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カードワールド ―異世界カードゲーム―  作者: 勇出あつ
ラジトバウム編
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#46 カードの道


 病院で寝ていると、時おりきこえてくる街のにぎわいが心地よい。

 ゼルクフギアとの一戦は嘘だったかのように、ラジトバウムには平穏がもどりつつあった。

 治療のおかげで、両手も問題なく動かせる。

 包帯はまだとれていないが、火傷も順調に回復している。ラトリーの話では、一ヶ月もすれば元通りになるだろうとのことだった。


 目覚めるまで看病してくれたらしく、ハイロが隣のベッドでうつぶせで寝ていた。彼女もまだ傷が完治していないだろうに。

 ローグが病室に入ってくる。見舞いにきてくれたのだろうか。

 そんな甘いわけがないか。フォッシャのことについて知りたいはずだ。


「今日はこれを渡しにきただけだわぁ」


 ローグは思ったより柔らかな表情で、1枚のカードを俺の前に差し出した。


「こりゃ相当強そうなカードだな」


 カード化した『ゼルクフギア・ラージャ』のカード。カードになっても、異彩をはなっている。


「それじゃあね。……ああ、それと――」

 

 ローグは病室を出る間際、こちらに背を向けたままわずかに顔をかたむける。


「お見事、ね」


 ローグが俺を褒めたことも意外だったが、やり取りがあっさり終わったことにも驚いた。

 なんだか安心したと同時に、これでラジトバウムでの出来事も終わったのだなと感じる。


 アザプトレ、ボルテンス、ローグ、ゼルクフギア、強敵ばかりだった。だがやつらと本気で戦ったからこそ、この世界で生き抜いてやるという意地が芽生えたような気がする。


「エイト……よくやったワヌ!」


 獣の姿にもどっているフォッシャが、俺の頭にのってわしゃわしゃと髪を荒らす。撫でているつもりなのかもしれないが乱暴すぎるので、ぽいっと隣のベッドにフォッシャを投げる。


「エイトの言ったとおりだったワヌ。……どんなカードにも強さがある。フォッシャたちにも、逆境を乗り越える力があるんだって……」


「……ああ」


 フォッシャがいてくれなかったら、ムリだったよ。この戦いだけじゃない。ここに来てからずっと……


 ……ありがとな。と、俺は心のなかでつぶやいて、フォッシャにふっと微笑みかける。


「審官のカードは、失っちゃったけどな。……けっきょく一言も会話できないまま……」


「またどこかで会えるワヌよ。オドの結晶になるまで、千年後か二千年後かはわからないけど……。カードとのつながりは、ずっと心の中にあるものワヌ」


「……かもな」


 また会えるかもしれない。オドとやらが運命を決定付けるから、か?

 どうであれ、どんな逆境がまっていてもカードの力で切り抜けなきゃな。


「ま、今回のことでフォッシャが必死になって復元のカードを探す理由がよくわかったよ」


 嫌というほどな。


「これからも、もちろん一緒にきてくれるワヌね?」


「…………お前といたら、命がいくつあっても足りない」


 正直に言って、だ。


「だけどお前といたら……おもしろいカードたちに会えそうだよな」


 そう言って、ふたりで笑いあった。


「それは保証するワヌ。フォッシャたちがいくのは……カードの道ワヌ」


 ラジトバウムでの戦いは終わった。

 大変なことばかりだったけれど、なんとか今日まで生き抜くことができた。

 どんな逆境でも跳ね除けるエースカード、『暁の冒険者』。あのカードの強さは、俺の心の中で生きている。

 『宿命の魔審官』もまた、俺たちに未来を残してくれた。カードの道という未来を。


 彼らだけじゃない、氷の魔女やテネレモたちもまた優れたカードだった。どんなカードにも意味はある。それが俺自身にも言えるなら、俺もまた強くカードの道を歩もう。どんな逆境にも負けないよう、力強く、確かに。


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