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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第91話「山盛りのかき氷」

 苦味の強いアールグレイと、甘さが極まったアールグレイ。僕と仄香。それぞれがやっと飲み終えたところ。ドリンクバーで遊ぶ不届き者な僕たちに、新たなる刺客の影が……いや、店員さんが。



「お待たせしましたー。こちら、抹茶かき氷とマンゴーかき氷でーす」



「はいはーい。美味しそー!」



 ぞういって仄香が受け取り、店員さんが去っていく。しかし、彼女の手元には二つのかき氷が。



「僕のかき氷たべるつもりじゃないよね?」



「へへー。バレたかー」



「バレるよ……もうっ……」



 これも定番の流れだろうか。仄香の謎テンションにもだいぶ付いていけるようになったと思う。



 そうして僕の目の前に抹茶かき氷が。甘くて美味しそう……。でも、口の中は苦くて、お腹はタポタポだ。一気飲み、良くない。



「甘い物がくるなら、アールグレイ飲み干さなければ良かった……。味のバランス取れたのになぁ……」



「あたしなんて、甘い物に甘い物だよー? 倍ルグレイとか言ってたから忘れてたわぁ」



「完全に飲むタイミング間違えたよね……」



 そう後悔しつつ、僕らは届いたかき氷を見下ろす。そして示し合わせたように視線を交わす。



「大きくない?」



「うーん。そりゃあ、めっちゃ多い方が助かるよー? でもめっちゃでかいわこれー。こんな大きいの見たことなーい」



 目の前には通常の三倍近くはありそうな氷山。こんもりと盛られたかき氷とは別に、僕は抹茶ソースだの白玉小豆だのかけないといけないから、とても不安なバランスだ。



「二ついっぺんに頼まなくてよかったね」



「だよねー。欲張りして死んじゃうところだったわ……うぇっ、少しこぼしちゃった」



「まったく……ドジなんだから」



「いやいや! ソースかけてないところだからセーフ!」



「アウトだからね?」



 机の上には虚しくも、彩りが添えられる前に落ちてしまった氷のかけら。雪の結晶が溶けていくようで、ちょっと切ない。仕方がないから、僕が紙ティッシュですくいあげる。注文したのがかき氷一つで良かった……。



 そう。仄香は一つじゃ満足できないと、二個も頼もうとしていたのだった。しかし、目の前のボリューム感を見れば、二つ目なんて到底不可能なのがよくわかる……。お腹もそうだし、溶ける前に食べきるのが大変だ……。



 しかし、食べにくさはともかく、目の前には立派なかき氷。僕らは慎重にソースをかけて、食べ始めるしかなかった。ゆっくりとソースをかけて、溶けていく雪の山。出来た氷の隙間に小豆を入れて、そして、こぼれぬよう慎重にスプーンを差し込む。



「うましっ! マンゴーかき氷めちゃ美味うましだよ!」



「こっちも美味しいよ。苦くなくてほんのり甘い。いい感じのやつだ」



「ほほうほう。抹茶かき氷、なん美味うましなのかっ?」



「うーん。六美味ろくうましかな」



「出ました六美味し! 高得点!」



「高得点なんだ……」



 彼女の基準が分からない。そもそもうましって何? うましって。馬の笑い方? うっしっしっ? それは牛か。



 そんなところで、彼女はまたかき氷を机の上にこぼす。今度はマンゴー片だ。



「うわーっ! またこぼしちゃったー! しかもレアリティー高いところだー! 美味しなところ落としたー!」



「あははははっ! またなのっ!? ドジすぎるよ!」



 流石のドジッぷりにこらえきれず、僕は笑い出す。すると唇を尖らせて抗議の様子の仄香。



「違うんだってー! これが多すぎるのが良くない!」



 そう言って、仄香は机の上をトンと叩く。その瞬間に僕のかき氷の上から何かが転がり落ち……?



「んあっ! 僕の白玉が!」



「へーい! ゆーちゃんのドジー」



「仄香のせいだし! 仄香に言われたくない!」



 この子はま~た自分の事を棚に上げる……全く、お調子者なんだから。



「これはべんしょーとして、ゆーちゃんの抹茶小豆食べないとねー」



「弁償してもらいたいのはこっちだよ……」



 お調子者が過ぎる……。微笑ましいんだけどさ。落ちた白玉をかわいそうに思いながら包む。



「はいじゃあ弁償分。これだけ食べれればいいでしょ?」



 僕は言って、抹茶と小豆のバランスを考えてスプーンにすくい、そして仄香の口の前へ差し出す。



「ほうほう。分かっているではないかっ。しかし、白玉が足りんようじゃがなぁ」



「そんなレアアイテムを……またいいよ。はいっ」



 仄香が食べ終わって、またちょっと抹茶小豆を乗せて、白玉を食べさせる。思った以上にとろける顔を……いや、ニンマリ顔を。一応ご満悦みたいだ。



「これはなかなか……あっ! ゆーちゃんずるい!」



「これは僕のべんしょー分っ」



 そう仄香が味わっている好きに、大きいマンゴーとソースの掛かったかき氷を掬って食べるのだった。ああ、これはトロピカル……。夏らしくて良い味だ……。



「ずるいーずるいー! あたしがあーんして食べさせようと思ってたのにぃーっ!」



「うん。知ってた。だから、もう一杯食べさせてくれればいいんじゃない?」



「くそうっ! ゆーちゃんは策士ってやつかぁ……っ! あーんすれば、量が減る……でもあーんしないというのも……ぐぬぬ……」



「じゃあもう一杯食べよっ」



「んあーっ! ずるいずるいずるいーっ!!」



 なんて、パフェ一つで大騒ぎ出来る、楽しい仄香ちゃんなのであった。

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