第40話「百合ハーレムの作り方」
蘭子の気持ちを聞いて、咲姫の気持ちを聞いて。色々と考えて。
またしても、重苦しい気持ちのまま、月曜日を迎えてしまった。
でも、今週は違う。いや、今日は違う。
今日こそは決着を付けないと。
放課後になるまで、空気を壊さないようになのだろう、僕らはいつも通り接していた。蘭子と咲姫はいつも通りを演じているようだったけれど、冷戦になるようなこともなく。放課後の部室にまで、たどり着いた。
「ちょっと、屋上に行かない? みんなに聞いて欲しいことがあるんだ」
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五月晴れの爽やかな空の下。眼前には、春の花模様をかすかに残した、晩春の街並み。
僕はそれを眺めてから意を決して、そして、後ろにいる美少女たちへと振り返る。
「今まで、みんなに曖昧な態度を取り続けて……ごめん。でも、決心したから……」
黙ったまま、コクリと頷く彼女ら。言わずともわかるのだろう。僕が、なんのためにみんなを呼んだのか。これから、何が決められるのか。
いつまでも先延ばしには出来ない。でも、修羅場だらけでも、いつまでも先延ばしにする訳にはいかない。
意を決して、僕は深く息を吸う。
そして、言うんだ。
「僕が好きなのは――――」
「待ったぁあああああ!!」
そこで、僕の言葉が区切られた。大きな口を開けて僕の告白を邪魔した犯人は仄香だった。突然事に緊張の糸が変に切れて、膝からくずおれてしまいそうだ。
「あたしは、ゆーちゃんが好きです!!」
「アタシ……も、百合葉ちゃんが……好き……。すごく……」
「な……なんて……」
仄香と譲羽の先制であった。分かってはいたけれど、流石にドキリとしてしまう。
「あ、好きっても恋愛的な好きだかんね!? 友情なんか軽く超えてるかんねっ! 愛してるだからねっ!」
「そう、それ……愛してるレベル……」
「二人で話し合ったの! ゆーちゃん取られたくないから、二人じめしよって!」
「仄香ちゃんと……三角関係……」
「でも付き合っちゃえば仲良し三角よっ!」
なんて、暴走して話し出すものだから、僕らはぽっかり口を開けて唖然としてしまった。
「そ、そっかぁー。嬉しいなぁー」
「違うでしょ!? 返事でしょ!?」
「プリーズ、ラブミー」
「う、うーん……」
ペースが乱されて、何がなんだか。残る二人を見れば、怖い顔。
「へぇ~。そうきちゃうのぉ」
「先を越されてしまったな」
「茶番……ね」
「茶番……か」
「咲姫も蘭子も落ち着いて! 僕の答えはまだだから!」
しかし、僕の制止は無抵抗のように打ち破られる。
「わたしの方が、ずぅ~っと、百合ちゃんが大好きなのよ? 愛してる。だから、わたしを見捨てたら……どうなるかしらねぇ……」
「さ、咲姫……? それは脅しなの……?」
「咲姫がどんな卑怯な手を使おうとも、私は負けるわけにはいかない。百合葉、私は恋愛対象として君を愛してる」
「ななな……」
蘭子が言い終え、やがてみんなの視線が僕に集まる。選べというのか言っちゃうのか……!
そうやって皆を宥めて一呼吸。静かになって、もう一度決心する。もう邪魔は入らないはず。みんなを見渡して、今こそ、そうだ、言わないと!
「ぼ、僕が好きなのは……」
言えっ! 言うんだ……!
「みんなです!」
そのとき一瞬、沈黙の風が吹き込んだ。
「……うぇ~」
「ウウ……ン?」
「ふぅ~ん」
「……はぁ」
「みんなの反応が冷たいっ!」
「だって……ねぇ」
「逃げ……タ」
「案の定というか、ヘタレよねぇって」
「なんとなく察してはいても、ここまでとはな……ヘタレズめ」
「蘭子に言われたくないよっ!」
せっかく告白したのに、感動も何もあったもんじゃなかった。
「だからみんな僕と付き合おう! みんなで楽しくハッピー百合ハーレム! これからよろしくねっ!」
「お、んおおぉう……? んん~、みんなで……かー」
「楽しければ……悪く……ナイカモ? ンー」
「もう……仕方がないわねぇ」
「そうだな……いきなり独り占めは難しいもんな」
だなんて。
僕の百合ハーレムは、グダグダなまま、とりあえずの完成を迎えたのでした。
一応、最終回です。第一部の。
次からは第二部、ストーリーはあんまりない日常回ばかりの、一番書きたいパートになります。(第一部はハーレム完成までのストーリーとヤンデレ書きたかっただけ)
今のところ、話を終わらせる気はなく、既存の話を投稿し終わってもしばらく書きたいようにダラダラ続けたいと思ってます。
まだまだ技術も未熟なのがあって、結構読むのが大変な第一部でしたが、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。




