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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第19話「リンゴ飴と百合」

「やっぱ屋台って言ったらリンゴ飴だよねー。美味しいんだろーなー」



 僕が咲姫と蘭子に叫んじゃったからなのか、譲羽と喋っていた仄香が振り向いて言う。……タイミングバッチリだなぁ。ある程度はハーレムを割り切って、空気を読んでくれているのかもしれない。



「仄香はリンゴ飴食べたことないの?」



「うんっ。お祭り来ても他の物食べ過ぎて、結局リンゴ飴を食べ損ねるんだよねー」



「ああ……分かるわそれ……」



 焼き物をついつい食べ過ぎちゃうんだよなぁ。焼きそばタコ焼きフランクフルト。ホルモン焼きやイカ焼きなんかまで食べちゃえば、お腹ははちきれそうでスイーツな気分じゃなくなるんだ。リンゴ飴は別腹にはならないみたい……。



「仄香ちゃんもリンゴ飴初挑戦……? ならば、アタシと共に、初リンゴ飴の契りを交わそうゾ」



「ゆずりんイイねッ! やろうぞやろうぞ!」



 なんて、おとこの約束みたいに、握っていた手を離し腕をガシッと組む。この子たちの妙な歴史モノのノリはなんなんだろう……。世界史の点数はボロボロなのに……。



 そうして着いた屋台前、仄香が列に並び注文する。



「リンゴ飴ふたっつ! 大きい方で!」



 五百円が二つだから、ちょうどの千円札を渡し、店番さんからリンゴ飴をもらう譲羽。受け取ったその手の先には、大きなリンゴが重たそうに二つ。譲羽が持ち、その間に仄香は財布を手提げポーチに入れるのを見て、ふと思う。



「大丈夫? おっきなリンゴの方で。食べるの大変だよ?」



「へーん! あたしを舐めてもらっちゃあ困るねっ! 普通のリンゴは丸かじりヨユーなんだからこれもヨユーよっ!」



「多分、イケル!」



「そ、そう……? そんなに自信があるなら……」



 止めはしない……。だって他にまだ食べてない空腹だしね……。意外と食べきれるのかもしれない。



「あっ、あたしはゆーちゃんの大事な所とかペロペロ舐めたいけどねっ! うひょうっ!」



「エグいセクハラやめんかいっ!」



 僕のツッコミ手刀はかわされてしまった。まったくもう……この子は隙あらばセクハラだ。



 そうして、仄香と譲羽は一口食べる。もぐもぐと、赤くなった唇で首をひねる。



「あれー? 思ったほどじゃなかったかなー」



「まあまあ程度……カモ?」



 言って二人は歩きだしまた二口目。しかし、歩行者をかわしながらだから、見ていて危なっかしいったらありゃしない。



「こらこら。食べながら歩くんじゃありません。転んで喉に割り箸刺さったらどうするの」



「はーい、ママー」



「百合葉ちゃん……ママ? 似合ウ」



「もうママでいいよ……」



 潤滑油やガソリンよりはマシだしね……。



 そう僕が苦笑いしていると、咲姫ちゃんが僕の肩をちょちょんと突つく。かわいい。



「あっ。あそこが空いたわよぉ~? 座ったらどうかしらぁ」



「んっ……? ちょうどいいね。ありがとう咲姫」



 咲姫が指さした先のベンチに向かう。もちろん三人掛けなので、食べている仄香と譲羽が優先だ。そして、残る一人分の空間。



「咲姫も座ったら?」



「えっ? いいのぉ?」



「だって、咲姫は下駄じゃない。疲れたでしょ」



「そうねぇ、じゃあ甘えさせて貰おうかしらぁ。ありがとぉ~百合ちゃん」



「いいよ、このくらい」



 だって絶対疲れるじゃん下駄とか。絶対に履きたくない……。僕なんかオシャレの欠片もないから、ライムグリーンと白が映えるランニングシューズだ。だから、そんか僕に見せたくてオシャレをしてきてくれた彼女を、少しでもいたわってあげたい。



 でも、お姫様を演じる咲姫だけど、こういう時は遠慮するんだなぁ。やっぱり根は真面目なのかもしれない。



 そこで、コホンと咳払いする蘭子。



「おい百合葉。私にも気遣ってくれ」



「ん……? 君はどの辺が疲れたのかな……」



「うむ……特に心臓のあたりだろうか。だから、胸をマッサージしてくれ。そうしたら、十倍で返してあげよう」



「不平等な取り引き過ぎない!? それはアンタがセクハラしたいだけでしょっ!」



「私の筋肉混じりの胸よりも、百合葉のもっちりした胸の方が揉みがいがありそうだからな」



「じゃあむしろ比率が逆だよっ!」



 なんて、ていの良いセクハラなんだ……。そんなの許されたら、世のオヤジ達が真似しかねないじゃないか。



 そんなオヤジがいようモノなら、僕はオヤジ狩りで報復してやる。女を性的消費する恨みは恐ろしいぞ……。



 もちろん、女同士であれば何も口出しはしない。だから、セクハラしたいオヤジ達はみんなタイにでも行って、性転換と全身整形をしてくればいい。



 そんな世界破滅の妄想をしている間に、仄香たちはリンゴ飴をずいぶん食べ進めていた。でも、半分くらいのところで、仄香はふぅとため息をつく。



「ゆずりん……やばない? これ……」



「ヤバい……砂漠のオアシスが枯れかかっているミタイ……」



「それはどういうたとえなの?」



 でも、気持ちは分かる。綺麗なリンゴ飴。それを食べれるだなんて幸せだなーと思ってひとかじりした時、後悔するんだ。ハズレを引いてしまえばモサモサ地獄。たとえ美味しくても、祭りの真っ最中にリンゴ丸かじりだなんて飽きてくるだろう。



 だから僕は聞いたんだけどなぁ。経験者が止めに掛ける言葉も虚しく、綺麗で美味しそうだからという理由で大きい方を選んでしまう、あるあるなのかもしれない……。

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