#69 御前試合決勝戦<ファイナル>-1
試合当日の朝。巫女から以前に、カードの生る鉢植えをもらった。実はそのつぼみのひとつがついに花開き、手よりも大きな種を吐き出した。
種からかえったカード。めずらしいだけではなく、かなり使えそうだ。予定にはなかったが、編成にいれてもおもしろいかもしれない。
研究室にあつまり、そこで作戦を確認する。ローグが中心になってまとめてくれた。
「決勝ではつかえるウォリアーの数は8枚。通常5枚に控え3枚。多くのカードをあつかうことになり、今までより激しい混戦になる」
「8枚……ちょっとした軍団だよな」
さらにプレイヤーが3人いるのだから、もはや中規模の戦闘だ。
「ルールは殲滅戦。どちらかのメンバーとウォリアーがつきたほうが負けとなる。多くのカードを扱うコマンドが終盤まで残るかどうか。そこが勝敗のわかれめね」
そうだな。よりカードゲームに近い形式だ。だがボードとはちがいリアルタイムの戦闘は、思考時間も視野も限られている。場にたくさんウォリアーをだしても全部をフォローできるわけじゃない。ヴァングとクイーンが現場の目となって補助する形になるわけか。
キゼーノ戦を乗り越えてきたんだ。連携は問題ないはず。
ローグ、ハイロ、そしてカードたち。彼らを自分の手足、あるいは武器、魔法であるかのように冷静にとらえよう。彼らの力を信じるんだ。
「おっしゃー! はりきっていくワヌよー! 特訓の成果をみせるときワヌ!」
だれよりも張り切るフォッシャに、ハイロが圧倒されていた。
「す、すごい気合ですね」
「あったりまえだよ。ここんとこねえ、フォッシャたちは働きすぎなんだよ! 大会おわったら好きなものたべてのんびり温泉でもつかって、あそびほうけるぞー!」
「いや、実体化のカードはどうするのよ」とローグが冷静に言う。
「あ、そっかぁ。まーでも探索のカードあればすぐ見つかるワヌ」
「あたしはどうしよっかなー。せっかくだから旅についてこっかな。あ、スオウザカ、あんたもついでで荷物持ちでいっしょにいかせてやってもいいよ」
なんだかえらそうに言うミジル。
「あ、ああ……」
「私はやっぱり勉強ですかね。もっとがんばらないと」
ラトリーがそういうのに乗じて、ハイロも大会のあとの話をしはじめた。
「私は……休暇があるなら、え、エイトさんとまたどこかに行きたいです……カードのお話でもしながら……」
「なに言ってんのハイロ!? そんなの絶対ダメだよ。あたしもついてくからね」
「おいおい、なんか逆にいまそういうのかんがえると縁起悪くねーか?」
よくいうよな、こういうのナントカって……
「やー心配いらんでしょ! らくしょーらくしょー!」
「いやいやいや……」
フォッシャのやつ、相当気持ちがはいってるな。でもそれもそうか。たぶん俺も同じ気持ちだ。
「じゃあみんなでぱーっと遊びにいくってことで! ローグも、ワヌ?」
「私も?」
「そうですね、ぱーっと! そうだ、カードゲーム大会とかやりましょうか! みんなでプレゼント持ち合って、景品にして!」
うれしそうに笑うハイロに、ミジルがツッコミをいれる。
「いやカードゲームはいつもやってることじゃん」
「あっ……そうでしたね」
盛大に笑い出す一同。俺もつられて笑ってしまう。
「じゃあ、優勝した人の願い事ひとつだけまわりが聞く、とかどうでしょう……」
「それじゃカード強いほうが有利すぎるでしょ」
「ハンデはもちろんつけて……」
ハイロとミジルはまだ何か言っている。
すごいな、こいつら。
率直にそうおもった。試合前、いやただの試合前じゃない、呪いのカードが出てくるかもしれないっていうのに笑顔になる余裕があるのか。
特にハイロは変わった。ふだんの様子をみていても、以前より戦う姿勢がよりよくなった。ここまでの旅の中で強く成長したんだろう。
「丸くおさまったらの話よ。かならず成功させましょう」
「おー!」
ローグが場を引き締める。
すると、それが号令のようにムードもきり変わる。ヒリつくような勝負の空気へと。
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