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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第62話「即席パフェ」

 朝食バイキングもだいぶ落ち着いてきたころ。僕らはまったりとデザートを食べていた。まさか、お腹の空腹を満たすだけで終わるだなんて、そんなことはあるはずがないのさ……。



 糖分はまだまだ入るッ!



 太る事が気になるけれど、これは仕方がないことなんだ! 糖分、大事!



 ふふふっ。プリンにアイスにショートケーキ。甘い、甘ったるい……! でも、この背徳感しかない組み合わせがまた、乙なもの……という事を、蒸しパンといくら丼の時にも考えていた気がする。



「ゆーちゃんやっべぇなぁー。そんなに食べるの?」



「それを言ったら仄香もでしょ? 残しちゃダメだよ?」



「へぇーん! ラーメンと違って、デザートは別売りよ!」



「別腹ね……?」



 呆れつつ僕らは席につき、どれから食べよっかなぁ~と眺めていると、咲姫と蘭子も戻ってくる。二人ともすでに軽食感覚のデザートみたいで、その多さに目を丸くしている。……蘭子が驚く顔って珍しいなぁ。脳内シャッターを連写する。すごく可愛い。



「君ら……よく食べるんだな。驚いた」



 うん。驚いた蘭子ちゃんの可愛さに驚いたよ僕は。



「お腹痛くしないように注意するのよぉ?」



「はぁーい」



「うん。ありがとね、咲姫」



 そしてやっぱり咲姫ちゃんはママだった。でも、甘い物を取りすぎたら美容に~とか言わないあたり、甘い物好きの気持ちは分かっているのかもしれない。



 そして、「食べるぜぇー」と仄香が独り言のように言い出したのをきっかけに、みんなもそれぞれ食べ始める。ユズがまだだけど、自由な方が気が楽だし待つ必要性はないかなと。僕は一応食べないでおくけど。傷付いちゃったら困るしね……?



 昨日の今日だし、変に彼女を落ち込ませる要素は排除しておきたい。昨晩、僕に想いが伝わらなくて傷付いたはずなのだから、これからはまたその傷を大きく上回るくらいに僕を好きになってもらうように立ち回らないといけないのだ。ならば、今余計にダメージを与えて僕の事を諦めるような事態は避けておきたい。



 ……っていうのは、考えすぎだろうか。でも、出来るだけ周りの感情の機微を察せられないと、百合ハーレムなんて夢のまた夢だ。



「あ、ゆずりんおかえりおかかー」



「た、ただいまウメボシ?」



「ふふっ、何それ……」



 いつもの仄香の変なノリに譲羽も斜め上の返しをして、笑ってしまった。譲羽は皆が食べ始めているのを察したみたいで、そのまま席につき、僕だけが食べずに待ってるのを気付いたみたいだけど、微笑む僕と目を合わせないようにそのまま食べ始めた。



 まあ仕方がない。僕の好意を少しでも伝えられたらいい。こんなのを好意だの愛だのって呼ぶには小さすぎるかもだけど。



 食べ始めてほっこりとしだした譲羽をしばし眺め、僕も目の前のプリンに手を付けることにする。艶からして、ゼラチンで固めたプリン風のゼリーではないようだ。さてさて、どんなお味かな……。



 う~ん、美味しい。



 味で言うと、コンビニに置いてあるお高めデザートみたいな。舌触りをほどほどに残した滑らかな触感が、良い……。プリンが喉をトゥルンッと通り抜ける感じも堪らない。バイキングだから高いものでは無いにしろ、流石は有名な旅館だ……プリンポイント八十点!



 そんな簡単に点数をあげてよいものやら……自分の脳内に自分でツッコミ。うんうん……専門店のような物も味わい深いけれど、普通に美味しいという物もまた良いもの……。脳がとろける……。



 そんな風に味わっていたから、僕は気付かなった。仄香が、「あっれー?」と譲羽が食べている物を指さすまで。



「んんんー? ゆずりんのは何なんだそれー? そんなんあったかなー」



「……パッフェルの塔」



「ぱ、パフェ!? そんなのあったっけ!?」



 つい驚く僕。今更になって、彼女が食べている物が未確認の代物であるだなんて! 僕が見た限りでは無かったというのに! もしや、ゆずりんが最後の一個を取っちゃったから気付かなかった!? ぐぬぬ、僕も食べたかった……! けど、ゆずりんが満足できるならそれはそれで……うぅ、フルーツパフェ……ううぅ……。



「即席パフェという事だろう。ソフトクリームを作る機械があるから、それにフルーツを盛り合わせれば、パフェのようになる。よくやるものだ」



「そう……あたしは甘さの錬金術師」



「あ、ああ。組み合わせて作ったのね……すごいなぁ」



「へへーん。頭脳戦と言ってくだされー」



「ほのちゃんを褒めてはいないのよねぇ……」



「仄香が言うと一気に幼稚に感じるな……」



「むしろ賢いとは思うんだけどね」



 通りかかる店員さんが譲羽のパフェを見ても、微笑むだけで何も言わない。ここの旅館は、そういう組み合わせの自由さも売りなのだろうか。花見の席も用意してくれているし、本当に助かる所だ。



「ショートケーキのイチゴは最後に取っておきたいのに、今すぐにでも食べたい……。ぐぬぬ……」



 いくらか食べ進んだところで仄香がアタマを抱えだした。確かに美味しそうなイチゴではあるけれど、バイキングに最後も何も無いんだけどなぁ。



 でも、もう食べる客も少なく、朝バイキングの時間は終わりへと差し掛かっていた。確かにおかわりは無理そうだ。ここは、彼女の反応を見たいから……。



「仄香、イチゴあげるよ」



「マジッ!? マジマジマジックマジの助かよぉー! ありがたいよぉー!」



 案の定、そんな風に大喜びしてくれるのだ。こんなに喜ばれるのなら、ついついなんでもあげちゃう……あれっ? それは惚れさせるのとは違うのでは?

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