第82話「アニメDVDBOX」
「他にも……色々あるケド、何か見てく?」
「いや、ユズのを先に探してからでいいかな。目的を先に終えないと落ち着かないし」
「そうネ」
僕の事よりも、彼女の趣味を知りたいから。譲羽の提案を断り、僕らは漫画コーナーからDVDコーナーに。漫画ほどではないしにろ、こちらも棚にDVDが並び、表紙がこちらに向けられ、内容をアピールしている。
「探しているのはどういうアニメなの? 有名?」
「かなり昔の、女児アニメ……で、それなりに有名だったミタイ……。噂によると、時代を先取りし過ぎた女児アニメだと言うノ……。でも配信もされてないから、見ておきたいなッテ」
「へぇ。見つかるといいね」
ユズも女児アニメ特有の分かりやすいラブコメとか好きだったのかな。でも、この歳になっても追う辺り、なかなかのガチ具合を感じ取れる。
「ゆずりんやっべぇよなー。だって、欲しいって思ったらすぐに調べてさー。それで急に買いに行こうってなったんだもーん。衝動性よなぁ、しょーどーせー」
「行動力ね? 仄香も人の事言えないと思うけど」
「えー? あたしそんなすぐに買ったりしないよー」
「そういう事じゃなくてね?」
駄目だ。伝わらなさそうだ。確かに衝動性は買い物の面ばかり目につきやすいけど、仄香の思ったらすぐ行動に出ちゃうのは、衝動性に近い近いところがある。とくにセクハラとかセクハラとか。
そうこうしているうちに、譲羽がまとめ売りコーナーで桃色の四角いパッケージを手に取る。
「あ、あった……コレ……」
「へぇ。古い絵柄だねぇ。さあて、お値段は……と」
いち、じゅう、ひゃく、せん、まん……五万っ! DVDBOXとは言えそんなにするものなのっ!? お年玉を三年は貯めないと買えないよこんなの!
「ゆ、ユズ……? こんな高いのをどうやって買うの……?」
「クレジットでも、電子決済でも、支払方法は充分にアルっ。見たいカラ……買う。可愛いカラ……買う。それがオタクの流儀……」
「そ、そうなんだ……」
お金はあること前提なのね……。そんな額、普通は使いたくないし、そもそもオタクとて、学生じゃあ出せない子が多い事実を知らないのかな。こういうところて、庶民とのギャップを感じさせられる。
と、譲羽は何やら藍色でゴスロリしている財布を取り出した。藤の花をモチーフにしているのか、銀装飾が主張しすぎない煌びやかさで、財布だけで万は越えそうだ。そしてそこに、藍色と藤色の小さな鞠のキーホルダーが。
「そのキーホルダーの鞠、綺麗だね。どこで買ったの?」
僕が問うと、めっちゃニンマリとしたり顔になって、ゆずりんは微笑む。ああ、可愛いなぁ。
「良いところに目を付けたネ、百合葉ちゃん……。これは、 ネットの向こうの人が手作りで作ったグッズなの……」
「手作りなの!? すごいねっ!」
「ソウ……。これはゲームのキャラをモチーフにして編み込まれた、ファングッズ……。アニオタだけどアニオタなグッズを全面に出したくナイ。でも、キャラグッズは付けたいという気持ちを叶えてくれた、普段使い出来るお洒落グッズなの……。それでも、公式だって普段使い出来るグッズはいっぱい出してるし、お金をどこまで使うか、押さえるので精一杯……」
「ああ、それでもセーブはしているんだね」
口振りからして、まだまだ余裕はありそうだけど。
そして、譲羽は財布の中を確認するために、チャックを開ける。そんな細かいところまで、どことなく女子感が現れていて、咲姫もオシャレさんだけど、お洒落で良いなぁって思った。
と、微笑ましく眺めていたら、
「あっ……現金でも持ってきてたんダッタ」
「こ、怖い額だなぁ」
女子高生がこんな大金持って出歩くなんて、怖すぎてたまったものじゃない……。やっぱり僕が着いてきて良かった……。美少女たちは、僕が守るのだ。




