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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部三章「百合葉の美少女つなぎ」
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《三章》第01話「譲羽と電話」

 晩ご飯を食べ終えたあとの入浴も済ませ、寝るまで何をしようかという夜のフリータイム。寝るにはまだまだ早いし、何かするにも軽く済ませたいところだ。



 だけど、今は何もする気が起きず、ただずっと考え込んでいた。



 放課後、蘭子のセクハラに泣いてしまった僕は、気恥ずかしさのあまり、他の子たちに事情の説明を省いてしまって。



 それ以降は、触れないで欲しい僕の気持ちを察してか追求はされなかった。しかし、泣き出し居なくなったと思えば蘭子と円満仲直り。僕らの仲が進展したのは目に見えているし、不信感が増しただろうなぁ……。



 このネタはどこで爆発するかわからないから、必要がなければ語りたくないと思っているけれど、僕と蘭子の関係性について、順位的な距離を感じてしまったかもしれない。少しでも蘭子と他の子との差と溝を埋めるべく、繋がりを深めなければ。



 とはいつも考えてるのに、結局美少女たちに振り回されっぱなしだ。向こうをレズにさせたいのに、いつの間にやらみんなグイグイ来るだなんて、棚からぼた餅レベルで幸運続きだった。もしやみんな最初っからそのケがあった……?



 まあ、それはいい。ともかくこれからは、みんなの仲を取り持つ作戦を……。



「まずはやっぱり……」



 耳元から鳴り響く電子音。長く待つ間もなく、その音は途切れる。



『我が闇魔族の夜の安らぎを妨げるのは何者か……』



 電話で呼び出すのは、蘭子と一番仲良くやれそうな譲羽だ。さっそく、謎の中二病テンションでお出迎え。



「もしもし、ユズ。寝てた?」



『ううん、まだまだ。小説書いてからダイジョウブ……』



 すぐに中二病テンションは終了。ずっと続けるほど彼女の中二ネタが練られてないのもご愛敬だ。



「そっか。進んでる?」



『うーん……。微妙だけど、ボチボチ……ってやつ』



「ぼちぼちかー。まあ、マイペースに書いてけばいいよね」



『そうね……なんとか進められテル』



「それなら良かった」



 なんて、やんわりと応援。彼女が書いてるのは百合小説だから、少し楽しみだったり。



『それより、百合葉ちゃんから電話なんて、嬉しい……。喜びのロンドを舞ってしまいそう……』



「そ、そう。そりゃあどうも」



 不意打ちだった。彼女は不器用なわりにダイレクトな好意を伝えてくるから、たまにドキリとさせられてしまう。



「ところで明日、あいてる? もし空いてるなら……」



『行ク……っ!』



 ずいぶん元気でフライングなお返事だ。



「まだ何も言ってないけど……」



『ごめん、先走っちゃった……。ちょっと出掛けたいなぁって思ってたカラ……』



「そうなの? 僕はユズと遊びたかっただけだから。どこか行きたいなら一緒に行こうよ」



『――ッ!?』



 強く大きく、息を吸う音。そんなに行きたい場所というのはどこだろうか。



『嬉しい! 行きたい! 百合葉ちゃん……と!』



「ふふっ、よっぽど行きたい場所なんだね」



 僕が言うと、彼女は小さくため息をつく。



『……ちょっと違う。アタシ、もう出る幕が無いのかと……思ってた……カラ』



「んっ? なんだって?」



『ややややや……なんでも、ナイッ。嬉しくて黒魔術が暴発しそうだった……ダケ。気にしないでホシイ』



「そっか」



 出る幕? 出来るだけ彼女には気を遣ってるつもりだけど、やはり他の子に比べて恋愛的な立位置が劣っていることを自覚しているのだろうか。この間の旅行も彼女の気持ちを曖昧に誤魔化してしまったし、ここはグイグイ攻めていかないとね。なおさら今回の作戦は実行すべきだろう。



「それじゃあ朝の十時に駅集合でいい?」



『ワカッタ……。絶対に、行ク!』



「そんなに張り切らなくても……」



やまいを押してでも……行ク!』



「それは休んで良いからね……?」



 僕と出掛けるだけだというのにすごい張り切ってて、可愛いものである。う~ん、ゆずりんマスコット!



『実は……ね』



 と、電話を切るために一言添えようと考えていれば彼女が口を開く。



「どうしたの?」



『学校でも……言ったケド、最近はすぐ調子が悪くなるの……。ここ数日は特に……ヒドくて……』



「本当に病を押しちゃうじゃん……。無理しなくて良いよ?」



『や……絶対に行きたい』


「……大丈夫なの?」



『普段の生活は送れてるし……。それよりも、病院の先生が言うにはストレスが原因らしいから、楽しいことを……シタイ』



「そうなんだ……。じゃあいっぱい楽しもうね」



『うん……っ!』



 彼女のいつもの不器用な笑顔が浮かぶほど、良い返事だった。ならば、僕も彼女の期待に答えられるようにしよう。だってその体調不良は僕が原因だろうから……。

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