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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第25話「わかめと百合」

「つかれたー」



「でも……楽しカッタ……」



 遠泳……というほど大変な事まではしないで、仄香と譲羽は海の深いところでプカプカ漂って遊んできたのだった。譲羽なんかは溺れてしまわないか、ずっと冷や冷やして見ていたけれど、そんな事もなく一安心。



 僕らの元へ戻ってくる彼女たちの足元には、次々とワカメが絡みついていた。浅瀬はワカメが多い場所だったのだ。



 こんな物がたくさんあったら……投げて遊ぶ子がいるんだろうなぁ……。



 現に遠くの親子連れの兄弟は投げ合って遊んでるし……。と思っていれば案の定、仄香と譲羽がワカメを手に取って向かい合う。



「行くぞうっゆずりん! わかめ攻撃っ! わかめ攻撃っ!」



「ふっ、そんな低級技など効かない……わっ! 海草かいそう縛封ばくふう!」



 互いに細かく投げ合って、それが当たらないように交互に交わしている……。でも、流石に交わしきれなかった分は、細かく足に貼り付いていたり。奇妙なヒョウ柄みたいだ。



「何をぉうやるなオヌシ! ならば海草バリアー!」



 仄香は何を思ったのか、大きめのワカメとは別の、網上に絡まった海草を広げる。スッカスカで防げるようには見えないけど。



 そこで、ニヤリと譲羽が笑う。



「ふっ、油断したナァ……今しかナイッ! 母なる大海が生み出し海草達よ……! 煌めく蒼天を舞う翼の如く、この手から無限の力を解き放て! 奥義! 若布わかめ風縛刹ふうばくさつ!」



 譲羽が大きくため込んだワカメを仄香に投げ込む。スッカスカな海藻バリアーじゃあそれを防ぎきることなんか出来ず、仄香の髪に顔に体にと、ワカメが貼り付いていく。



「ぐ、ぐわぁー! やられたーっ!」



「何やってるんだか……」



 小二と中二の喧嘩を見ているみたいだった。女子高生にもなって、そんなワカメを投げ合って遊ぶだなんて事をするだろうか。二人とも大人のレディーには程遠いお子様だ。



 でも、そんな楽しそうな二人が居るから、僕らの楽しい雰囲気のバランスは保てていたり。



「わたし達もやるぅ~? わかめ風なんちゃら」



「いや、僕はいいかな……。見てるだけで楽しめるし」



「そうよねぇ。楽しそうなんだけど、やるのはどうもねぇ……」



「大人としてのプライドだろうか。ああいうはしゃぎ回る事は出来なくなってしまったな」



「そうかもしれないね……」



 と蘭子の言葉にふと思う。彼女も昔ははしゃぎ回っていたのだろうか? 昔から利発そうな雰囲気だから、気になるところ。



「蘭子、こっち向いて」



「んっ? なんだ百合葉」



「はいっ。蘭子が鬼ね……っ」



 僕は蘭子の胸にタッチして、脱兎の如く逃げ出す。こうでもすれば、負けず嫌いの蘭子なら乗っかってくるはず。



「ほほう……。この私にセクハラとは……。ならば、鬼になれば百合葉に触り放題か……」



 ほら、予想通り。かわいい子だ。



「それはどーかなー! タッチだけねっ! ほらっ、僕を捕まえてごらん!」



「私の脚力に敵うかな……くっ、意外と砂に足を取られるっ」



 そうして始まる僕と蘭子の鬼ごっこ。海水が染みて平らになった所を、ベッチャベッチャと走る。



「な、何始めてるのよぉ~っ!」



「咲姫もやらないのぉー? 鬼ごっこ!」



 そうして振り向いた瞬間に、僕の胸が後ろから鷲掴みにされる感触。



「油断したな百合葉。君が鬼だ」



「タッチだけって言ったでしょ変態」



「ふふふっ。さあ、私を捕まえてみろ百合葉」



 僕に対し指を上向きに折り曲げて、挑発する蘭子。しかし、僕は彼女の手には乗らず……。



「はいっ。咲姫が鬼ー」



「な……私に来ないのか」



「さぁ咲姫、どうするのぉー?」



 ショックを受ける蘭子だが、僕は咲姫の肩に手を置いてからとんぼ返り。我慢するようにわなわなと肩を震わせていた彼女だが……。



「う、うぅ~。蘭子ちゃんにはセクハラしてわたしには無し……なんの差別かしらぁ……っ。やるわよぉっ! やればいいんでしょ~!? 胸を揉んでめちゃくちゃにしてあげるわぁ~っ!」



「僕にはセクハラする癖に何言ってるのさ!」



 そう言って僕は逃げる逃げる。内心ニマニマしながら逃げる。そう、これは追いかけっこ百合。プライドも良いけれど、やっぱり堅苦しいモノを捨ててはしゃぐのも楽しいのだ。



「あっ なんか楽しそうな事始めてる! 混ぜろ混ぜろ混ぜろぉ~! わかめ攻撃!」



「我が若布の魔の手からは逃れさせナイッ! 海草剣!」



「あっ! ほのちゃんユズちゃん、邪魔するなら先に捕まえちゃうわよぉ!?」



「へぇーん! 来るなら来ぉい!」



「百合葉ちゃんを襲う魔の手を、振り払ウ!」



「仄香っ! ユズっ! これは鬼ごっこだよ!」



「まじかっ! 逃げねば!」



「たいへんダー! 咲姫ちゃん鬼が~!」



「待ちなさぁ~い!」



 そんな人目も憚らず、五人砂みんなで砂浜で走り回る、良い歳の女子高生であった。

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