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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第2部一章「百合葉と美少女たちの夏」
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第15話「マリモと百合」

「さあて、お土産買わないとね」



 僕らは阿寒湖から出発する前にお土産コーナーに買い物に来ていた。



「おっみやっげおっみやっげーマリモのもっみあっげー」



「マリモの揉み上げ?」



 相変わらず変な歌と踊りをする仄香ちゃんであった。



「マリモ可愛いわよねぇ……丸くてふわふわしてて……」



「湖の妖精と言っても過言じゃナイ。絶対に魔力を秘めてイル……」



 と、咲姫と譲羽の二人が並ぶ瓶に入ったマリモを眺める。そこに蘭子がコホンと咳払い。



「本物のマリモは国の特別天然記念物で絶滅危惧種だぞ? そんな大切なものが売っている訳がない。そこにあるのは植物でも生物でもない、アクリル繊維を丸めた物だろうな」



 いつもの蘭子の雑学であった。しかし、言い方がキツかったからなのか、咲姫が泣きそうに顔を歪める。



「なんで蘭ちゃんそういう事言っちゃうのぉ~っ!」



「自然の生み出したマナの結晶だと思ったら……人間によるマガイモノだった……悲シイ……」



「す、すまん……? でも事実なんだが……」



「それでもよぉ~!」



「風情がナイ……雅を解してイナイ」



「そうか……すまなかった……」



 咲姫ちゃんと譲羽ちゃんを激おこにさせてしまう、論理派の蘭子ちゃんだった。確かに、水を差すような言い方で良くなかったけど、譲羽の風情や雅と言うにはちょっと違うような……まあ言いたいだけなのだろう。



「真実は時に人を傷付ける……気を付けないとね」



「そうだな……譲羽もだし、相手が咲姫とて、友達だからな」



 おおっと。咲姫をちゃんと友達扱いしてくれているんだね。彼女の本心はすでに聞いてはいるけれど、こうやって再度聞けると、僕の百合ハーレムもまとまりつつあるなぁと嬉しくなる。



 そこで、大きくため息をつく咲姫ちゃん。



「じゃあ昔育ててたマリモも、きっと偽物だったのね……。水替えも丁寧にやってたのにぃ……」



 あぁ~偽物だと知らずに世話する咲姫ちゃん可愛いなぁ~!!



 だけど、僕は隠し玉を持っているのだ。ショックを受けた咲姫に助け船を出せる。



「全部が全部化学繊維とは限らないよ。偽物ではあるけど、本物の藻を丸めている事だってあるんだから」



「そうなの……? じゃあ、わたしが育てたマリルンちゃんは生を全う出来たの?」



 マリモのマリルンちゃんなの? 可愛いよ? 名付ける咲姫ちゃんが。



「そりゃあ、こんな可愛い子が丁寧に育ててくれたんだからね。きっと大丈夫さ」



「んもぉ~う。百合ちゃん好き~」



 なんて、いつものように抱きついてくれる。僕はイチャイチャカップルみたいに、咲姫の頭を撫でる。



 実にちょろい姫様である。でも、仄香や譲羽が子供っぽいから相対的に咲姫が大人びて見えるけれど、彼女だって、まだ中学から上がったばかりの少女なのだ。そういう生物に対する愛情は、子供の頃の感覚のまま残っているのかもしれない。



「へぇーい! そこさぁ! イチャついてないでさっさと選びなよー! マリモなんか食べられないから、お菓子のが絶対良いってー! キーホルダーは邪魔になるだけだってー。ほらっ! マリモようかん!」



「ほのちゃんったら……。風情も何も無いわねぇ……」



「花より団子だな」



「雅さの欠片も……ナイ」



 ボロクソに言われちゃう仄香ちゃんだった。でも、ボケ役を自覚している彼女なら、ゆしろツッコミとして受け入れているのだろう。



「まあまあ。羊羹も美味しいからね。お土産としては食べ物の方が嬉しい人も多いだろうし」



 だなんて、僕らは家のお土産にお菓子の箱を手に取って眺め出す。もらって嬉しいのは、キーホルダーよりも形に残らないお菓子のはず。そう。結局のところ、世の中のほとんどは、花より団子なのだ。



 しかし、これ以上キーホルダーは要らないと言いつつ、みんなでマリモ帽子を被った猫のキッティーちゃんストラップを買ってしまうのは、ありがちなお決まりだと思った。

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