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百合ハーレムの作り方  作者: 乃麻カヲル
第1部二章「百合葉の美少女落とし」
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第23話「即興シンデレラ」

「シンデレラ……か。なかなか悪くない選択だと思うゼ」



「いいね、いいよキミ! それでいこう!」



「しかも文化祭の出し物設定なんだろ? 面白そうだよなぁ」



「じゃあ早速。開始さッ!」



「え、ええー」



 葵くんと白夜さん、茜さんがそれぞれ好印象みたいで、すんなり受け入れられ始まった事に驚く僕。しかし、白夜さんは「ノンノン」と指を左右に振る。



「折角なんだから、この即興具合を楽しまないと。さぁて、ボクはシンデレラの王子様役かぁー。最後まで出番が無いのは残念だけど、致し方がないよねっ。ほらっ、採寸係!」



 白夜さんは早速スイッチが入ったのか、仄香を指名して『採寸』を命じた。役も即興で決めていくようだ。



「じゃあ採寸させてーいただきますねーっと。あれっ? 白夜さんお胸がない? もしかして女子校なのに男が紛れ込んでるぅ?」



「ジーザスッ!? いきなりセクハラとはビックリな採寸係だねっ。ボクはれっきとした女だよ? それとも、証拠に今夜、ボクに抱かれてみるかい?」



「いえ、えんりょしときまーす」



 どちらかというと攻め派なのだろう、サラッと受け流す仄香だった。



 そこへ、ずいと挑み出る僕。



「さあ、シンデレラ役の咲姫ちゃんを連れてきたよ。これでメインキャラは一通り揃ったね」



「あ、お姫様やりまぁ~っす」



 なんて、強行突破だ。僕は舞台の真ん中へ自ら躍り出る。



「メインキャラかい? シンデレラと言えば、残るは意地悪なお母さん役とお姉さま役……誰だろうね」



 白夜さんはわざとらしく周りを見渡す。すると、まだ役割が決まっていない茜さんと葵くんがひそひそ。



「お前さんが母役やれよぉー。あたしゃあ勘弁だぞ?」



「オレだって、姉役もイヤだぜ。でも、他に配役が居ないんじゃあナ……」



 二人は諦めたように肩を落とし、そしてずいと前に出る。



「オレ……わたくしが母役ですことヨ! さあ、シンデレラをいじめて差し上げますワっ!」



「あたしは姉役……って、何をする役だったかぁ?」



 なんだか違う気がする。



 しかし、その持ち前の度胸のお陰が、ギャラリーからはクスクスと笑い声が。失笑ではない。意外とウケているのだ。みんな顔は良いから、劇のNG集みたいな感じ? これはこれでありなのかもしれない。



「じゃあ、僕が作家を担当するよ。おっと、王子役のマントが無いかも……。白夜さん、探しに行ってください!」



「ふっ、早速仕掛けに来たね……。でも、そうは行かないよ。この、カーテンを切って使えば、マントの替わりに、なるのさっ!」



 そう言って、カーテンを手にした素振りを大きく見せる白夜さん。相手の大将を違和感なく退出させるゲーム。流石にすんなりとはいかないか。



「じゃあマントの採寸をするんでー、白夜さん計りますねーッ!」



「ノンジーザスッ! お尻を揉む必要は無いんじゃないかい!?」



 その中で、仄香だけはなぜかセクハラ三昧なのであった。



※ ※ ※



「なあ、譲羽。これって、シンデレラだったよな?」



「そ、そのハズ……」



 舞台袖で眺める蘭子が譲羽に問いかけるのが聞こえた。僕も何が何やらだ。



 劇が始まって十分くらいはたっただろうか。そろそろ、決着を着けたいそんなところで、即興劇の方向性はぐんと変わってしまった。



「ああ、ロミオ。どうしてアナタはロミオなの?」



「ボクはキミの小鳥になりたい」



 ……ロミオとジュリエットだこれ。



「さあ、小鳥になりたいというなら白夜さん。小鳥の衣装を探しに行ったらどうです?」



「ノンノン、百合葉ちゃん。今は演劇の内容を詰め込みたいんだ。衣装は後でもいいから、キミが用意しに行ってくれ」



「いえ、作家で監督役なので、この持ち場を離れるわけには」



「じゃああたしが行ってきまーす」



「ちょっ! ……仄香、衣装係には居てほしいなぁ」



「いや、むしろ。衣装係なら、彼女に任せた方が良いんじゃないカナ? 行ってきてくれ」



「はーい」



「仄香……」



 なんて、彼女は自ら退出してしまったのだ。どうしてっと目で問いかけると、



「だって、もう茜ちゃんも葵ちゃんも退出してるし? ゆーちゃんとさっきーに任せた方が案外面白いかなって!」



「さ、さようでっか……」



 最初の白夜さんへの嫌悪感はどこへやら。ゲームにノリノリな仄香なのであった。



 しかし、内容はいよいよクライマックス。立ったままの咲姫を抱くように両腕を当てて、そして天を仰ぐ。



「ああ、愛する人よ。死は君の命を吸い上げてしまったが、まだ君の美しさには力を及ぼしてはいない。君はまだ征服されていない」



 よくもまあ、そんなセリフを覚えているなと感心して声も上げられなかった。しかし、彼女は続けて演技に熱を入れる。



「君が飲んだ杯にキスをしよう。望むべくは、まだ毒が残っていることを!」



 毒の杯を手に、白夜さんは飲み込んだフリをする。キスシーンが無いのは、白夜さんなりの気遣いだろう。そうして、彼女は倒れ込む……。



 一方で戸惑う咲姫だが、"ロミオとジュリエット"の演目通りに彼女は起き上がり……。んんん?



「おいおい死んじまったよ……。これってどうなるんだぁー?」



「さあ、わからないナ」



 白夜さんは横になったっきり、起きあがらなかった。

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