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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第76話「個室はNG」

 今日はなんだか百合百合レズレズな一日を過ごしているなぁと思いながら、なんとか放課後に。部室の鍵を咲姫に預けておいて、僕がトイレに行けば、飽きもせずやはり付いて来るクソレズ。



「ねえ」



「何だ」



「やっぱりまた、付いて来るの?」



「当然だろう。百合葉たんが一人で『シーシー』出来るところを見届けなければ」



「ホントに個室は勘弁して欲しいんだけど」



「しかし、そうは言いつつも無理に断わらないだろう? 百合葉の本音ではもしや、見て欲しい――という、露出癖があるのかも知れないな?」



「……はぁー〜っ」



 大きく漏れるため息。もう、正直言ってうんざりだ。なのに、彼女は嫌がる僕の素振りなど気にする様子は無く。ニタァと、僕に嫌がらせするときだけに見せるイヤラシい笑みを浮かべるだけ。



「どうした? 百合葉。図星を言い当てられ、ぐうの音も出ないか?」



 どうしたもこうしたもないよ……。行動原理が僕に対する好意だとはいえ、こんだけ嫌がらせを受けているんだ。僕も言うべき事はハッキリと言わないといけない。



「今回も個室にまで付いて来られたら……。僕、蘭子のこと……」



「おっ……? 私の事を?」



 「ついにか? ついになのか?」なんてワクワク問いかけないで欲しい。本人は本気なんだろうけど、むしろ煽っているようにしか見えず。



 だから僕は……。



「嫌いになりそう……」



 はっきり言ってやったのだ。



「……恥ずかしさ余って好きになりそう――では無いのか?」



「なワケ……無いでしょ……」



「本当か? 百合葉。本気でそんな事を言っているのか?」



「さあ、どうでしょうね」



 少なくとも、今日の蘭子はやりすぎだ。少しは反省してもらいたい。



「ま……待ってくれ、百合葉。私は君が居ないと駄目なんだ。ゴミ人間になってしまう。ゴミ蘭子だ」



 突然、すがるように弱腰になる彼女。袖を掴む手はどうにも弱々しく、効果アリと見える。



「今までのセクハラは犯罪レベルのもあったよね。そんなに行き過ぎたレズジョークやるくらいならかえって僕が居ない方が、蘭子は真人間になるんじゃないの?」



「ぐっ、それはどっちも嫌だ……っ」



「『どっちも』嫌なんかい……」



 僕がそそのかしたとは言え、大したクソレズ魂である。なんでそんなことに情熱を燃やせられるのか。



「私がイカれたレズビアンじゃなかったら、個性が何も無くなるじゃないか」



「それは……そうかも知れないね。ただの冷たい人になるかもね」



 黙ってれば充分クールビューティーだと思うけどね。



「そうだとも。私は百合葉に対して、ド変態なセクハラをする事が生き甲斐がいなんだ。生きる意味を見出しているんだ。それを奪おうというのか」



「言ってるんだよ。ただのセクハラに人生を賭けないでよ」



 うーん……どこで間違ったんだろう。僕は冷たい美少女だった彼女をクソレズ美少女に進化させてしまったみたい。愛が重いのはウェルカムなんだけど。



「なあ、百合葉。どうしたら君に嫌われずに済むんだ。教えてくれ、百合葉。私は君を、失いたくはない……」



 かなりダメージが効いてきたのか。顔をゆがめ悲痛の表情を見せる彼女。よしっ。ならトドメの一発だ。



「じゃあ、僕がトイレから出てくるまで、入り口の横で正座して待っててよ」



「そ、その位、お安い御用さ。さあ、百合葉の『お花摘み』は誰にも邪魔させないから。安心して行って来てくれ」



「じゃっ、よろしくー」



 手を拭る僕に向けて、意気軒昂と拳を握る蘭子。その姿にはもう、いつもの冷静さなんて微塵も見当たらなくて。



「ふふっ」



 可愛いお馬鹿さんだ。



「ふぅ~」



 緑のお気に入りハンカチで手を拭きトイレから出てみれば、当然のように蘭子は僕が指示した通りのままでいた。大柄な背筋がピンとしていて、その正座姿には育ちの良さがにじみ出る。なんだかんだ、この子はクールビューティな黒髪美少女なのだ。セクハラ三昧の中であっても、ふとした瞬間に彼女の好きなところを見つけてしまう僕に、内心苦笑いしつつ眺めてしまう。



 しかし、そんなほっこりとする日常は打ち破らざるを得なくて。



「お待たせ、蘭子」



「百合葉ぁ〜。よくもまあ、この私をたぶらかしてくれたな? 通りすがる女子の奇異の目が刺さって、尋常じゃ無い位に恥ずかしかったぞ……」



 声を掛ければ、見上げる彼女は珍しく涙目で。堪えているのだろうか。切れ長の大きな瞳がぐっと細まり雫の光彩をいだいて輝いている。今まさに、プライドがズタズタなんだろうなぁ。そんな普段見せない表情なだけに、めちゃくちゃ萌える。萌えたついでに、僕を睨みつつ立ち上がろうとする彼女の頭を撫でて、そのままの姿勢を保たせる。ああ~この感じいいなぁー。



「恥ずかしいも何も、蘭子が承諾したんでしょ? でも、正直にずっとそうしてくれてるだなんて、蘭子は素直で可愛いね」



 言って僕は余計になでなで。



「あぐっ……。ふぅ……。また口車に乗せられるところだった」



「僕は撫でているだけなんだけど」



「先程の私はどうかしていた。百合葉の策略にまんまと嵌められてしまった……。次はこうはいかない。今日の事を『乙女の恨み☆復讐ノート』に書き込んで、いつか百合葉へ、それ相応のむくいを……」



「うわっ、陰湿女だー! 近寄らんどこっ」



 あからさまに引く僕。それと復讐ノートなんて書いちゃうの? 面白いよ?



「そうやってまた私をおちょくって……。フフフッ……。百合葉を辱める日が愉しみだ……」



「ついさっきセクハラして辱めてたのたは誰さ…………」



「私が百合葉にするのはいいんだ。百合葉が私にするのがいけないんだ。悪業だ」



「横暴だなー」



 やれやれと呆れる僕。そして、そのまま流れるように歩き始めれば、彼女も立ち上がり部室へと向かう。



「蘭子は、僕のトイレの度に毎回毎回付いて来るつもりなの?」



 今日ほど疲れさせられるのはたまったもんじゃないと、蘭子に疑問を投げる。



「当たり前ではないか。百合葉を守るのは私だ」



「それストーカーの心理だと思うんだけど」



「愛さえあれば問題無い」



「じゃあちょっと、先生に報告してくるね」



「待ってくれ、百合葉。ソレは勘弁してくれ」



 僕が方向転換し職員室を目指せば肩をぎゅっと掴まれるのであった。もしや、半分くらいは本気にした? この子もこの子で、からかいようがあって面白いなぁ。

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