表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
26/493

第26話「マブダチ」

「なんだ、また君たちか」



 ホントにね……。しつこ過ぎて何度目だよって思うわ……。



 しかし、この数日の付き合いとはいえ譲羽ゆずりはがコミュニケーション苦手なのは明白であって。昨日の椅子倒し騒動があったのに……だ。それでも、蘭子に歩み寄ろうと勇気を振り絞ったゆずりんを、精いっぱい後押ししなければならない。う~ん、ゆずりんの勇気に花丸満点っ! お姉ちゃん泣いちゃいそうだぞぉ~っ。



「蘭子ちゃん、保健のノート取ってるよね? 写させて欲しいんだけど」



 僕が言うと彼女は「ふむ」と考える。



「貸したいのはやまやまなのだが、あいにく私は、ノートを取らない主義なんだ」



「えっ?」



 彼女の言葉に一瞬の戸惑い。



「冗談だ」



「なんだよう、もうっ」



「さっきの仕返しだ」



「あ、ああ」



 そういえばイジり倒しちゃいましたもんね……。こんな些細な反撃なんて……かっわいーなぁ~。



「へいへい、そんで貸してくれんの?」



 そこに、やはり気を許したくないのか、笑みも浮かべず仄香ほのかが問う。



「構わない」



「そっ。じゃあ貸してー」



 乾いた態度で言う……ってか仲良くしたくないのに借りるなんて、ちょっと図々しいんじゃない?



 そんな仄香に対し、蘭子は毅然とした表情を向ける。



「しかし、貸すのはその二人にであって、君にではない」



「な、なんだとぅっ!」



「冗談だ」



「まじかよ……やり手かよ……」



 蘭子の手のひらの上でクルクルと踊らさせる仄香。でも案外仲良く出来そうじゃない……?



 そうして、カバンから取り出したノートを顔にかざし、不適の笑みを浮かべる彼女。



「フッ、君も私の美しい字に惚れるがいいさ……」



 驚きの唐突ナルシストである。しかしそれに対し仄香は耳に手を当て首を傾げる。



「えっ、何ぃ? なんだってー!?」



 わざとらしい聞き返し。だが、蘭子も気にしないようでふんと得意げに鼻を鳴らす。



「君も私の美しい字に惚れるがいい」



「もっかい!」



「私の美しい字に惚れろ」





「なんか命令になってるし……」



 呆れる僕。だが仄香はそれに反し……。



「あっはっはっ! 何それまじウケるんだけどーっ!」



 突然、大きく手を叩いて笑ったのだ。



「字に惚れろって? やべぇどんだけ綺麗な字なんだろうなー! 楽しみだなぁ~!」



 煽るように言いながら受け取ったノートを開く。さて、どんな反応を……?



「ホレたわ……」



「チョロすぎだよっ」



 一通り眺めてみるみる真顔になった彼女。そして無言のまま謎のうなずきをしてノートを僕に渡したと思えば、たちまちニカッと白い歯を見せ笑顔に。



「いやぁー、ゆずりんイジメる怖い人かと思ってたけど、アンタ面白いねー。気に入ったわ!」



「そうか? 面白いも何も、私は素で話しているだけなのだが」



 素なのかいっ。マジの変人じゃんか気に入ったわー。変人美少女気に入っちゃうわー。



「冷たい人かと思ってたからさー。今までごめんねー?」



「構わないさ。私はなんとも思っていなかったし」



「冷たぁっ! なんとも思えよぉ!」



「別にいいだろう」



 相変わらず凛とした態度の蘭子。しかし、そのやりとりには少なくとも、壁を感じられはしなかった。



 その様子を見てか、譲羽がパァッとにこやかになり、うずうずしだす。



「蘭子ちゃん……そのっ。アタシたちと、友だちに……なろっ?」



 突然ではあるが、心揺さぶられる純粋な気持ちを、不器用にドモりながら譲羽がぶつける。



「まあ好きにすればいい。私は私のしたいようにするだけなのだからな」



 その様子に動かされてか一応了承と思われる返事。彼女も不器用だよなぁ。



「うっしゃーッ! 今日からウチらはマブダチだぜッ!」



「んっ? 君とは友だちになるとは言ってないが」



「ガーンッ! ショックだブロックだ!」



「冗談だ」



「なんだよぉう! もうっ!」

 

 そして仄香と蘭子の早くも定着しつつあるやり取り。これは完全に打ち解けたと言って良いんじゃないかな?



「さて、譲羽に仄香に百合葉だったか。呼び捨てにさせてもらう」



 蘭子は僕らを一人ずつ確認しながら名前を呼ぶ。



「オーケー蘭子。よろしく」



 さり気なく僕も呼び捨て。交わす握手。不敵に笑う彼女だが嫌がってはいないな、大丈夫だ。



「よろしく……ネ、蘭子ちゃん……っ」



 譲羽も握手を求める。手の大きさが成人男性と小学生並みに差があるので、蘭子が柔らかく包み込む形となっているが。



 その横から、バシバシと蘭子の背を叩く仄香。



「うちもよろしきゅうだぜっ! らんたん!」



「ら、らんたん……?」



 戸惑いを隠せない彼女。しかし、その様子なんかこれっぽちも気にしないで、



「そうだよ! なんかかわいいじゃんっ? らんたん」



「ま、まあそうだな。私はいつも輝いているしな。闇夜を切り裂くほどに」



 仄香は謎のあだ名を無理やり押し通す。それに対し、いつもの流し目ナルシストポーズで片手を顔にかざす蘭子。



「まばゆい私が辺りを照らす……」



 フラッシュかよ……。視界が開けるどころか、もうまぶしすぎて目を奪われるレベル。やっぱ面白いわこの子……。



「あっはー! やっぱアンタ最高でしかないわっ!」



 仄香も同意見なのか、机を叩いて笑う……いつもいつも手が痛くならないのかな……。



「そうだとも。私は最高だ」



「いぇあっ。うちらは最高! 共に最高! 共に友だち! ゆえにマブダチ!」



「ダジャレラップかい……」



 やけにテンションが高いなぁ……。まあともかく仄香が気を許したようで良かった。



 ともあれ、この二人は蘭子と仲良くやっていけそうで一安心である。あと残るは……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ