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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第30話「あ~ん」

「はい、らんちゃん。あ~ん」



「私は自分のがあるから要らないぞ?」



「そんな事は言わずにぃ~。食べて欲しいのよぉ~。味見あじみぃ~」



「そうか……」



 困惑しつつもパクリと差し出された玉子焼きを食べる蘭子。まもなくもぐもぐと……。おおよそ味わったのか、飲み込んでから「悪くないが」と。無味乾燥な感想……。



「そ~おぉ~? 良かったぁ」



 ニッコリと微笑みかける咲姫。その姿はまるで甘々な彼女と無骨な彼氏のお弁当風景にしか見えず……。



 何故か咲姫が蘭子にベッタリなのである。



「なんであそこ二人イチャついてんの?」



「わ、わからない……」



「ラブラ……ブ?」



「一方的にだけどね……」



 仄香と譲羽の疑問に僕は返す。



 僕と咲姫はお弁当。他三人がランチメニューであった。なので弁当組とランチ組、2対3の席に別れると思ったのだけれど、腕を引いた咲姫が蘭子を横に誘導し、間もなくイチャイチャタイムが始まったのであった。



「さ、咲姫……。蘭子とそんなに仲良かったっけ?」



「うん? さっき仲良くしましょ~って言ったじゃない」



「確かにそうだけど……」



 全く分からない。



 午前には押し倒しからのキス目前までいけたというのに……。わりと好感触だったと思うのに……。乙女心というのは難しいものである。



 そもそも良いところで誤魔化したから、呆れられたのだろうか。アフターケアをする前にこんな有り様じゃあ大失敗じゃんか……っ! 僕の馬鹿っ!



 もはや、咲姫の恋愛対象が蘭子に替わった可能性が出てきた……。確かにあの子かっこいいもんなぁ、だって薔薇の君だもの。



 だけど、そんな風にあっさりと僕を捨てられては困る。僕も彼女にモーションをかけなければ。



「咲姫ぃ~。僕にも食べさせてよぉー」



 口を開けて甘え作戦に出てみる。



 そうすると、口元がスッと緩み僕を見やる彼女。



「えぇ~。どうしよっかなぁ~っ」



 左手を頬に添え、弁当と僕を交互に見る。



「いいじゃんかぁー」



 首を傾げながら上目遣い。すると、効果てきめんだったようで、途端ににやけ面になる彼女。う~ん、かわゆすっ。かわゆすだぞ~?



「しっかたないなぁ~」



「やったぁっ。そいじゃ、あーん」

 たまには、下手したてに出てみるものだ。僕はエサを求める鯉のように口をパクパクとさせ、彼女の玉子焼きをねだる。



 彼女の差し出す箸が僕の目の前までくる。あと数センチというところで、僕は目を閉じ玉子焼きの感触を心待ちにし……。

 心待ちにし……?



 来ない……?



「やっぱだーめっ」



「ええー」



 意地悪であった。



 その声に目を開ければ、パクリと自分で玉子焼きを食べる咲姫。ぐぬぬ……姫様にあ~んされたかった……。蘭子ちゃんばっか羨ましいぐぬぬ……。



「いじわる……」



「ふっふ~ん。また今度ねぇ~」



 悲しい……可愛いんだけど悲しかった。



 そんな横で、カツンとスプーンを置いてカツカレーを食べるのをやめた仄香。



「らんたんといちゃついてたかと思ったら、次はゆりはすかよー。さきさきさっきーどっちかにしろよぉー。」



 咲姫に苦言を呈す。



「う~ん? 百合ちゃんは遊んでただけよぉ~?」



「遊んでたのかい……」



 渋面でツッコむ。もしかして僕、もてあそばれている? 悔しいなぁ。でも、咲姫ちゃんは可愛いから許しちゃうっ!



 でも確かに、さっきの仕草は恋人にするような感覚だったかもしれない。となると、姫さまは僕ら二人を取り巻こうとしてるのだろうか? 羨ましいなぁ、立場をとっかえてよー。僕がハーレムを作りたいのにー。



 ともかく、僕に飽きたという疑惑は薄れたかもしれない。それに……。



「んっ……? なんだ百合葉。私を見つめて」



「いや、なんでもないよ」



「そうか」



 隣で熱い視線を送っている咲姫には全く気付かず、蘭子はまた箸を進める。



 当の蘭子は困惑こそすれ、咲姫に惚れているということはまだ無さそうだ……いや、そんなことは絶対阻止するしっ。絶対絶対阻止するしっ。



 そんな、眺める僕の姿を見てまたしても唇を尖らせる仄香。



「ゆっずりぃーん。なんかあの三人怪しいんだけどぉー」



 対し、ずずずっと蕎麦をすするゆずりん。麺をくわえたまま首を傾げる。全く聞いていなかったようだ。急いで飲み込もうとする。



「ごふっ……」



「ご、ごめんよぅゆずりん! ゆっくり食べてて良いからねっ?」



 涙目でむせている譲羽の背中を仄香がさする。イチャイチャでは無いにしろ、これはこれで仲良さげ。



 そうして一通り譲羽が落ち着きまた黙々と食べ出せば、「ふふふっ」としたり顔になる仄香。



「そっちがその気ならぁー。あたしも混ざってやるからなぁー」



 そう言って「あーん」とスプーンを僕に差し向ける。



「い、いやぁー、カツカレーは今はいいかな……」



「まじかよぉショックだわ……」



 僕はササッと食べ終わってしまったので満腹なんだ。ごめんね仄香ちゃん。



 そんな仄香の、「ふふふっ、あとでセクハラしてやっから覚悟せいや……」という恐ろしい宣告は聞き流す。そういえばこの子とてイチャイチャしたがりのセクハラ娘なのだ……。あとが怖いなぁ……。



「ヴァイオリンのソナタかぁ。ゆっくり食べるのに良いかもしれないね」



 無言になってしまったので、すっかり忘れていたBGMに話を逸らす。独り言のように言ったから、それぞれがうんうんと頷くだけで返事はない。その中でゆずりんは、何故かキランと目を向けサムズアップ。可愛い。仄香もグッと便乗。可愛い並びである。



 まあ、とにもかくにも。問題児ばかりではあるけれど、ようやく美少女四人が僕の元へと集ったのである。このメンバー全員が互いにいがみ合うことなく、僕に夢中になって貰わなければならない。さぁて、どうしようかなぁ……。

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