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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部二章「百合葉と美少女たちの秋」
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第09話「軽音楽部の部室へ」

「アンタたち藤咲さんと何話してるのよー」


「おはようございますぅ~。何か部活の相談ですかぁ~?」


 唄佳ちゃんと響希ちゃんにバンドをやりたいという相談をしていたところに、また新しいメンバーが現れる。一人は金髪寄りの茶色いポニーテールと短い前髪パッツン、もう一人はふわっとした茶色のロングヘアーを背中で留めて揺らしている。


 そんな彼女らは、軽音楽部の部員である律華りっかちゃんとかなでちゃんだった。この子たちもあまり話した事は無いけれど、僕らが写真部を作ったのと同じように、今年の春に集まって軽音楽部に入ったメンバーだ。


「おはよう律華ちゃん、奏ちゃん。今、バンドの相談を……」


 しかし、彼女らの質問に返そうとした所で、また別の美少女たちが。


「おは……よう……。何の相談ナノ……?」


「へぇーい! おっはよう! あたし抜きにバンドの話しかぁー?」


「そうなんだ。それで……」


 タイミング良く現れた譲羽と仄香。でも、僕が話をまとめようとしているとまた……。


「あら……朝練に響希が来ないと思ったら、こんな所で油を売っていたの」


「こ、琴子……! 違う。行こうと思ってたんだが、これはだな……」


 新たなメンバーの登場だった。


 うーん、みんな揃ってから話を始めた方が効率が良かったかなぁっ!


※ ※ ※


「なるほどそうなのぉ、ホノちゃん達がバンドねー。アタシらも学祭出るし、楽しくなりそうだわ!」


「そうっ! あたしらのパッションをぶちかますぜぇー?」


「わわぁっ。それは負けられないですねぇ~」


 仲良く話しているのは律華ちゃんと仄香と奏ちゃんだった。律華ちゃんはツリ目でツンツンしたイメージだったけど、明るい子みたいだ。


 逆に、ちょっと大人しくて同い年でも敬語な奏ちゃんも、仲が良い子が居れば会話に参加出来るという感じだ。彼女は話しにくい印象だったけれど、これを気に仲良くなっておきたい。ハーレムとかじゃなく、楽しくクラスメイトとしてね?


「百合ちゃん? 他の子にまで手を出したら駄目よぉ?」


「手を出すなんてしないし、むしろ僕は手を出されてばっかりな側だよ……」


 察しの良い僕の姫様だった。やはり僕のハーレムメンバーはこれ以上増やせないみたい。そもそもこれ以上は相手できないから構わないんだけどね。


「そうだな。百合葉は節操が無いからな……」


「節操が無いのはアンタだよ……」


 セクハラ魔神にまでなった蘭子に言われたくないものだ……。いやいや、僕は百合ハーレムという点では一途だし? でも、蘭子だって、僕に一途だから、節操がないとは言えないのか……。


※ ※ ※


 放課後になり僕らは、唄佳ちゃんと響希ちゃんを先頭に、軽音楽部の部室に向かっていた。放課後の部活の声が廊下に響く中、一行は二列のような三列になって進んでいる。すごい邪魔になりそうだ。


 そうして着いたのは部室棟の四階端。音楽室特有の分厚い壁をした部屋だった。先頭だった唄佳ちゃんがドアノブをひねり、重たそうな扉を押し開ける。


「おつかれ~、琴子ちゃん。みんなを連れてきたよ~」


 唄佳ちゃんが言うと、哀愁漂うメロディーをギターの弦一本一本で弾きならし、僕らに向き直った黒髪パッツンの先輩。髪と身長と、そして凛としているのにミステリアスな風貌が無ければ、譲羽にも似て見える、黒髪美少女。


「朝は邪魔をしてしまってごめんなさい。私の名前は琴子。この部活の部長をさせてもらっているわ」


「僕は写真部の部長、藤咲百合葉です。そのギター、琴子ことこ先輩のですか? かっこいいですね」


 なんとか小学生みたいな感想をひねり出す。改めて挨拶をされ、そのミステリアスな風貌に見とれた僕はうっとりしてしまったのだ。


「めんどくさいからタメ口でいいわ。百合葉ちゃん。……そうね、このギターは見た目に惚れて買ったのよ。褒めてもらって嬉しいわ」


「凄い……デス。闇属性ッポイ……」


「だよねー。ヴィジュアル系みたいでかっこいい!」


 譲羽と仄香も次々と褒める。すると彼女は得意げになったのか、ポロンボロンと悲哀の漂うフレーズを奏でる。


「琴子が照れるなんて珍しいんだ。これは話がスムーズに行きそうだなー」


「そうなの?」


 高身長の響希が腰を曲げて僕に耳打ち。琴子先輩、いつもはもっとクールなのかな? 譲羽っぽいなぁと思っていたけれど、蘭子に似た所もあるかな? と思う。


 ただ、その三人が集まれば、漆黒の闇を奏でるスリーピースバンドになりそうだ……。


「それで、アナタたちが学祭に向けてバンドを? わたし達と張り合うって事かしら?」


 くすりと笑う琴子さん。僕はぶんぶんと手を振る。


「いやっ! そんなつもりは無くて! ただやりたいだけなんです。でも、素人なので、教えてもらおうと」


「あたしが発案したんでっすぅー! あたしは仄香! 学祭に青春っぽいことしたくて!」


 仄香が隣にいた僕と譲羽の肩に腕を回して言う。完全に仄香が主導な感じだ……いや、実際にそうしてもらった方が助かる。


 ただ、ハーレムの中心になりたい僕としては、仄香任せにはしていられないなぁというところ。


「なるほど……ね」


 頷く琴子さん。


「仄香ちゃんは何をやりたいのかしら?」


「そりゃあもうドラムよぅっ!」


 元気よく片腕を上げる彼女。しかし、タメで良いとは言っても、いきなりこんなノリで大丈夫なんだろうか。


「それじゃあ、律華りっかちゃんの出番ね。お願いするわ」


「アタシねっ! ふふっ! 任せなさい!」


 なんて、つり目同士ハイタッチした二人。上下関係なくノリが良い部活みたいだ。こういう仲の良さって憧れるなぁ。


「ベースは誰かしら?」


「多分私だ」


「じゃあ響希。浮気しちゃ駄目よ?」


「な、何を言ってるんだお前は……っ!」


 蘭子が手を挙げると、それを一睨みし、響希に釘を刺す琴子さん。う~ん、この二人、百合ップルなのかな? 蘭子並みに高身長な上に男勝りな響希ちゃんが尻に敷かれている感じがあるけれど。とてもよいですね、うん。とてもよい。


「百合葉……。私、先輩に何か嫌われているのだろうか」


「大丈夫だよ。咲姫が蘭子に僕を譲りたくないのと同じ気持ちだろうから」


「ふっ。なるほど、納得した」


 だなんて、仕方ないとも微笑ましいとも見えるような笑みを浮かべる蘭子ちゃんだった。本当は納得しないで貰いたいけどね……。しかし、咲姫とはたびたび冷戦を繰り広げる彼女としては、ライバルに例えられると、すっとすっと理解出来るみたいだ。


「わたしがどうかしたかしらぁ?」


「ん……? ああ、そうそう。咲姫はギターだったよね?」


「アナタがギターなの? じゃあわたしが基礎から教えてあげるわ」


「あ、ありがとうございますぅ……」


 咲姫の疑いの目から逃げるように、話を逸らす。うんうん、咲姫ちゃんが僕をしらぁ~っと見つめて……ああっ! なんて可愛いんだろう! 僕のジェラシープリンセス! 絶対に君は僕の元から離さないからねっ!


「それで、ユズが……この子がキーボードで、僕がギタボになります」


「簡単なピアノの伴奏くらいなら……弾け……マス」


「譲羽ちゃんなんですねぇ~。私はかなでって言います~」


「奏ちゃん。同じクラスだから知ってるよ?」


「あっ! そうですよねぇ~っ! 失礼しましたぁ! じゃあ、キーボードはこちらっ!」


 そう言って、奏ちゃんはふわっとしたお下げを回転させ、譲羽を白いキーボードの前に連れて行った。


「これで全員かしら。じゃあ、それぞれの担当に任せて、とりあえず教える時間にするわ。いいわね? 百合葉ちゃん」


 まとめの言葉を琴子さんが言う。もう僕らのメンバーもそれぞれの担当楽器を教えてくれる子の元に。


「はい。琴子先輩。じゃあ唄佳ちゃん。ギターボーカルをよろしくねっ」


「は、はいっ! ぜ、全力で百合葉ちゃんにぶつかりますっ!」


「全力過ぎたら疲れちゃうかもだから、ほどほどにお願いね」


 なんてわちゃわちゃするうちに、僕らのレッスンは始まるのだった。

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