かが浮かぶ前に、ユズがパシッと机を叩いてアピール。今日のゆずりんはグイグイくるなぁ、嬉しいよー?



「タイトル……それは、女子高校生の日常……」



「それはアニメタイトルにありそうだね……」



 悪くはないんだけど、それはアリなのだろうか。悩んでいると今度は蘭子が机を叩き挙手を。



「ならば、激写、女子校生の乱れたレズ事情……なんかはどうだ?」



「エロ方面に持って行くのやめなさい! そんな写真ないでしょ!?」



 蘭子の変態発言にツッコむ僕。しかし、みんなは疑問顔で首を傾げる。



「百合百合くらいならアル……」



「私たち、割といけないライン超えてるよな」



「そうだった! 僕ら部室で際どい百合百合してたもんねっ!」



 ユズと蘭子の意見はごもっともだった。確かに僕がみんなに告白する前から、女子高校生の日常というには危ういシーンばかり。なんならその写真は、女子校生の百合写真集とでも名付けて同人誌で売れそうだ。いや、絶対に売らないけど。



「じゃ~あ~。わたしと百合ちゃんのイチャラブ写真をいっぱい飾っちゃお~? タイトルはスイートタイムでぇっ!」



「それも学校祭の展示には向いてないよっ!」



 写真対象が絞られただけで結局百合写真には変わりがなかった。いや、その手の需要はありそうだけどさ……。ここは学校だから無理だし、そもそも恥ずかしいという問題だ……。



「ともかく、そんな写真は飾れないからね? 校舎とか風景中心にしてさ。僕らの日常生活で撮った写真から出して行こうよ。そういう写真だと、タイトルは……」



 ようやく百合脱線しそうな話を戻して、まともなタイトルを考える。



 しかし、そこでも我らが思い出写真担当ゆずりんは案があるようで、ふふふっと邪気眼ポーズで笑う。



「じゃあ、わたしたち展とか……カナ?」



「わたしたちてん!? めっちゃええやんそれー」



「良さそうだね。他に何も無ければそれにしよっか」



 どこかで使われてそうだけれど、かなり良さそうなタイトルだった。仄香も僕もうんうん頷く。それならいかがわしさも無いし、高校生ノリとかで許される、自由の効くテーマに出来そうだ。



「わたしたち展……いいわねぇ。みんなで撮った写真とかでも許されそうだしぃ~」



「そうだな。百合葉の恥ずかしい写真をいっぱい載せよう」



「それはやめてね?」



「冗談だ。百合葉の恥ずかしい写真は自分で使う用専用と決まっているからな」



「なんに使うのかなっ!?」



 それは冗談で済まなさそうなんだけど……? 蘭子を見るとウインクしてくるから、割と本気の線も有り得る……。怖いレズだ……。



 ともかく、咲姫も蘭子も好感触のようだし。ならば、僕ら写真部の出すタイトルは決まりだ。



「それじゃあわたしたち展で行こう! みんな忙しいと思うけど、使えそうな写真をよろしくねっ!」



「オーッ!」



 元気良く返事をする仄香を筆頭に、みんなも手をかかげやる気を見せてくれる。全員大変な中なのに、モチベーションが高くて助かるなぁ……。



 さて、いよいよ本当に忙しくなりそうだ!

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