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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第100話「太陽が恥じらう美しさ」

 曇り空であっても、真夏の謳歌を悔いなく全力で歌いきるかのように、蝉たちの大合唱とジメジメが残る夏の終わり頃。



 そろそろ暑さが無くなっても良い具合なんだけど。夏に思い残しをした残暑が何度も戻ってきているみたい。



 僕と蘭子の家の間に位置するコンビニで待ち合わせしていた。コンビニ横にはゲームキャラクターの旗が。譲羽の時とは違うコラボレーションみたいだ。キャラの雰囲気が違う。



 待ち合わせ時間にはまだ早いのでゆっくり歩き、緑の和風扇子で扇いでいると、やがて黒と白のコントラストが眩しい美少女がお店の影に見えてくる。



 コンビニの中で待ってくれてれば良かったのに。黒い中折れのハットの下から伸びる、長く伸ばしたストレートの黒髪。風が吹く度にサラサラと腰周りで舞い上がる。



 相変わらずのアメリカン美女スタイル。黒いノースリーブスでサングラスをかけ、ダメージ加工のスキニーデニムもまた黒い。しかし、他の子たちほどでは無いにしろ、彼女も充分に肌が白くスタイルが良いから、道行く人がチラチラ見ている……。そりゃあそんなに目立つ格好だからね……。中性目指して野暮ったくなりがちな僕とは大違いだ。



 しかし、僕のかわゆい美少女が目立つのは、あまり好ましくないなぁと思い、駆け寄って声をかけようとしたとき……。



「太陽は私のあまりの美しさに恥じらい、隠れてしまったみたいだ。夜には月も陰ってしまうし……ふふっ、私はなんと罪深い女なのだろうな……」



 僕と視線を合わせることなく、そんな発言を。なんてクサくてキザな発言なんだ……。うっかりぽっかり、熱中症で倒れてしまうくらい萌えたよ……。いや燃えたね。燃え尽きたね。



 そんな彼女は独り酔いしれるように片目を手で伏せたから、周りの人の目が奇異の目に変わるのだった。ほら、目を背けだした……。



「ら、蘭子……?」



 しかし僕の声掛けには気づかない振りの蘭子ちゃん。自分に酔ってるんだろうなぁ。イケメンな自分を魅せつけたいのかもしれない。いや、脳みそが沸騰してるのかな? とりあえず、可愛いし面白いは面白いからこのまま行く末まで見届けよう。



「月のない夜は満天の星を眺めて幾星霜。織り姫と彦星のように引き合う事もなく。百合葉のことを考えすぎて夜しか寝れない日々が続いた……」



「普通に寝れてんじゃん。普通に会えるし」



 ツッコミどころが満載だった。なんだろう、ツッコんだら負けなのかなこの漫才は。



「しばらく会えず、愛別離苦の悲しみ……やあ百合葉。夢で会って以来だな」



 そこで、スチャッとサングラスを外した蘭子。外し方も映画みたいでカッコいいんだけど、現実で見るとやっぱりキザでギャグだ。



「旅行に行ったり学校で遊んだり、結構会ってたのにね。夢にも僕が出てきたんだ……」



「そうだとも。私は君に出会うために生まれてきたのだから……」



 そうして片目を隠していた手で、バサッと横髪を払いウィンク蘭子ちゃん。とても決まっているのがなんだか面白い。この子はナルシスト芸人とか向いてるんじゃないかな。薔薇をくわえたりしてさ。

きっとそうだ。



「なに寝ぼけたこと言ってるの。寝てるんじゃないの?」



「私は百合葉と会えるだけで夢のようだからな。寝ているのかもしれない。さっきから、私が舞台のスターになったかのように、視線を独り占めしてしまうし。ここは私のソロステージか?」



「それは事実だよっ!」



 寝ぼけてるじゃなくてほうけてるの間違いだった。僕への愛を惚気のろけてるとも言える。



「これは現実であっても道行く人の目を奪ってしまう……。ふふふっ、私はなんと罪深い女なのだろうな」



「そうだね、存在が罪のレベルだよ」



 そしてキザクールで萌えるくらい可愛いし。僕の心を何度盗めば気が済むのだか。



「私を一目見ただけで美人になれると、もっぱらの噂だしな」



「それはどんな理屈なの……」



「んっ? 女性ホルモンがムンムンに溢れ出るんじゃあ無いのか?」



「それは世の中の女の子たちもびっくりだね……。モテモテになるよ」



 そんな飛躍した生物学がどこで噂なのかも知りたいところ。まさか脳内住人? 精神の危ない子だ。



「『好き』という漢字があるだろう? 此れは『女』の『子』という漢字で成り立っている訳だ。要するに、みんな『女子』が大好きだと――男だけでなくな? これこそ、日本では古来よりレズビアン文化がはびこっていた証拠だな」



「だからどうしたの……」



「つまり、君がレズであっても何もはずかしくは無いという事さ。さあ堂々と、私と真夏の白昼夢に溶け合おうじゃないか」



 なんて言って蘭子は、白昼夢どころか白昼堂々と僕を抱きよせ、キスしようとしだした……っ! なんなんだこの子は!



「ちょっと……やめてってこんな所で!」



「なんだ? 周りをキョロキョロと……。他の人間が気になるのか? ふっ……マイスウィートハニーも中々にわがままだな。そもそも、君みたいな素敵な子には私くらいの女じゃないと釣り合わない。何故なら私の美貌は、太陽をも雲隠れさせ、月をも惑い彷徨さまよわせるほどだからな」



「その説明はさっきも聞いた気がするよっ!?」



 しかも説明がランクアップしてるし……。元々中二病クサい子だったけれども、絶好調みたいだ。これも中二病な譲羽との関係性が産んだ結果なら、ちょっと嬉しい気もする……。いや、中二病の別ジャンルじゃないかこれ……。



 白昼堂々羞恥心皆無なレズには困ったものだけどね!

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