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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第28話「スイカ割りと百合」

 日が少し傾いて人が少なくなったスペースに、仄香が持ってきたレジャーシートを、砂が掛かってしまわないように工夫をしながら敷いて。その中央に鎮座しているのは、丸々と立派なスイカ。叩けばボンボンと良い音が響いたから食べ頃だと思った。



 というのは視界が閉ざされる前の話。今や僕の目には絹のハンカチで目隠しがされていて、僕は後ろの蘭子に両肩を捕まれたまま、譲羽が持っていた聖剣ならぬ、良い感じの棒を握らされる。



 そんなところで、後ろから荒い息が僕の頭にかかる。



「外で目隠しした水着の百合葉……なんだかムラムラしてくるな? なあ、自由にしてもいいか?」



「駄目だよ変態!」



 かつての気高き薔薇の君よ、どうして君はそんなに変わってしまったのか。もしそれが僕のせいならば、やっぱり罪深い女なのかもしれない。



「ほいほーい。気持ちは分かるけど我慢してねー蘭たーん」



「ふっ。仕方がないな」



「仕方が無くないよ……。気持ちも分からなくていいよ……」



 仄香が制してくれただけ助かるけどさ。



「それじゃあゆーちゃんをグルグル回しまーす。みんな準備はいいかなー?」



「はぁ~いっ!」



「廻す……それは輪廻の如ク」



 咲姫と譲羽が返事する。それぞれ違うテンションだけれども、その声色から実にワクワクしている事が伺える……。んんん……? 僕の美少女たちはいつの間にそんなに加虐的になったのかな?



 まあ、みんなを束ねるリーダーとして、みんなを楽しませないといけないのなら仕方がないのかもしれない。甘んじて受け入れて、さっさとスイカを叩き割ってやろう。いくら回ったところで、方向をそんなに間違えるわけないのだ。なんなら、みんなのアシストもあるわけだし。



「じゃあ回そ回そ回そー! ゆーちゃんは準備いいねー!? いーち! にーぃ!」



「もう回してるでしょ……あっ、ちょっと気持ちわる……」



 言いつつ、喋ったら駄目だと思った。グルグルしてるのに、息を吐いて吸おうとしたら胃なのか肺なのかなんだか変な感じだ。黙っているしかない。



 今五回目が回ったはずで、そろそろ六……あれっ? 仄香の回してる声と自分の感覚が合わなくなってきて……やばいやばいやばい……。頭と胃がぐわんぐわんだ……。



「じゅう! じゃあみんな! それぞれの位置に別れて! 公平に! スイカへ誘導するんだぞぅ!」



「分かってるわよぉ~?」



「もちろんだとも。ああ、もちろんだ」



「武士に二言はナイ」



 なんて、素直すぎて怪しい美少女たち。まさか、スイカの位置に素直に案内しないつもり? ふっ、そういう訳にはいかない。さっさと終わらせてあげる……でも、方向感覚グチャグチャだ。吐きそうなくらいフラフラする。



 それよりも、ゆずりんね? 君は武士じゃないからそれ意味なくない? って無性にツッコみたいい。いやいや、中二病へマジメにツッコんだら駄目だ……。



「さあ方向案内レッツゴー! ゆーちゃんこっちだよー!」



「そんな案内はありなの?」



「百合葉、仄香を信じるな。四五度ほど右を向いてそのまま三メートルほど真っ直ぐ進むんだ」



「蘭ちゃんいっつも嘘ばっかりぃ! 信じちゃだめ~っ! 左斜めに十歩くらいよぉっ!」



「百合葉ちゃん……。そのまま真っ直ぐでイイ……。雌豹たちの言葉は欺瞞のフェイクに満ちあふれている」



「ゆ、ユズちゃ~ん? こんな自分の事ばかり考えている子たちと同じ扱いをしないで貰えるかしらぁ?」



「そうだぞ? 野性味溢れる雌豹は咲姫だけだ」



「誰がよぉ~蘭ちゃ~ん」



「ゆずりんも言うなぁーっ? でもこれは真剣勝負だから多めにみるかねーっ?」



 だなんて、僕の目の前、見えないところで早速悪口合戦だ。今回破譲羽も混ざっているから、喧嘩になる前に終わらせてしまいたい。



「は、早まるな百合葉っ。そっちは違う、素直に四十五度右だっ」



「違うわよぉ! 左斜め前ぇ!」



「ゆーちゃん真っ直ぐ進んでない! 右向け右ぃー!」



「仄香ちゃん、それは大嘘……。百合葉ちゃんは正しい。そのまま真っ直ぐ進めばイイ」



 なるほど、みんなのマスコットゆずりんが正しそうだ。僕は自分と譲羽を信じて真っ直ぐ進んでいく。



「くっ、運の良い娘めっ。かくなる上は……」



「ちょっと蘭ちゃん!? それは卑怯よぉ!」



「ってさっきーも動いてんじゃん! ズルするなー!」



「う、ウワァ……ッ。女の戦い……恐ロシイ……」



「ゆ、ユズ!? どうしたのっ!」



 なんだ、押し倒されたのだろうか? くっ、いくら美少女とて、美少女を傷つける事は許せない。早く決着を付けて、みんなにキツく注意しないとっ。



「ちょっと蘭ちゃん! どきなさいよぉ!」



「百合葉をこの胸に抱くのは私だ。仄香もドけろ」



「あっ、百合葉ちゃん……そのまま真っ直ぐ歩くだけでイイ!」



「よしっ、ユズを信じるよっ!」



「な、いつの間にっ」



「そっちはだめぇ~っ!」



「ぬぁーっ! みんなの脚が絡まってる!」



 なんて大惨事の中、僕はとにかく譲羽を信じて前へ前へ! そして、ムニュッと僕のお腹と胸に柔らかい感触が……?



「ハイ。みんな喧嘩したり嘘ついたり、イケナイ。アタシの勝チ」



「えっ? スイカは?」



 僕は目隠しを解いて胸元を見る。そこには、スク水……もとい、藍色の水着に包まれた譲羽の頭が。



「くっ、嘘なんて吐くのが間違いだったか……」



「無駄な対抗心だったわねぇ……」



「リョフの利だよ! リョフの利!」



「それを言うならギョフの利ね……」



 ともかく、スイカ割りなんかで喧嘩したみんなを譲羽が収めてくれたようだ。僕は僕のマスコット妖精ゆずりんの頭を撫でて、感謝を伝える。



「喧嘩を止めてくれてありがとね」



 しかし、僕の感謝とは裏腹に、譲羽は不器用な微笑みのしたり顔を。



「百合葉ちゃんのスイカは、アタシが頂イタ」

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