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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第68話「椅子取りゲーム」

 結局。遅くに寝た僕らは思いっきり朝寝坊してしまって、遅れを取り戻すために必死で残りの一日中試験勉強をすることになったのが功を奏して、連休明けの試験は仄香も譲羽も上々の出来だったみたいだ。



 そうしてテストも全てが終わった放課後。



 副委員長として、クラスメイト全員から集めた連休課題を職員室に届け終わったあと。遅れて部室に入ってみれば、みんなには綺麗な椅子に座って欲しいからという理由で選んだ、年式も型も素材までもが違う、マイオンボロイスの姿が見られなかった。



 マイナスイオンだかロールスロイスだかややこしいけれど、つまりは僕のボロ椅子ちゃんが無いのだ。



「あれっ……? 僕の席は?」



 僕が問い掛けるなり、「あちゃーっ」と声を上げる仄香。他の皆も、苦笑いしつつ渋い顔。



「もしかして、イジメ?」



 それだったら嫌だなー。席そのものが無くなるイジメもあるらしいからなー。



 と、余裕をかましている内は華であろう。僕の可憐なる美少女達がそんな事をする訳もない。



「あっ、ああー。ゆーちゃんの椅子ねー。壊れちゃったんだよー。あれだけ古い木製だったし」



「なんかねぇ〜。仄ちゃんが走り回ってたら椅子の足を蹴っちゃってぇ。それでボッカ~ンって壊れちゃったのよぉ〜?」



「あっ……! 言わないでよ!」



 咲姫の報告を受け、焦る仄香と少しうろたえる僕。



「ホント!? 仄香大丈夫だった!? 怪我はっ!?」



「およっ……。怒られるかと思った」



「百合葉ちゃんは菩薩だから、その位じゃあ怒らナイ……。ナニしても、許サレル」



「菩薩じゃないけど……椅子の一つで怒るって、どれだけ心狭いのさ……。いや、何してもは駄目だけど」



 この前は洗いっこで怒らせたばかりだというのに、僕の何を知っているのか。悟りきった表情で付け足す譲羽に戸惑いつつも笑って誤魔化す。しかし、僕が菩薩とは……。まあ百合菩薩とか百合神さまとか呼ばれたい物だけどね。いや、なんでもは許せそうにないので、まだまだ百合百合修行が必要そうだ。百合百合道はまだまだ険しい……。



 ともかく、「怪我が無いなら良かった」と安堵しながら、怒ると思われるだなんて心外だ――ともムッとしていた。これっぽっちも怒ってなんかはいないけれど。



 まあでも仄香は何も考えずに口走る癖があるから、大目に見よう。そんなおバカ具合も、彼女の魅力だし。



「連休中に備品替えがあったらしいから、明日、余った分を先生が持って来てくれるそうだ」



 既に先生へと報告済みなのか、事態が収拾付いている事を教えてくれる蘭子。



「そっかぁ、それなら助かった」



 壊れた椅子の代わりは決まっている様だ。



「何とかなるみたいだね。でも、今日は何に座ろっかな」



 「ダンボールでも……」と探しているうちに、言葉尻が下がってゆく。釣られて、他の皆も辺りを見渡すが……。



「無イワ……」



「無いねぇ〜」



「無いですねー」



「なんなのアンタら三人……」



 譲羽、咲姫、仄香による、謎のコンビネーションを垣間見た瞬間である。このトリオは妙な可愛いさがあって困る。



「仕方ない。別の教室から取って来るよ」



「その心配は不要だ」



 僕に静止を要求した蘭子へ、皆の視点が集中する。腕を組んでいた彼女は自身の座る椅子を引き……。



「私の――"此処"――が空いているぞ?」



 見せ付けるように自身の両膝の上をペシペシッと叩く。クールな雰囲気のギャップと相まってすごい萌える。



「蘭子の膝の上に座れって事?」



「それ以外に何がある?」



「いやぁー。それはちょっと……」



 セクハラされる――に全財産賭けたい位の下心見え見え満点具合。ノッても良いんだけど、掛けはしない。



 僕が呆れつつ戸惑っていると、仄香が元気一杯に手を上げる。



「はいはーい! あたしの膝も貸出し中デース!」



「仄香。君では百合葉の重さで折れてしまうだろう」



 しかし、その元気さを全力でへし折る蘭子ちゃん。



「ガーン!」



「いや、僕の方が傷つくんですけれどッ!?」



 くっ。体重がみんなより重いのを気にしているのに……っ。僕だってまだまだ軽い部類なんだよ? ローレル指数的にだけれども。



「まあ、事実を言ったまでだ。体格を考えれば私しか適していないだろう」



「じゃあ、アタシは蘭子ちゃんの上の百合葉ちゃんの上に座る……。そうすれば椅子が一個余る……カンペキ」



「おっ……? 譲羽は天才か?」



「意味無くない!? アンタらアホでしょ!? ユズは大丈夫だよそのままで!」



「そう……」



 残念そうに譲羽がショボ暮れる。本気で良い案だと思っていたのだろうか? お馬鹿可愛い限りである。



「地べたも机に座るのも、お行儀が悪いわねぇ……」



「もう立ちっぱなしで良いかな」



「そうだっ……! 百合ちゃんは王子様だから、跪いた私の上に座ればいいんじゃない? 白馬の王子様みたいで素敵っ!」



「一番お行儀が悪いですよ姫様! 自分を見失っちゃあ駄目です!」



 咲姫ちゃん大迷走。彼女が何を求めているのか、時々解らなくなる。



「その手があったか。百合葉、座ってあげるから跪け」



「ドSが居る!?」



「嫌なら、私が跪くか? それも中々、ソソられるかも知れないな」



「SM両刀とか変態かッ!」



 言いながら、蘭子は絶対にドSだと思った。だって僕を困らせる事に全力なんですもの。



「はいはーい!」



「仄香、却下ね」



「うぼはぁっ! 言う前に拒否られたッ!?」



「はいはい。聞くだけ聞くから……何?」



 なんの期待もない目を向け催促すると、仄香は「ぐぬぬ」とうめく。



「あたし期待されなさ過ぎじゃね? 椅子取りゲームとかすんの、どうかと思ったんだけど」



「ほう」



「ナイスアイディアねぇ〜」



「面白、ソウ……」



「蘭子? こう言うのを天才って言うんだよ?」



「まあ何だっていいじゃないか。机をどかしてやってみるか」



 「うん」と皆が頷き、何を言うまでもなく部室の長机を折り畳み始めるのだった。



※ ※ ※



「これ……誰が音楽係……ヤルノ?」



「あ……忘れてた」



 一通り準備が出来たところで、譲羽が思いもよらぬ疑問を投げ掛けてきた。思わず驚いてしまう。五人でやることしか頭に無かった……っ。



「ああそれ。あたしも思ってたわー」



「譲羽。百合葉が気付くまで言わないで欲しかったぞ」



「すっかり抜けてたよ……」



「百合葉? どういうのが天才なんだって?」



「アハハハハッ! ゆーちゃん超バッカみたーい!」



「みんなも同罪でしょ!? ねぇっ!」



「わめいてうるさいぞ? 百合葉のバーカバーカ」



「うっわ、めっちゃムカつく……」



 仄香はともかく、無表情の蘭子にやたらと煽られ、顔を引きつらせる。ていうか『バーカバーカ』って何さ、小学生なの?



 しかし、「あはは」だの「ふふふ」だの笑われ、僕が「うぬぬ」と悔しく思っていると唐突に、咲姫がピシッと挙手しだす。



「はいはぁ〜い! 咲姫ちゃん賢いからぁ〜? さっき、椅子取りゲームアプリを携帯にインストールしていたのでぇ〜すっ!」



「咲姫ちゃんが本当の天才……だわ……」



「マジかよぉー、天才かよぉー。賢すぎてカシコちゃんかよぉー」



「百合葉? こういうのを『天才』と呼ぶのだぞ?」



「もう良いでしょ!?」



 はなっから『天才』要素は無いと思うのだけれどね。僕をけなしたい蘭子ちゃんにとってはそんなこと関係ないようだ。



 とりあえず誤魔化しの為に、咲姫を「可愛い賢い」と繰り返しながら撫でる。当然、自己陶酔まっしぐらな彼女は「えへへぇ〜」と気持ち良さそうにする。当然それが可愛いのである。僕のアイドル咲姫ちゃそちゃそりんだからねっ!



「ところで、自分の携帯の曲を使うんだよね? さっきーはどんな音楽聴くの? やっぱモッツァルトとかー?」



「うんっ! クラシックを聴くよぉ〜?」



「クラシックとかマジお姫様かー」



「お上品……」



「ほ、他には?」



「ジャズ位かなぁ〜。ガッツリじゃなくてたしむ程度なのよ?」



 流石はうちの姫様である。『ジャズを嗜む』――だなんて、上流階級を匂わす定型句をおっしゃられた。普通の人じゃあ使えない。



「ジャズだろうがクラシックだろが問題無いだろう」



「とりあえず、やってみるかー」

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