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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第51話「いざ湯船へ」

「いざぁ! 湯船へ~!? どーんっ!」



 各々が身体を洗い終えれば、早速露天風呂に行こうという話になり……案の定な仄香ちゃんであった。



「こら仄香! 子どもじゃないんだから!」



「へっへーんだ! 誰もいないからいいっしょ!」



 なんてお尻丸出しに湯船を泳いでいた。胸隠して尻隠さずなのかな……二重に恥ずかしい子だ……。



「君には恥じらいが無いのか……」



「まー入っちゃえば自由よー!」



「自由とまではいかないのよねぇ……」



 確かに、温泉の成分で濁っているから、間近に寄られなければ色々と見えてしまわないので、ちょっぴり嬉しいもの。だから彼女ものびのびしているのだろうか。



「仄香ってタオル無しで仁王立ちしてそうだよね。逆に、隠してたのが意外だった」



「んんんーっ、なんというか……。いや、さすがのあたしでも、そのくらいの恥じらいはあるのかもだわー」



「へぇ……」



 すごい意外だ。そこまで奔放というワケでは無かったようだ。



「そ、れ、と、も? 恥じらいながら胸をチラ見せする方が……こ、の、み?」



 湯から半身を出して隠した胸をチラッチラッと見えるか見えないかという指さばきで誘惑してくる。しかし……。



「そんなあるかどうかわからないモノを見せる必要があるの?」



「……無いよ! あたしはこの小ささを隠し続けるよっ!」



 悔しそうに歯を食いしばって、彼女は全力で胸を隠し始めた。そう、彼女は容姿が容姿なら男の子と間違えてしまいそうなほどに、ド貧乳なのであった。



 僕らも、体に添えていたタオルを脇によけ白い温泉に入っていく。……それにしても、ブラが必要ないんじゃないかと思うほどに主張しない胸。仄香は顔は可愛いのに、骨と皮に最低限の肉を取り付けたかのような、肉付きの薄い体型である。どこかに女らしさを置いてきてしまったのだろうか。僕の不要な女性ホルモンをドカンと輸血したいところだ。



 なんて、哀れに思っていれば、



「あー~っ! 見ないとか言っておきながら、あたしの胸じろじろ見たよね今ーッ!」



「……まあ見たけど」



「やっぱり見たかったんじゃん! ゆーちゃんのえっちー! むっつりすけべっ! 自分のは見せてくれないのに揉みたいとか思ったんでしょっ!」



 そんな自意識過剰っぷりに、僕はつい鼻で笑ってしまう。



「いや、揉みたいとは思わないけど、本当にまっ平らだよなぁーって」

「むきーっ!」



「うわっ揉むな! どっちがスケベだっ!」



 襲いかかられる瞬間に、彼女の本当に小さなさくらんぼが見えてしまったけれど、彼女をイジること以外に対して興味は無いので触れないであげた。手で"触れる"って意味じゃなく……ねっ? つまらないね?



「全くもうっ。これはあれだわー。あとで背中洗って貰うの刑だわー」



「えっ? 入る前に洗ったんじゃないの? 汚いなー」



「違うしっ! 洗ったけど、ゴシゴシして欲しいんだしっ!」



 言って仄香は背中を両手で「かゆーいっ!」とガシガシ掻くようにジェスチャーする。お胸が見えちゃうのはもはや気にしなくなったんだろうか。そんな彼女を見て蘭子が一言。



「むぅ、どっちが背中なのか判らんな」



「んんんーっ!? 蘭たんまでまっ平らと申すかぁ!? ちぎれるほど揉みまくって貴様もまな板にしてやろうかぁーッ!?」



「なんだ? 本当のことを述べただけなのに、胸無しが何やら騒がしいが……」



「うっさいデカ乳魔人!」



「ふっ、負け犬の遠吠えにしか聞こえないな」



 蘭子は文字通り胸を張って言う。大きいのに大人気おとなげない。



「ぐぬぬ……。乳がデカいだけのくせしてぇ……」



「ダイジョウブ……。女の魅力は胸だけじゃナイ……」



 なんて仄香は、一番お子様ポジションな譲羽に肩をぽんぽんとされていた。



「うぐぐ……。余計にヘコむわ……」



「んっ……? どこがヘコんでいるだって?」



「蘭たん二重にヘコませないでようっ! 流石にマイナスじゃないんだからねっ」



 口を尖らせて言う仄香は、自分の胸を揉むように手で抑える。だが明らかに無駄な空間が出来ていて、盛っているのら明らかだ。



 しかし、彼女はひらめくように「はっ!」と息を吸う。



「そうだよ! おっぱいは大きさじゃねぇ! 形とフィット感なんだよ! こんな感じに!」



「こらっ! さりげにまた揉むなっ!」



 落ち込んでいたと思えばセクハラ。この子は油断も隙もありゃしない。逃げたことがバレないように、さり気なくじわじわと距離を置こう……。



「フィット感……だと……?」



 そんな仄香の言葉に僕らのメンバーで一番胸が大きい蘭子が聞き捨てならぬという鋭い形相。いや負け犬の遠吠えだからね? 聞き流そうよ。



「蘭たんのはデカいだけじゃん! 手で収まんないっ! つまり、過ぎたるは泳がざるがごとしなんだよっ!」



「くっ……。だからどうしたというのだ」



 なんで悔しそうなの? 蘭子ちゃん。しかもツッコミどころだよ? こら泳ぐんじゃない。



「つまりはっ! まだ成長の見込みのあるあたしと違って、オーバーザオッパイしちゃった蘭たんには勝ち目が無いってことー! 残念だったねー!」



「そんな……馬鹿な……」



 顔を手で押さえ目に見えて意気消沈する蘭子。まあ、大きすぎるのはいけないという話は確かにあるわけで。仄香の理屈が珍しく筋を通っていた。だからといって別に負ける要素は無いよ? 蘭子ちゃん。



「蘭ちゃん残念だったわねぇ〜」



「ぐっ……。貧乳どもめ、今に見ていろ……」



 なんて蘭子はついに、縁の切り出し岩に顔を突っ伏してしまった。どうして負けを認めたのだろう。そんなに大きいのを気にしていたりするのだろうか。



「やったぞー! 冷血デカ乳魔人を倒したぞー! 今宵は宴じゃー!」



 そして、何一つとして自分まな板が変わることが無いというのに、何故か誇らしげにする仄香。冷血魔人とか、さり気に言い草が酷くなっているのは置いといて。



「はっはっー! これは愉快じゃ! 胸がいっぱいってやつー? つまりは、いっぱいおっぱいだよねぇー!」



「ま、まあ。おっぱいはいっぱいあるわよねぇ」



 そんな一人盛り上がる仄香ちゃんに呆れつつも、咲姫は皆を見渡し相づちを打ってあげる。というのも、こっそり譲羽の横に避難していた僕は、僕らは、人の体型を悪く言いたくないのだ。平和の象徴でマスコットキャラな譲羽ちゃんも同意見どういけんのはず。



「フフッ……。自分が惨めでないように他人をおとしめるなんて……愚かのキワミ」



 と思っていたら、ゆずりんも……言うなぁ……。



「貧乳共が……。調子に乗るのは今の内だぞ……? 咲姫、君もだ。貧乳の癖に」



「な、何よぉっ! これでもBカップあるわよぉ〜!」



 と、挑発され咲姫ちゃんまでヒートアップしたようでぶっちゃけちゃう。その情報は漏らして大丈夫?



「えっ? さっきー、それギリAじゃね?」



 なんて、思わぬ飛び火が。



「ぎ、ギリギリBよぉっ!」



「っつってもあれでしょー? ショップの店員さんにめっちゃ横の肉寄せられてやっとBなんでしょー? 見栄っ張りだなぁー」



「ううっ……。それでもBとは言われたのよぉ……。仄香ちゃんなんて何も無いのに……」



「へーんだっ! これでもAAAカップあるわよー!」



 仲間割れだった。



「仄香、それは無いのと変わらないぞ?」



 そこに蘭子がすかさず横やり。仄香には冷酷なる事実が突きつけられるのであった。



「うぐっ……。でもAAAってトップとアンダー差が五センチ未満ってことじゃん? Aカップみたいに十センチも飛び出てたらダイナマイトだよ。みんなサイズ誤魔化してるんじゃないの?」



「いやそれは……。胸囲をぐるりと一周測っての差だからな?」



「Cカップで十五センチも突き出てるんだったら、Gカップとかだったらもはや化け物じゃないの……。アメリカ人だよ……」



「私は生粋の日本人だぞ?」



「いや、例え話だから。というかGなの?」



 蘭子ちゃんのその情報も別に要らなかったなぁ。カップ数言われるとついつい見ちゃうんだもん。



 ともかく、これ以上泥沼になってしまわないように、僕がやんわりと話題修正に入らないと。



「そういえば、日本人の平均カップってどの位なんだろうね? Aカップだってそこそこいるんでしょ?」



「うぅ~ん……。Bじゃないかしらぁ~」



「いや、きっとトリプルAだね。だから、あんたたちがおかしーんだよ。胸板に脂肪ぶら下げてさー」



「仄香。負け惜しみはみっともないぞ?」



「AAAカップはむしろ希少価値だから……マケナイデ」



「ぐぬぬ……。激レアな上にトリプルAとか響きめちゃめちゃカッコいいじゃんよぉ……」



 自然に話をそらしていく算段が見事崩れてしまった。大きく話題を逸らすべきだっただろうか。事態の沈静化は計れたけど、仄香ちゃんは自分の有用性をアピールしきれず失敗に終わってしまう。確かにまっ平らってすごいんだけどね。

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