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カードワールド ―異世界カードゲーム―  作者: 勇出あつ
王総御前試合編
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#14 内心




「エイトー? だいじょうぶ?」


 目をあけるとベッドの横に立ったフォッシャが、俺の頬をぺしぺし叩いたり、体を揺さぶったりしているのがみえた。いつもの獣の姿ではなく、耳としっぽの生えた女の子の姿をしている。

 彼女は夜には人間の姿で、昼には獣の姿という特殊な体質の持ち主だ。変化の途中であるところをみるに、おそらく今は深夜か早朝というところだろう。

 枕もとの灯かりだけついており部屋の中はうすぐらい。まだ外に日はのぼっていないようだ。


「ふぁ、ああ……」


 起きたが、気分がすぐれない。寝ぼけ眼をこすって、自分の顔を片手で覆う。

 フォッシャが俺の顔をのぞきこんで、


「うなされてたよ。まったく女の子が起こしにきたんだから、感謝のひとつくらいするワヌ。ほらこれでも飲んで」


 カップをフォッシャがくれる。よくフォッシャが飲んでいる、色合いと味はココアに似た飲み物が入っている。あたたかい。


「ああ、ありがとな。……ちょっとまだねぼけてた」


「ずいぶんけわしい顔してたけど、夢でもみてたの?」


 フォッシャは俺のいるベッドに腰掛ける。

 

 まだ、なんだか胸騒ぎがする。なぜ今むかしの夢を?


「……ああ……」


「あててあげる。カードの夢でしょ」


「まぁ、そうだな」


 ズズ、と俺は飲み物をのむ。なんだかすこし落ち着いた。


「ほんとにカードが好きだねえ。頭のなかカードしか入ってないんじゃないワヌか」


 コンコンと俺の頭をノックするフォッシャ。


「……そうだな。小さい頃からずっとカードが好きだったからな。……夢中になってやってたよ、昔はな」


 カップの中をみつめながら、俺は淡々とつぶやくように話す。


「やる場所がないからって公園のベンチで友達とカードやってたら、カードが風に飛ばされちゃったりとかよくあったな。でも、そうやって純粋にカードを楽しんでたのは昔の話だな、もう……」


「……今はそうじゃないワヌ?」


「……ちょっとあってさ。フォッシャ、お前の故郷ってずいぶん遠くにあるんだってな。俺も同じだよ。しかも、そう簡単には帰られない。……いや、帰りたいのかどうかもわからない。帰っても、もうカードはやらないだろうからね……」


 急にしんみりした話題を振る俺に、フォッシャは戸惑いの表情をみせる。


「どうしたの、エイト……」


「……ごめん、変なこと言ったな。……夢のせいで変な気分なんだ」


「まだ早いから、もうすこし寝ててもいいんじゃない」


 フォッシャは優しく微笑むと、俺の持つカップに手をのばし、代わりにもってくれた。


「……ああ、そうしようかな。もう少しだけ……」


 彼女の言葉にあまえて、また横になる。

 意外にも早く眠りに落ちてしまう。毛布をかけなおすのを忘れて肩のあたりがすこし心もとなかった。が、フォッシャがかけてくれたのか、だんだんとあたたかさを感じるとともに意識がうすれていった。



次回の更新→5月21日火17時ごろ

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