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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部三章「百合葉の美少女つなぎ」
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第24話「咲姫とマニキュア」

 譲羽のチョコレートを食べた放課後。仄香と譲羽が蘭子に勉強を教わっている横で、僕の指は咲姫にもてあそばれていた……。



 まあ、ただのマニキュアなんだけど。



「百合ちゃんにはライムグリィ~ンっ。似合うでしょ?」



「春らしくて綺麗な色だねぇ~。でもなんでそんなに色を持ってるの?」



「えへへぇ~。昨日たくさん買ったのを入れたままにしちゃってぇ~」



 なるほど。素晴らしいうっかりだ。整理整頓が得意そうな咲姫ちゃんでも、鞄の中に入れっぱなしだなんて、庶民的なところもあるもんなんだなぁと可愛く見える。



 ……いや、可愛いだけで一応は一般庶民だったわ。お姫様じゃないわ。何を錯覚しているんだろう。



「さっきー何始めるのー? マニキュア~?」



「うんっ。百合ちゃんの爪は元が形が綺麗だから、ずっともったいないなぁ~って思ってたからぁ。今日塗っちゃおうって思ってねぇ~」



「はぇ~」



 アホの子らしく、口をぽっかり開けて眺める仄香ちゃん。こらっ、やめなさい可愛いから……じゃなくて。勉強に集中しなさい。



「良い機会だから試しに塗ってもらおうかなって。僕もオシャレに興味がない訳じゃないからね、めんどくさいだけで。……でもいきなり言われてビックリしたよ」



「だって、ユズちゃんがなんだか本気を出したみたいだし……」



「んっ……?」



「……なんでもないわよぉ~」



 まずいまずい……。この行動は他の子への牽制の意味があったりするのだろうか……。とりあえず、今は冷戦が広げられ無いように会話を戻さないと……。



「あっ、下地が乾いてきたかなぁー。手順は覚えたし、後は自分でも出来るよ?」



「だめっ! わたしがやりたいだけだから! 最後までやらせてっ」



「は、はい……」



 うんうん、案の定だ。これで、咲姫はマニキュアに集中するはず。



「最後までヤらせてとか……やらしいなぁーさっきーは~!」



「なんでそうやってセクハラに持ってくのさ!」



「そうよ! わたしはタチなんだから!」



「えっ……?」



「な、なんでもないわよぉ~っ」



 少し空気が固まったのを誤魔化すように、咲姫は顔を赤くして手をぶんぶん。



「さっきー! マニキュア持って手を振んないで~! はねちゃう!」



「ご、ごめぇ~ん!」



「咲姫、ムラが出来ちゃうよー。次塗って、つぎー」



「は、はぁ~い」



 ちょっと怪しい単語も聞こえたけれど……。珍しくドジ姫様だったので、僕の方からぐいぐいと進めてしまう。でも、今の会話……仄香と譲羽はひと皮向けたからともかく、蘭子の方は本心が読めない……。もしや闘志を燃やしているのでは?



 と思って見れば、真面目な顔。でも、唇の結び方がややきつい。やっぱり気にしているのかな……。



 そんな風に、せっかくの百合百合タイムも味わえず、周囲への影響にドキドキしている間にも、概ね出来上がっていた。



 咲姫は除光液を吸わせた綿棒で、はみ出した部分をちょちょちょと擦って整えていく。



「さっきー器用だねー。あたしもやってみたいけど、ダルいから絶対やらないわー」



「そうよねぇ~。料理とかする日には大変だしぃ、こんなの、好きじゃないとやらないわよぉ。つけ爪もあるし、シールみたいなのに除光液使わないと落ちないタイプなんかもあるみたいだしぃ。楽したいならそっちで良いかもぉ~」



「そもそもそんなキレイに塗れる自信ないわー。めっちゃ器用だよねー」



「まあねぇ~。女は器用に生きないとぉっ」



 そう言って、両の拳でガッツポーズ。うん、姫様かわいいよ姫様。



 しかし、仄香は指先をくるくる回して何か考え事を。なんだろう、かわいいなぁ。



「あれだ! バトルシップとか向いてそう!」



「ど、どこが戦艦向きなのかしらぁ……?」



「多分ボトルシップだね……」



「とつぜん趣味が男臭くなったな……」



「渋みを感ジル……」



 真面目に勉強していた蘭子と譲羽にまでもツッコまれる始末だった。単語の雰囲気しか覚えていないんだろうなぁ仄香は。



「咲姫ちゃん……後で……。アタシも……塗ってホシイ」



「いいわよぉ~。ユズちゃんなら青色がお似合いかしらぁ~」



 いつの間にかペンを置いていた譲羽が、眠たげなのにキラキラした顔で咲姫に頼む。それを受け入れる彼女……。う~ん、美少女グループの中で優位性を保とうとしているのだろうか……。妙に邪推をしてしまう。



 咲姫が買い物の茶色い紙袋から取り出したのは、濃い色合いなのに優しげな藍色。譲羽がぽっかりと口を開けて感動する。



「暁前の深い碧……。アタシにピッタリ……っ」



「じゃあ、百合ちゃんの後にねぇ~」



「ウン……っ」



 そう言って譲羽はまた勉強に戻っていった。随分真面目になったものだ。逆に、教える側の蘭子が僕らを見つめているままだった。



「蘭子の指もすごい綺麗だよね。中性的でかっこいいし。蘭子も咲姫に塗ってもらったら?」



 思い切って提案。蘭子はしまったと言わんばかりに唇を横に釣り上げる。



「……いいわよぉ~? 蘭ちゃんもやる?」



「いや、私は……いい。塗らなくて」



 乗り気の咲姫に断る蘭子。う~ん、残念。ここで、ちょっとでも二人の仲がプラスになればと思ったんだけれども。

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