#王総御前試合編 TURN END
快晴の空。ひかりかがやく緑の芝生に腰をおろして、ただなんとなく地平線を見つめる。
あれから俺たちは実体化のカードをもとめて旅に出た。その道中の、休憩の時間。
「いつもどおりボーっとしてるワヌね」
フォッシャがどこからかやってきて、となりにすわる。
「これからどうするかなって考えてたんだ」
「やっぱりその腕のこととかワヌ? 別に気にすることないワヌ。まあオシャレといえばオシャレワヌよ」
たしかにこの眠ってるカードのこともそうだ。これからの旅のひとつの目的でもある。でも、俺が考えているのはもっと全体的なことだ。
「そういうことじゃなくてな……」
と言いつつも、フォッシャの言葉にくっと俺は笑ってしまう。
「カードのことが気になったら、夜も眠れない。それがカードゲーマーなんだよ」
「ハァ……エイト、逆に考えるワヌよ」
「……ぎゃくに?」
「フォッシャがいて、カードがあって……カードでできた友達もいて。これだけいれば、どんな逆境だってへっちゃらワヌ。なんも心配いらないワヌよ」
「……そうだな。どんな冒険になっても……」
フォッシャの頭を撫でてやる。すると今度は彼女が俺の頭にのっかってきて、
「無敵のコンビなんだから、離れちゃだめだよ。フォッシャにはわかるワヌ。エイトはフォッシャとずっと一緒にいたいワヌね!」
「……ま、俺はカードできれば別にどこでもいいけどね」
「好きなだけすればいいワヌ」
ふたりでなんとなくのんびりそんなことを話していると、ハイロとミジルが歩み寄って声をかけてきた。
「エイトさん、フォッシャちゃん。カードのミニ大会やりません?」
「またワヌか? 御前試合が終わったばっかりなのに」
「いやいや、ただ優勝した人に景品があったらいいなーと……」
「ハイロ、なんか変なこと考えてないワヌ?」
「え!? いやいや私はただ本当じゅんすいにたのしくみんなでカードでたのしめたらなってべべ別に変なこととかは……」
「ふーん?」
ニヤニヤと笑みを浮かべて、ミジルはうしろからハイロの両頬をひっぱる。
「ひにふぁいふぁを……」とハイロ。
「じゃあフォッシャが優勝したら、エイトはずっと私の相棒だからね!」
「なんだよそれ……」
3人の微笑ましいやり取りに巻き込まれて、つい俺も笑ってしまう。
俺はフォッシャをよこに置いて立ち上がる。カードを手にとって、自分の胸にあてた。
――この世界に待ち受ける、どんな逆境にも負けないため。
そして――だれかの笑顔を守るために。
『逆境に愛された男の異世界カードゲーム』
王総御前試合編 TURN END