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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第85話「数学と譲羽と小説」

 まだまだ太陽が昇り切っていないのに、窓の外のアブラゼミがうるさくて。



 熱気と大合唱が嫌になるから窓なんて開けてられない。エアコン欲しいなと思いながら冷風機の風を直接浴びている、とある猛暑日の夏休みの朝。



 通話で、譲羽の小説の話を聴きながら数学の問題を説いていたところだった。会話に頭のリソースを割きつつ、指先で直感的に問題を解けるようにするというのは、解く速度アップに繋がっていい。



 得意というのは、わざわざ頭で考えずとも直感的に出来るかどうかなのだ。あれこれ考えないとこなせないとようでは、数学も英語もスポーツだとしても得意になったとは言えない。



 数学みたいに、英語でもこのスムーズさを出来るようにしたいけど、人との会話と言語問題だと、脳内で文章が喧嘩し合ったりするのだろうか。型の決まっているテンプレ会話や単語勉強だけなら対応出来そう。でも、美少女との会話はテンプレ相槌で返すワケにはいかないから、集中してるのは会話だ。



 そんな風に、愛しい子との常に効率の良い勉強方法を模索している。特待生としてお嬢様学校に置いてもらってる以上は、奨学金のために勉強をサボるワケにはいかないし、でも、美少女との時間も最大限に大事にしたい。勉強を楽チンに退治する事へと力を入れるのも楽しいのだ。



 ただ、こういうやり方だと、専門分野の一流にはなれないだろうなぁ。何せ、効率ばかりで情熱がない。



『朝から……アリガトウ。小説、良い感じに書けたカラ、気になって……。それで、どうダッタ?』



「そうだねぇ」



 勉強はともかく、譲羽との会話だ。仄香が居ない日とか、やたらと寝ぼすけな時は、こうやって朝から通話したくなるのだと言う。家に居ても彼女との時間を築けるし、何より求められるという事は嬉しいものだ。



『ユズの小説データ、昨日もらってすぐ見終わったけど、だんだん読みやすくなってきたねぇ。長文でもスラスラ頭に入るようになったし、キャラ同士の絡みが面白いし。読んでて全然飽きないよ』



『ありが……トウ。まだまだ書き出しの時期に、他の人に読んで感想をもらえる……こんなに嬉しいコトは無いワ……』



『僕はユズのためになるんだったら、なんでもしてあげたいからね。必要だったら遠慮なく言ってね』



『百合葉ちゃんはすぐそういう事言ウ……』



『本音だから仕方ないでしょー? 僕は応援するのが好きなんだ。だから、ユズは僕にもっと甘えれば良いよ』



『うへぅ……。全く……真面目なのか口先が上手いのか分からないワ……』



 電話の向こうでは呻くような吐息が。僕の言葉が嬉しかったのだろうか。僕とて無理してないし本音だけれど、こんなただの良い人感だけで好感度は稼げてるのか。それともやっぱり、顔と声が良いとかで済まされてるのだろうか。でも、そうやって好感度とか考えないで、自然と彼女の為になるように接せられるようになりたい。僕は彼女たちに囲まれたいのと共に、彼女たちの為にも生きたいのだ。



『それで……。A4用紙に印刷したコピー本でも、イベントに持って行きたいなぁって思っテルの……。でも、小説の主要なイベントを飛び飛びで書いてるから断片的で全体像が見えないシ……。もうちょっと粘らないと、作品として出せないノ』



『そっかぁ。無理しないでちょっとずつ進めれば良いと思うよ。筆が乗ってきたら間を埋めるようにすればいいし。ユズの作品が形になるのは楽しみだなぁ』



『そうやって、応援してくれるの……すごく、嬉シイ。アリガトネ』



『当たり前だよ。僕はユズの作品の第一のファンだからね』



 心からの本音だ。僕がそもそも小説を読むのが好きなのもあるけれど、ぎこちなさを我慢しながら応援だなんて、そんな器用なコト僕には出来ない。そういう負の感情はどこかでボロが出ると言うものだ。小説書き始めの素人っぽい粗が少しずつ溶けて、彼女の文章の持つ魅力が現れていく様子なんて、娘の成長みたいに嬉しい。というかうちのゆずりんは実質娘で妹。甘々に甘やかして育てていきたい。なんて思うのは、おこがましい事かもしれないけどね。



 これもまた、変な依存関係なのかなぁ。

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