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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第67話「挟まれ洗いっこ」

 仄香が浴室のドアを開けてまず目に付くのは、僕の家となんら変わらない大きさの白いバスタブ。そして、床は滑り止め効果もある肌触りの良い岩面タイルで、壁も似た素材を使ったオシャレな空間だった。



 良いとこのお嬢さん向けだからか、長居したくなるような品のある暖かい造り。ここは寮であるはずなのに設備は並のホテルよりしっかりしていて、豪華な点などなくとも、一応お嬢様学校と言われるだけのことはあるなぁ……なんて実感するばかり。



 脱衣し終わった僕は、胸と股を手で隠しながら、すっぽんぽんな仄香の後に続いて浴室に入る……この子後ろ向きでめっちゃ見てくるんだけど……。



「んんんー? 女同士なんだから、そんなに恥ずかしがって隠さないでよー」



「そんなじっくり見てくるからでしょ……?」



「そうだぜー? そりゃあ穴があくほど見つめるぜー? っとぉ! 最初から穴は空いてるんだったーっ! 痛ぁッ!!!」



「おっさん臭い下ネタはやめなさいっ!」



 美少女だから許すけどさ……。いや、世間的には美少女でも許されなさそう。テンションの高さのお陰で輪ノリな会話の範疇で許せるかもしれないけど、端から見るとエグみが強いのだ。



 そもそも、旅館ではタオルで胸を隠してたじゃん……。どんな心の入れ替えなの? 羞恥心を旅行先に置いていってしまったの? そりゃあこっちの方が彼女らしいけれど。



 と思って、彼女を見ていれば……。



「やぁ~んっ。ジロジロ見ないでよ~、えっち~」



「ワケが分からない……」



 きっと今回は、共同などではなくプライベート空間だから比較的オープンなのかなと、とりあえず自分で納得してみる。



「百合葉ちゃん……もっと詰メテ。入れない」



「ああ、ごめん」



 と、後ろから譲羽に押され、僕もようやく浴室に入りきる。まだ春の夜の寒さが抜けていないというのに、室内はポカポカだ。床暖房? やっぱりお金持ちだっ。



 そして、譲羽も中へ収まればカチャリとドアの鍵を締める。



「ゆ、ユズ? なんで鍵をかけたの?」



「……? お風呂入るのに、鍵かけるの、トウゼン」



「誰も入ってこないと思うけど……」



 部屋も鍵が掛かっていたし、廊下のカメラや窓のブザーなど防犯はバッチリに見えた。もしや寮内に潜むレズが……? まさにこの二人じゃないか。



「うっへっへー。これでゆーちゃんは逃げられないねっ」



「逃ガサナイ」



「ちょ……ナニするつもりなの……?」



 この仄香に至っては、言い逃れようのない前科があるから怖いんだけれども……。流石に二人がかりでレズレイ……はないと思いたい。



 そうして、にっしっしっと怪しく笑う二人が手に取ったのは……。



「じゃじゃーんっ!」



「デーン」



「シャンプーハットと……ボディソープ?」



「せや! これでゆーちゃんを洗ってやるのじゃーっ!」



「そ、そうなんだ……」



 なんだ。嫌がる僕を無理やり……なんて展開は無かったんだ。二人に洗われるだけじゃないか。良かった良かった……あれっ? 良いのかな? 悪い予感しかしないぞ?



「旅行中には蘭たんに取られちまったかんなぁー。今回はそのリベンジぜよ!」



「シャンプーの逆襲……」



 そう言うと、僕を挟んだ二人が後ろでわざとらしいひそひそ話。



「そんじゃーどうする? どっちが洗う? じゃんけん?」



「ダメ……。それだと前回と一緒……」



「それじゃあ頭と体を二回ずつ洗うー?」



「洗い過ぎで髪も肌もカピカピになりそうなんだけどそれ……」



「なら上半身と下半身で……分ケル」



「下半身ってなに? 背中と違って脚は自分で洗えるよ?」



「ほほー! 美味しいところがそれぞれに分かれて丁度いいねっ!」



「何がオイシイのかなっ!?」



 ついつい後ろの二人にツッコんでしまう。なんだよ……ただのレズじゃんかよ……。こんなはずかしめがあるだなんて、実質強姦と変わりないんじゃないかな……。鍵も締められてるし。完全犯罪だっ!



 結果。ホカホカ湯気の立つバスタブに向かって左側を譲羽、右側を仄香と並び、頭から順に同時進行で洗うことに。どういうことなのこれ……。



「ほらゆーちゃん、ここに座ってー」



「う、うん……」



 いくら一軒家並みの広さとはいえ、三人が同時に洗えるような設計がなされているわけはない。小柄な二人だから、ようやく横に並べられるというような詰め詰めの距離で、僕らは順々に座る……なんで二人部屋なのにバスチェアが三つもあるんだというツッコミなんて入れる間もなく、僕は頭からシャワーを当てられる。



「仄香、ちょっと熱い」



「ごめんごめーん。こんなもんかぁー?」



「つめたつめた冷たぁっ! 馬鹿やめて!」



「サムイ……」



「へっへー。温泉じゃあこーゆー遊び出来ないもんねー」



 なるほど。今日の彼女は旅行で出来なかったことを消化していくみたいだ。お泊まりだなんて連続してしまったイベントだけれども、こういう違いが出るから、より楽しめたりするのかも。



 仄香が全員に分散してシャワーをかけるようにし、やっと少しはあったまってきた頃。僕は濡れた髪の毛にシャンプーハットを被せられ頭が洗われることに。



「右があたしのおすすめシャンプー。左がゆずりんのおすすめになりまーっす」



「半々とか嫌だなそれ……」



「洗ってもらうのに文句言わないのーっ」



「頼んでないけれど?」



「ひゅ……ひゅー。ひゅ~っ」



「口笛吹けてないし……」



 僕のツッコミだなんてどこ吹く風であった。彼女は遠慮することなくシャンプーボトルを手に取り、僕の頭へ……。ドロリと。



「ごっめーん、出しすぎたっ」



「ちょっ! やめてよね! ってかじかにかけないで!?」



「大丈夫だよー。塗ったくれば髪つるだよー」



「パッサパサになっちゃうからね!?」



 そんな男らしい洗い方じゃあ、すすぎ残しがいっぱい出そうだ。



「いやぁー、他人の頭洗うのにどうすればいいのかわかんなくてさー」



「いつも自分で洗うようにすれば良いんだよ……」



 なんの違いがあるというのだろう。この子はやっぱりアホの子だ。



 と思っていれば、仄香が途端に驚き息を吸う音を。



「ゆずりーんっ!? それ舐めらんないからねぇっ!?」



「……ハッ。いい匂いだからつい……」



 その声に驚き左を見れば、シャンプーが付いた僕の頭に口付けようとする譲羽。まさか、無意識で僕の髪ごと舐めようとしてたの? 二重の意味で危ないよ?



「とにかくっ! ちゃっちゃと洗っちゃおう! ゆずりんもっ! そっち半分よろしく!」



「心得タ」



 仄香がようやく真面目に始める宣言をしたので、譲羽も自分のお気に入りらしいシャンプーを手に取る。もちろんこちらは、手のひらにニュッと出し泡立たせてからだ。ちゃんと分かってるなぁ。



 左右に挟まれ洗いっこ。これはこれで楽しいものかもしれない。しかし……。



「かゆいところはございませんかー?」



「せん……カッ」



「う、うーん……」



 左側はやんわりと優しく地肌から汚れを落としていく、髪をいたわるような洗い方だ。比べて右側はやはり強引にゴシゴシと……。ストロベリーの甘い匂いとシトラスの爽やかな匂いが混ざって、これまた変な気分。



「仄香、もっと丁寧に」



「あーい」



 途端に弱まる仄香の手。そんなアンバランスさでは、力加減を変えない譲羽側からどんどん押される形に。



「丁寧ってのは弱々しくって事じゃないからね? それくすぐったいだけだよ」



「だってくすぐってるんだもん」



「真面目に洗ってね!?」



 言ってようやく力が釣り合う。仄香は譲羽の手元を見ながら真似しているのか、だんだんと指さばきが似てきているけれど、シャンプーの種類が違うことには変わりなく。なめらかな洗い心地とさっぱりした洗い心地が半々に混ざって、変な気分は抜けきらない。



「この半々に洗うの、やっぱり失敗じゃない?」



「失敗じゃないよー。だってうちら楽しいもんっ」



「僕は楽しくないなぁ……」



 やっぱり僕の気持ちなんて考えちゃいなかった。彼女らは自分がいかに楽しめるかしか考えていないのだ。いや、いいけどさ。



「んじゃあ、そろそろ前戯……じゃなくて悪戯はこのくらいにしとくかー」



「待って? 今聞き捨てならない単語が……」



 これはどんなプレイだと言うの……。



「ダイジョウブ。頭はこのくらいで終わり……」



「そっかぁ。それなら安心だ」



 "頭は"というのが気になったけれど、譲羽がそこまで意地悪をすることは無いだろう。



「はぁ~っ、疲れた……」



 髪を洗ってもらえてるのに、なんで逆に疲れ切っているんだろう。それは二人がただのイタズラっ子と見せかけてレズっ子だからだろう。レズの悪戯とか怖いなAVかよ。



 緊張しこわばっていた体をようやく緩め、僕は背筋をだらんと丸くする。



 さて。ようやく頭から泡を流せる……はずが、譲羽にシャンプーハットが取られてしまい……?



「ちょっと待って? 順番違うよね? 先に頭を流してくれないとっ」



「何も違わないんだなぁ。のう、譲羽さんや」



「これが正シイ……」



「何が正しいって……うわ、泡が目に入ってきた! 右目にも! 痛いから! 早く!」



 僕が痛みに目をつむると、パンと手を叩く音。



「よっしゃ今だーっ! 今のうちに体を洗うぞーッ!」



「承知……」



 なんて彼女らは言って、ぬるぬるのボディーソープらしきモノを手に、僕の体をまさぐり始めたのだ。



「待って待って待って! あははっ! くすぐったいから! それと直接だなんて恥ずかしいわっ! うひひっ!」



「体のスミズミまで洗っちゃうぞぉー!?」



「馬鹿! 乳首なんてそんなに洗わんでいいしっ! 脇とか汗かく場所を……あひゃひゃっ! やっぱやめて~っ!!」



 僕はくすぐったさに笑いつつも、見えないまま彼女らを制止しようとする。



「きゃーっ! おっぱい掴まないでよゆーちゃんのえっちー」



「どっちがだ! ってかアンタは掴むほど無いわっ! だからこれは……なんだ!?」



「うぎゃー! あたしのおっぱいがゆーちゃんに取られたーっ!」



「おっぱいが取れた!? 元々無いでしょ!?」



「違ウ……。それ、シリコンブラ……」



「……!? なんでそんなもんがあるのさっ!?」



「お風呂に入りながら遊ぼうと思ってー!」



「んなもんで遊ぶなっ!」



「百合葉ちゃん痛イ。叩くなら逆」



「こっちか!」



「痛っ……くないけどシリコンが破けるぅーっ!」



「もういいっ! これならどうだ!」



 仄香の声のした方に飛びかかる僕。もう恥ずかしさも何もあったもんじゃない。二の腕で彼女の首を絞めにかかる。



「ぎゃーっ! やめてーっ! ゆーちゃんのDカップ生乳、なまちちがーっ! あ、やっぱやめないでーっ!」





「悪戯にも限度があるよねぇ~? 早く洗い流してよねぇ~っ!?」



「分かった、分かったようっ!」



 なんて、僕を元の椅子に座らせると、まだ洗ってなかった脚に手を掛けだす。もうりたのか、黙る二人はくすぐるようなことはしない。僕はようやく呼吸を落ち着ける。



「うーん。お股はさすがにやめとこっかぁ」



「勘弁……して、ヤル」



「当たり前だよ。目が見えないのにそこまでやられちゃあレイプだよ強姦だよ」



 「ほら、さっさと終わらせて」と、僕は足を差し出す。その発言と態度は、端から見ればドSな女王様さながらだろうけれども、今自由を奪われているのは僕だったりするのだ。あれ? もしかしてこれ奴隷では? いや違うな。セクハラばかりされているからレズの性奴隷だ。めっちゃ嫌だ……。



※ ※ ※



「叫びすぎて喉が痛いよ……」



「ほっぺた……シリコンがビタンって……。地味に痛イ」



「ごめんねユズ。でも君も同罪だからね?」



「あたしも……首が痛いなぁ~」



「アンタは重罪だ死罪だ」



「うへぇ」



 なんて、耳をつねればうめき声。お風呂上がりとは違って、その耳はもう冷えていた。



 お互いの体温が心地良いくらいに湯冷めしてしまって、僕らはようやくベッドに入っていた。セクハラはもう無いにしろ、この子たちが集まればやれ髪の乾かし方がどうだ、化粧水がどうだと騒がしいのだ。さっき時計を見たときには、丑三うしみつ時に差しせまっていたけれど、こんなにうるさい子たちがいれば、深夜なんて全然怖いものではない。



「ボディミルク……すごい匂うね」



「いやぁ~。前々から試したかったんだけど、こりゃあ付けすぎ厳禁だねぇー」



「仄香ちゃん……ゲンキンな性格だから、付けすぎ……タッ」



「よっ、ゆずりん上手いねっ! 座布団一枚!」



「それは座布団じゃなくて毛布だよ」



 仄香が自分の側からほうるように投げるものだから、右半分が寒くなってイイ迷惑だ。あと"ゲンキン"よりも"欲深い"とかの方が使い方正しい気がする……まいっか。



 それにしても……。



「アタシ……寒い、カモ……。百合葉ちゃん、もっとこっちに」



「ずるいぞゆずりぃ~ん。こっちにもゆーちゃん寄越よこしなさいっ」



「仄香ちゃんは……体温高い。これは冷え性のアタシに譲るベキッ」



「今日は寒いんだも~ん」



「そりゃあ毛布を投げたりするからでしょ……」



 なんて引っ張り合いされて、苦笑いするしかない。本当に僕の体を二分割出来れば、二人っきりになってもっと彼女らと深くまで仲良くなれるだろうになぁと惜しむばかり。



 しかし、一人で四人ともを深く愛し愛すのが僕のハーレムなのだ。半分になんかしてたまるものか。四倍で、全力で。その分、僕が居ないと堪らないほどにまで、心の奥深くまで深く踏み込んでやる。



 僕を離すまいとしがみつく左右の美少女。両手に花。慌ただしい一日だったけれど、落としどころとしては花丸満点だろう。



「ま、まあ。三人で仲良く寝ようよ。ねっ?」



「はぁ~い」



「仕方ナイ」



 それはあまりにも平和的で、なのにギャグチックなハーレムだけれども。



 今の結果としてはこれもこれでありなのかな。

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