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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第52話「クーラーボックスと百合」

 調理室を走り回り、疲れ切った僕たちは二杯目のかき氷をダラダラと食べていた。なんだかこの夏は走り回ってばかりだ。クーラーが効いているお陰で汗かくほどじゃないれけど、体が火照って息はまだ整いきっていない。



「どうだい? 思う存分、楽しめただろう」



 そんなところに、裏庭側から入ってきた渋谷先生。かき氷も食べずにいきなり居なくなったのは、やっぱり僕らが百合百合出来るようにとの配慮だったのだろうか。でも、ちょっと内容がオーバーし過ぎてバレてたらちょっと問題だ……。



「さあ、それはどうでしょうね?」



「監視カメラで見ていたぞ?」



「趣味が悪いのでやめてください」



「まあまあ。カメラは廊下などにしか無いから安心してくれよ」



「それならいいですけど……」



 クールな面もありつつ、意外とちゃっかりしているこの人だったら有り得るから困るものだ。



「君たちがはしゃぐ写真なら、きっと譲羽あたりが撮ってくれていると思うからね」



「えっ?」



「これも、部活動……ダカラ」



 先生の言葉に困惑しつつ譲羽を見ると、彼女はスマホを構えてピース。いつの間に……。自分も追い掛けていながら、僕らから見えないように隠し撮りとか、プロフェッショナルにもほどがあるでしょ……。ドジっ子ゆずりんの隠れた才能だ。



「それで、先生は何をしてきたんですか?」



 話を戻す。素敵なアイテムその1がかき氷機ならば、その2を用意していたのだろうかとも思うし。



「なぁに。ちょっとそこに準備をしていてね……」



 そう言って先生は裏庭を見る。この学校の裏庭は優れたもので、裏庭近くに車を乗り入れて荷物を下ろしたり出来る。その側には屋根付きの野外調理場。部活動などで使うらしいその場所は、この学校に居ながら、林間学校気分も味わえる、もちろん、林間学校という名の宿泊研修は別の場所で行う贅沢っぷり。



 そんな場所に止まっているのは七人は乗れそうな中型車だ。さっきは無かったから先生の……? んんん、なんだか読めてきたな……。



「学校すぐ下のスーパーはな? 意外と品ぞろえが良いんだ。この辺の丘一帯は所帯持ちが多い高級住宅街だからなのか、家庭用の物ならだいたいが揃う。さて、わたしは何をしに行ったと思う?」



「はいはーいっ! でっかいスイカを買いに行った!」



「スイカはこの前食べたでしょ……」



 元気良く手を挙げた仄香だけど、それは違うだろう。僕が呆れつつ言うと、蘭子と咲姫が顔を見合わせ考える様子。仲が良いのか悪いのか。



「スイカか。有り得る話ではあるがな。別に、悪くはない」



「室内でゆっくり食べたいものねぇ」



 そっか、よく考えればその発想も悪くないのか。僕は答えの当たりが付いてるからついツッコんでしまったけれど、そうやって頭ごなしに否定してしまう悪い癖だなぁ。



「スイカは違うさ。それも手軽で良いと思ったがなぁ。だけど、それよりももっと大掛かりな物でね……。まずはこれだっ」



 先生は後ろ手に隠し持っていたエコバッグを机の上に。そこから出てきたのは、玉ねぎにピーマンに椎茸にトウモロコシ……。



「調理実習の抜き打ちテスト……? 楓ちゃん……夏休み中はやめて欲シイ」



「まあまあ。そんな事をしても面白そうだとは思うが、違うぞ譲羽よぉ。もっと楽しめる物なのさ」



 そう言って先生は裏口側のドアから外に出る。食材を持ってくるのだろう。その間、放置された僕らは食べ物を手に話し合う。



「なんだか答えは見えてきたわよねぇ」



「そうだな。こんな内容ならな」



 察しの良い咲姫と蘭子はうんうん頷いて、一方で仄香と譲羽は首を傾げていたけれど、仄香が頭の上にビックリマークが浮かんだみたいに、ピンッと背筋を伸ばし閃めいた様子。なんだか立ち上がったオコジョに見えて可愛い。



「ま、まさか……! 野菜カレーを作るのかぁ!」



「あ……それなら楽しソウ!」



「それは面白そうだね。でも、スイートコーンじゃなくてトウモロコシじゃあ難しいと思うなぁ」



「そっかぁ。カレーが甘くなっちゃうもんねー」



「いやそれとは違う……甘くなるけどさ」



 シチューの方が合ってそうだ。もしくはスープカレー? ともかく、カレー作りも良いけどね。でも、前の調理実習で作ったから、せっかくならもっと別の案を挙げて欲し良かった。



 そこへ、渋谷先生が裏口の前に……窓へ頭をコツンコツン当てて僕らを見る……。開けて欲しいのだろうけど、良い歳の美人がそんな事をしないで欲しい……可愛くて悶え死ぬから。



 仕方なしに開けてみれば、クーラーボックスを抱えているのであった。ドヤ顔をして、僕らを喜ばせる気満々な様子。まったく、可愛い大人だ。



「先生……荷物があるなら手伝いましたよ……。それか扉を開けておけば良かったのに……」



「いやいや。君たちをビックリさせたくてね。登場まで隠しておきたかったんだ。さて、答え合わせの時間さ」



 と言って先生は、床に置いたクーラーボックスを開く。その中には、発泡スチロールとビニールがひしめく赤と桃色の、食の宝箱……。



「さあ、肉を焼こう! 生徒たちよ!」

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