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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第45話「スイーツ漏洩」

 一日の授業を終えた放課後の部室から、その声は響き渡った。



「信じられるぅー!? あたしが甘い物大好きだって知ってるのに、何の誘いもなくゆーちゃんとさっきーが二人っきりでスウィーツ食べに行ってたんだよ!? もう王子様とお姫様が良い雰囲気漂わせてデートですよでぇーと! あれっ? これ邪魔しちゃあ悪いじゃん!? ぐぬぬっ!」



「いったいなんなの……」



 どこから情報が漏れたのかと蘭子を見やるが、彼女は僕と目があったことを不思議に思っているのかキョトンとしている可愛い。まあそうだろう。彼女はあれこれ言いふらす性格ではないし、仄香と共謀して咲姫を陥れるとも考えがたい。



「お主、昨日行ったのだろう! 行ったのだなぁ!? 正直に言えば、今ならカラオケでパーティー用ジャンボパフェを一人で食べるの刑ですむぞよ!?」



「そ、それ罰ゲームじゃないの……?」



「なぬっ! ご褒美が気に入らないとは、とんだくせ者じゃ! そこまで秘密を守りたいのかぁっ!」



 刑なのかご褒美なのか分からなかった。



「いや、秘密も何も、確かに行ったよ? でもなんで知ってるのさ」



「だって、咲姫のプロフ飛んだら、二人で仲良く食べてる画像なんだもん! 一昨日と昨日で変わってたから犯行は昨日っ! くっ、羨ましいぜ……っ」



「……そうなの?」



 蘭子も譲羽も、そして僕も、首を傾げながら携帯で咲姫のマイページを見る。そうすれば、確かにメイン画像は咲姫だけなのだけれど、プロフィール欄の背景は僕とのいちゃいちゃデート画像であった……。咲姫に食べさせてもらっている写真を撮られたのを、見事なラブラブっぷりアピールに使われていて……。最近のデジタル社会は個人情報が筒抜けになって怖いな。これじゃあ下手に四股とか出来ないよ……。あれっ? でも僕が目指すのはみんな仲良しハーレムだから、まったくもって問題ないのでは?



 ただ、最近の嫉妬深い蘭子の気持ちを考えると困るもの。なんてことをしてくれるんだと、僕は咲姫を見る。なんの悪びれもなく、彼女は微笑んでぺろっと舌を出しウインク。ぐぬぬ……なんて可愛い姫様なんだ。ついうっかり許しちゃうじゃないか……っ。



 まあ今の現状、咲姫に敵対心を持っているのは蘭子だけ。グループの輪が乱れる程ではないかな……と思っていれば、譲羽が頬を膨らませて怒っている。これはまずい……?



「ゆ、ユズ……? 今度一緒にスイーツ食べ歩きしようね?」



「……許シタッ」



 僕の言葉で即座に彼女はほっぺを萎ませご機嫌元通り。彼女の安さも助かるけど考えものだ。



 と、思っていれば、彼女はいまだに咲姫のプロフィールを眺めていて、その画像を保存しだした。なんなんだ……?



「フフフッ……小説のネタにしてヤルノダ……」



「そ、そう……。ご自由に」



 僕にだけ聞こえるように、ニタァッと彼女は怪しく囁く。つまり自分の趣味を優先したようだ。いや嫉妬なのかな? 『ヤルノダ』とか言っちゃって、彼女なりの仕返しなのだろう可愛いでしかない。



 ともかく、話をまとめるために僕はパンッと手を打つ。



「そもそも、もうすぐ旅行だしさっ。良い旅館だしバイキングもあるみたいだから、そこで甘いもの食べれると思うよ?」



「そうだぜそれだぜ!? ジャンボパフェ覚悟するんだなぁっ!?」



「いや、それは用意して無いと思うけど……」



「ナラ……。精霊界に伝わる漆黒の秘薬、ダークマター・ブレンドを飲んで……貰ウ」



「それ絶対変な物混ぜ込んでるよねっ? 不味いのは困るよ?」



 この子らはどうして僕で遊ぼうとするのか。自分で挑戦して欲しい。妹のおもりみたいにも思えるけれど。



※ ※ ※



「君たちよ。明後日の土曜日は駅に九時集合だ。忘れ物が無いように確認して、もう今日のうちにも一通りそろえておくようになー」



「今日からってちょち早くなーい? せんせー。遠足楽しみな小学生かよぉー」



「バカ者。そう言っている輩に限って直前にアレがないコレがないと焦り出すんだ。素直に準備しとけ」



「へいへぇーい」



 帰ろうとしていた矢先に来た、僕らの部活顧問兼明後日の旅行の引率者――渋谷楓先生が注意事項を述べていた。



 仄香は先生に軽口を叩くも、なんなくあしらわれる。入学時から先生は仄香の成績を案じていたし、二人はこのクラスが始まる前から知り合いだったようだから。その気兼ねない仲は見ていてうらやましい。



「先生も一緒の部屋に泊まるんですか?」



「いや、私は別だぞ? お一人様の良い部屋をいただけてな」



「『いただけて』? ユズが当たったのとは別に手に入れられたんですか?」



 そうだ、今回の旅行のそもそものきっかけは、譲羽がくじ引きで当てたという宿泊券五人分だけなのだ。そんなにホイホイと手に入る物なのだろうか?



「ああ……まああれだ。大人の力とか、そんな感じだ。なっ? 譲羽」



「……ソウ。先生を気にせず楽しむとイイ」



「そう言われると少し寂しいが……?」



 誤魔化す二人。かえって怪しいんだけど? もしかして裏ルートなの? 黒い大人ルートなの?



「五人が楽しめるようにという私の粋な計らいなんだ。感謝したまえ」



「でも楓ちゃん……お酒飲みたいダケ……」



「んんー? 何か言ったかな、譲羽よぉー」



 ユズが「ヤメテヨォー」なんて先生に小突かれたりしていて、この二人まで……というか主に譲羽が珍しいことに、打ち解けている。渋谷先生もおとなしくしていれば蘭子とよく似たクール系美女なのに、打ち解けたらこんなものなのか。良い先生に巡り会えたといえる。堅苦しいイメージとは大違いだった。



 そこで、僕は渋谷先生と見比べるために蘭子を見やれば、彼女はどこか観察するようにじゃれ合う二人を深く見つめていた。



「どうしたの? 蘭子」



「……良いものだなと」



「そうだよね。先生と仲良くしてるもんね」



「それは……まあそうだな」



 目を伏せ首を振る彼女。誤魔化すように一人、文庫本を開き出す。うーん、蘭子は言い方がキツい分、コミュニケーションが不得意のようだからなぁ。やはり、先生という存在と仲良くできるというのは、一種の青春っぽさを感じるし、僕も憧れがあるかもしれない。



「まあまあまあ。君たちは好きにするといいのさ。監督とは言っても、昼も夜も放任だし。何かあれば連絡くれればすぐ行くという程度でね。優秀な特待生も居ることだし問題ないだろう。信用しているからな?」



「そ、そりゃあどうも」



 そんな出会って一ヶ月もないのに信用だなんて大げさだなぁと思うけれど、自由にさせてもらえるなら大歓迎だ。

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