表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カードワールド ―異世界カードゲーム―  作者: 勇出あつ
ラジトバウム編
53/170

真理追究<リサーチ>カード③


 スオウザカエイト、あなたの本当の姿を見せてもらう。


 彼には妙な癖がある。

 包帯がとれて、左手はすでに完治しているはず。それなのにあいかわらず右手でドローをする。わざわざ剣を地面につきさしてまで。


 それにカードを引くときにいちいちドローを宣言するのも気になる。エンシェントには特別そういうルールはない。

 しかしカードの実力はある。所々気になるところはあるが、作戦の練達さからして初心者ではない。読みやコンビネーションもいい。


 センスは悪くないが、カードと共に戦うエンシェントルールでは、あきらかに未熟なプレイングが見受けられる。間合いや足運びはまるで素人のよう。

 精霊杯の資料映像も見たけれど、どの試合でも審官のカードの圧倒的な強さと、スオウザカ自身のカードゲーマーとしてのセンスだけで勝っているようなものだった。

 もしかすると、ボードルールのヴァーサスを長らくメインにやっていたのかもしれない。そう考えるとつじつまがあう。


 今、街に異変が起きている。部下に調査してもらっているけれど、私はスオウザカとフォッシャになにか関係があるとにらんでいる。

 はっきり言えば、彼らに目星をつけている理由は、私の勘だ。


 この数週間のあいだ、私は彼らを監視していた。

 スオウザカが主張するとおり、オドの反逆者のような悪質な行為は見られなかった。

 むしろ、彼はどちらかといえば善良寄りで、私のように冷酷なタイプの人間ではない。


 しかし彼らが無意識のうちに重大な事件の引き金になっている可能性はある。彼らのことで、気になる点は多々ある。

 ふつうに調べるだけでは不十分かもしれない、と私は見ている。実際温厚なやり方も試したけれど、あれでは秘密は暴けなかった。


 まずはこの勝負で、彼らが抱えている謎を無理やりにでもあぶりだす。


 強引にでも協力してもらう。この街を守ることが私の使命であり、友との誓いなのだから。



 それにしても。

 ――あの『氷の魔女』というカード、気になるわぁ。

 スオウザカエイトは経験不足からか、あまりカードと連動した動きというのがない。

 なのにあの氷の魔女だけは、まるで熟達したエンシェントヴァルフが操作しているかのように、的確に動いて常に私の反撃の芽を摘んでいる。


 本来エンシェントにおいてカードは、プレイヤーの意思をオドにより感じとって動く。

 しかしあのカードはまるで自分で戦況を考えて動き、スオウザカエイトをサポートしているようにさえ見うけられる。


 それに気のせいかしら? スオウザカの研究室を訪れたとき、あの子によく似た少女がいたような……

 あのときはフォッシャとスオウザカを目当てに行ったから服装までは思い出せないけれど、彼女自体がただならない気配を放っていたから、顔をなんとなく覚えている。


 この試合が始まってから、幻覚のトリックカードを使われたようには思えない……あそこで見た少女は氷の魔女のモデルになった存在の子孫という線もあるけれど……なにか……カラクリの匂いがするわぁ。


 なんにしろ、アレが厄介な存在なのはたしか。

 まずはこのカードから黙らせる必要があるようね……


 ミスタースオウザカ。大切ななにかを失ったときにこそ、本当の自分の姿が映し出されるものよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ