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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第65話「またお泊まり?」

 数学を二人同時に教えるというのはどこか不安のあるものだったけれど、ようやく、彼女らが一通りの内容をこなせるようになった。最初はぐちゃぐちゃだった基礎問題たちも、やがてパターンが分かってきたのか、その途中式はスムーズに描かれ整頓されている。そう、数学はいかに無駄なものを省いて、かつ重要な要点を押さえておくかが一番なのだ。余計なものが多いほど頭に入りにくくなってしまう。



「終わった……ぞぉー!」



「疲レタ……」



 寮の二人部屋中央にある机に突っ伏す二人。途中、小休憩を挟みはしたけど、よくもここまで頑張ったもんだ。その頑張りを示すように、彼女らの手の側面はシャーペンの炭素で真っ黒になっている。



「よく頑張りましたっ」



 僕は仄香と譲羽の頭を撫でる。仄香は「へっへー」と素直に喜ぶが、譲羽は嬉しさを誤魔化すように唇をすぼめて変な顔。かわいい。



「これだけ自分で出来るようになれば、応用問題は無理にしても、基礎問題は解けると思うよ。六割はいけるんじゃないかな」



「六割!」



「ロク……ワリ……!」



 潰れていた仄香と譲羽の二人が夢見るように目を輝かせて口にする。えっ? たかだか六割だよ? 大学入試とかの難しいものじゃなくて。そんなに魅力的な数字だっただろうか。



「それって……あれよなっ! 赤点の倍の点数! だいたいの平均!」



「そうだけど……。もう赤点取っちゃうことを意識してるの?」



 まだ入学して一ヶ月なのに……。前回が悲惨だったとは言えさ。



「そこまでいきゃー、一年は遊べるよねー。楽勝だよねー」



「……イケルっ」



「いけないよっ! テストの度に勉強しないといけませんっ!」



「うえーっ!?」



「つらぁ……」



 そして、オカンのごとく僕が現実を突きつければ、またも机に突っ伏す二人であった。息ピッタリだなぁ。



「それに、数学がやっと終わっただけで、他教科もあるからね?」



「な、なんですとぉーっ!」



「……計ラレ、タッ」



「いや、忘れないでよね?」



 相変わらず、目先のことしか見えていない、アホの子二人であった。



「じゃあこれから他の教科を……」



 言おうとして途中で止める。そういえばどのくらい時間が経っていただろうかと、僕は部屋の時計に目をやれば……。



「ってもう十時かぁ! 帰らないとっ!」



 時計のその針は、まさに真上の深夜に近づき指し示そうとしていた。ついさっき夕方だと思っていたのに!



「じゃ、じゃあ僕は急いで帰るから。あとは自分たちで頑張ってね?」



 立ち上がって帰り支度をする僕。しかし、示し合わせたように仄香が目の前に立ちはだかり、譲羽が僕の背中に抱き付く。



「そうはさせないよぉー?」



「させまじ……」



「いえすっ! まじさせまじ!」



「な、なんで……? 帰らせてよ……」



 とは言いつつ、後ろの美少女の体温を感じてしまえば、僕は帰る気なんて完全に失せてしまうのだった。ちょろいな僕はっ。女なのに美人局に騙されそうな気がするよ……。



 いやそもそも、ゆずりんは最近怒ってるのかどうか心配だったからね? ここまで甘えられればね? 彼女の願いなら……ね?



 ただ、目の前から近づいてくる美少女は、相も変わらず胸を揉む仕草に。よけるため、やんわりと譲羽を引き離す。



「今日はこのまま泊まっちゃってさぁー。明日の朝から、勉強教えてよー」



「ま、またお泊まり? 着替えとか何もないよ?」



「買えばイイ……。泊まるのが、百合葉ちゃんの……サダメ……」



「ねーっ。義務なのだよぎむぅ」



「間違いナイ……。それが大宇宙に刻まれたアカシックレコードの導きナノダ……」



「大げさだなぁ……」



 どうしても彼女らは僕を引き留めたいのだろう。お泊まりなんていうイベントも、何度やろうとも楽しいものだし。僕は帰ろうと手にしていたリュックを下ろすと、また敷かれた座布団の上に座る。



「分かったよ。じゃあ徹夜で教えるから、覚悟してね?」



 ニタッと怪しく笑い僕が言う。しかし、鼻を鳴らして「ちっちっちっ」と仄香。



「明日の朝からって言ったじゃーん。今日はもう頭が痛いよぉー?」



「もう、集中……ムリ」



「えーっ。もうやらないの?」



 やる気満々だった僕はがっくりと肩を落とす。教える側としても、基礎を勉強し直すというのは楽しいものなのだ。このやる気エネルギーの行く当てはどうしようかとモヤモヤしながら、唇を尖らせて二人を見る。



「勉強しないならどうするの……」



 僕が問うと二人は示し合わせたように視線を交わし、そしてニンマリと微笑む。



「ふっふっふー。それはだなぁー」



「ソレハ……」



「それは……?」



 首を傾げると、「ゆずりん、例のブツを」「心得タ」なんてひそひそ声。そして手に取り出された、青色に黄土色のマークが入ったリュックサック。見覚えのあるそれを机の上にひっくり返して出てくるのは……。



「スーパーお菓子タイムだっ!」

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