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カードワールド ―異世界カードゲーム―  作者: 勇出あつ
王総御前試合編
134/170

#57 治癒の使者


 転送をまっているうちに、患者がいる場所の特定をすることにした。

 集会所の情報によると、患者の多くは隔離施設にはこばれたがなかには自宅療養じたくりょうようしている者もいるらしい。

 道行く人に話をきいたり、病院をおとずれたりして地図に患者の住所を書き込んでいく。

 退院早々、街をあるきまわって骨が折れる。同じ呪いのカードでもゼルクフギアとたたかうのとはまた違う大変さだ。


 やがてキゼーノから何枚かカードが魔法で送られてきた。なかには重制限カードもある。だがふつうの薬ではだめなのだから、この制限された薬こそがおそらく治療の手段だ。

 さいしょに向かったのはワードハープ家という大きなお屋敷の名家だった。爵位をもっているえらいところらしい。そのご子息が街中で倒れたということで、俺たちはそこをおとずれた。


 小屋にいた門番のおじさんに声をかける。


「えっと、おたくの方がきのう道端で倒れたとうかがいまして」


「あなたは?」


「……え~~~~っとぉ」


「巫女のつかいの者ワヌ」


「そうそう。感染症をなおす薬があるので、治療にまいりました」


 それを証明するものは特に無いが、治療薬のカードを見せる。


「おお、これはこれは! さすがは巫女様だ。どうぞはやくあがってください」


 庭園にはいり、館の主人が出迎えてくれた。名家だといわれるだけあって家の中でもしっかりとした身なりだった。

 外からでも大きいと思ったが室内に入るとよりそう感じた。患者は隔離されているらしく屋敷のなかをかなり歩いた。

 部屋のまえにつく。マスクがずれていないか確認して、なかに入る。


「街ではやっている病だと思います。医者もお手上げだとかで」


 と主人は暗い声で言う。

 患者はかなり若くみえた。男性だか女性だかわからないほどに美麗な顔をしていた。


 俺はフォッシャの力で実体化させておいた魔法の薬瓶くすりびんを手に持ち、ちかくにあったコップに少量そそぐ。そしてそれを高熱で寝ているご子息の口にそっとながしこんだ。

 カードの説明欄によれば塗るだけでもかなり効果があるようだが、飲むほうがより効くらしい。


 数秒まつと、薬を飲んだ患者が目をみひらいてガバッと身を起こし、ベッドから出てきた。かわいらしい寝巻きを着た彼は、高熱でうなされいたのなどウソだったように元気そうに立っていた。


「あれ……。体がかるい。熱もない……。もしかして治った!?」


 患者は声をはずませ、うれしそうに笑う。たぶん男の子だと思うがなんだか妙に色っぽくて、俺はとまどう。


「あなた方が治してくださったんですか。ずいぶんめずらしいカードですね。どこで手に入れたんですか?」


「あ、いや……それはひみつなんだ」


 患者は元気になるなりこちらにちかづいてきて、カードに戻って絵柄だけになった薬瓶をみつめる。もしかしてこの人カード好きか。


「失礼だろう、わが子よ。この方は巫女様のつかいだよ」


「エっ!? ええ!? 失礼しました。助けていただき、ありがとうございます」


 主人にいわれ、患者さんは頭を下げる。

 これで終わりじゃない。ほかにもたくさん感染者はいるからな。はやくかたづけよう。


「あ、いや。それじゃほかにも回らないといけないので、これで失礼します」


「お待ちを! これはほんの気持ちです。どうか受け取ってください」


 帰ろうとする俺を主人がひきとめて、召使がトレーに乗せて持ってきた小袋を手渡してきた。

 ジャラジャラ鳴る上、やたら重い。まさかこれはマネーというやつなんじゃ。

 館を出てから中身を確認すると、黄金の金貨がたんまりと詰められていた。




 町に戻り、大手を振ってあるく。


「いやーーーーー人助けって気持ちがいいなぁ!!」と、思わず声にだしてしまう。


「どうせこれでカード買えるとかそんなこと考えてるワヌね」


「いやいやいや。きれいな心だよ、すごく」


 まあ金があったらそりゃカードに使うけどさ。


「あとは、呪いのカードを探すだけだな。あるとしたらこの地区のどこかだ」


「病気をまき散らしてるカードが、ワヌね」


「フォッシャ、オドの感じで場所はわからないの? 病がひろまってるのはこのあたりだけだから、範囲もかぎられてるだろ」


「うーん、それがこういう街中だと、むずかしいワヌ。生活音とか、人の気配がじゃまで……」


 オドの感じというやつで、フォッシャとミジルは物を感知することができる。


「もうすこしそれを減らせれば、感知できそうか?」


「うん、たぶん」


 俺はすこし考え込んで、


「なら、しずかにさせてみよう」


 これからなにをするのかまったく想像がつかないようで、フォッシャはぽかんとしていた。



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