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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部一章「百合葉の美少女集め」
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第11話「化粧水」

 美少女たちとの、激動の百合遭遇を乗り越えて翌日。



「おはよぉーうっ」



 教室に向かう途中、とーんと左肩を叩かれる。



「ああ、おは……よう……?」



 昨日の今日だというのに、顔を見ずとも声とテンションだけで誰だか分かる。個性派揃いの中でも、特にキャラが強い彼女なら間違えるハズも無く――――。



 と思い、左後ろを振り向いたのだけれど誰もいない。



「あれっ?」



「こっちだよーん」



 今度は右から声がしたので、振り向いてみると、



「痛いっ」



「あはぁーっ! 引っかかったなぁ!」



 僕の頬にプニッと沈み込む感触。そう、振り向けば人差し指が刺さるように仕向けられ、まんまと僕はそれにハマってしまったのだ。……小学生かっ! かわいいなぁっ!





「……やめてね、仄香ほのか



「おおうっ! まだ顔見て無いのに、なにゆえバレたのだっ!? 忍術か!?」



「いや声で普通に分かるよ……」



 朝から飛び抜けたハイテンションである。そんな彼女だからこそ可愛いのだが。可愛いのだがっ!



「おはよっすー!」



「おはよぉ~」



「お、おは……よう」



 仄香が教室に入るなり元気よく挨拶し、話していた咲姫さき譲羽ゆずりはが返す――ゆずりんが自然と打ち解けている……っ? 少し心配だったけど僕の百合ハーレムは順風満帆のようだねっ!



「おはよう。二人とも何してるの?」



 譲羽が咲姫の席に座って二人話していたので疑問に思い聞いてみる。



「あっ、百合ちゃ~ん。あのねぇ、ユズちゃんって素はキレイなのに何もケアしてなくてもったいないからぁ? 肌のお手入れでも教えてあげようと思ってぇ~」



「へぇ、そうなの?」



 譲羽に問いかけてみる。



「そう、ナノ……。闇魔族の精神攻撃……じゃなくて、おでこのニキビが治らなくて……」



「そうなんだ」



 今、なんだか物騒な言葉が聞こえた気がしたけど。



「肌って乾燥してるとニキビが出やすくなるのよぉ。でもユズちゃんはスキンケアしてないみたいだから……ねっ?」



 そう言って咲姫「しゅっしゅっ」と声に出しながら何かスプレーを試し見せるように手に吹きかける。実にワクワクして楽しそう。可愛いだけでしかないよ?



「ほーっ! それ化粧水でしょ? 学校に持ってきてるとか女子力高すぎ半端ないなぁー」



 咲姫のスキンケアへの余念の無さに仄香はテンションを上げている。



「だって乾燥したら嫌じゃない。外出先でもねぇ~っ」



「えっ、いつも持ってるの? 女子力高いね。僕も真似しないと」



「ほんとそれっ! 女子力高過ぎかよー!」



「そ、そうかしらぁ~、普通だと思うけど……えへへぇっ」



 僕たちが次々に褒めれば、咲姫はきゃるんっと両手を胸の前に添え首を傾げる。あざとっ! でもそれがいい!



「はぁ~いユズちゃ~ん。こっち向いてね~」



 話は戻り、子どもをあやすように椅子に座る譲羽の顔に手を当てる咲姫。じっと見つめる譲羽の顔に近づき向かい合う。



「ちょっとごめんね~」



 言いながら彼女は譲羽の前髪をピンでめ、顔にしゅっしゅっと化粧水スプレーをする。すると仄香が口をポカンと開けて質問。



「へぇー。顔に直接かけないんだー」



「ま、まあその使い方が正しいと思うけどぉ、他の子の顔に直接吹きかけるのは気が引けて……」



「だ、ダイジョウブ……咲姫ちゃん。アタシ、咲姫ちゃん、信ジテル……」



「わかったあ~」



 と、心配する咲姫に譲羽は目を閉じて顔にシュッシュする許可を与えたのだ! ちょっとゆずりん、咲姫ちゃんを信用しすぎじゃない? 美少女だから? お姫様みたいなスーパー美少女だから?



 目を閉じたゆずりんにシュッシュスプレーする咲姫ちゃん。普通の液体化粧水を塗ったくるでもなく、コットンに染み込ませるでもないから、不思議な光景だ。



 そもそも、相手に肌を預けるなんてデリケートな問題だから、化粧水の塗り合い百合百合だなんて見られないかなーって思ってたけど、こうして見れるだなんて素敵ですね……。



「しみたりしない?」



「だ、大丈夫……」



 譲羽も信用し預けているようで、なされるがまま。昨日の今日で互いの壁を破っていくこの関係性とか……。腹の探り合いな女子が多い中では激レアなのでは? ニヤニヤしちゃうなぁ~。



「はいおっけぇ~」



 間もなく咲姫が終わりを告げると、譲羽はこわばっていた表情を緩めた。顔全体にスプレー出来たようで、譲羽の顔はスッキリとしている。



「あ、ありがトウ」



「どういたしましてぇ~」



 俯きつつも、にへらと笑う譲羽。どもったりしていて本当に嬉しいのかわからないようでも、そういう不器用に笑う姿が初々しく、彼女なりの感情表現なんだなぁと思う。



「うん。心なしか、より可愛くなった気がするね。ユズ」



 っと、心なしかなんて蛇足だったかな? 家で女の子を褒める練習したと言っても、まだまだ褒めるの下手かなぁと不安になったけれど……。



「う、うぅ……ありが……ト……」



 さっきよりも余計に声が小さく、そして白かった頬を赤く染めるゆずりんであった。かわいくてつい見とれてしまう。



 その横で、咲姫ちゃんがちょっとムクれているなんて気付かずに。

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